二話 笛の演奏会
文字数 1,045文字
旅の出会いは一期一会。
私にはそれが心地いい。
私にとって、人間と深く関わってしまうことは、とても恐ろしいことだった。
それは、どんなに親しくなっても絶対にやってくる決定的な別れが怖かったから。
私の寿命は、この世界の終焉まである。
だから、必然的に人間はあっという間に逝ってしまうのだ。
それが悲しくて、私はあまり人と深く関わってはこなかった。
一人を除いては。
その人も他の人間の例にもれず、逝ってしまった。
しかし、この世界でいま覇権を握っている人間が、どういうものなのかは興味があった。
人間が何を考えて生きているのか、人間という種は複雑な生き物で、興味がつきない。
私のこの綺麗な姿だって、今この世界で人間が覇権を握っているからこの姿なのだ。創造主は私に人として好ましい形の姿をくれた。
もしも、この世界の覇権をサルやワニがにぎっていたのなら、私は彼らと意思疎通を行うために、必然的にサルやワニになっていただろう。
そう思うと、ちょっと面白い。
秋島の首都まで来て、また今度は冬島までの長距離馬車乗り場を探す。
秋島はからっとした天気で、首都であり芸術の街であるガラルドは人で賑わっていた。
白壁に赤い屋根が特徴的な、整然とした街並みだ。
ここは秋主アレイゼスの護る浮島で、秋という季節が護られている。
人が大勢いたので、私はここの広場で笛を吹いて、少し旅芸人まがいのことをしてみようと思った。人々の喜ぶ顔がみたい。人と関わるのが怖い私でも、個人として関わらなければ問題はない。こういうことは、一人旅のときでしかできないから、尚更笛を吹きたくなった。
私は笛が得意だ。長く生きているから、色々な種類の曲も吹ける。
難解な曲も吹きこなすことができた。
もともと、首都ガラルドは芸術の街。こういうことをしている人々も多い街だった。
だから私も安心して笛を吹いたのだ。
私が笛を吹きだすと、周りに人垣ができた。
興に乗って、難解な曲も吹くと、拍手が巻き起こる。
私の前に用意した帽子の中には、沢山のお金が入って行った。
もうそろそろ終わらせようと思っていたとき。
観客の中からガラの悪い中年の男が私の方へと出てきた。煙草を口に銜え、蟹股でサンダルをだらしなくずるずると引きずってこちらへ歩いてくる。
「なあ、お嬢ちゃん。誰がここで商売していいって言った?」
私を挑発するためか、それとも本当に勘違いしているのか。
その男は私のことを「お嬢ちゃん」と呼んで、いやな言葉を吐いたのだった。
私にはそれが心地いい。
私にとって、人間と深く関わってしまうことは、とても恐ろしいことだった。
それは、どんなに親しくなっても絶対にやってくる決定的な別れが怖かったから。
私の寿命は、この世界の終焉まである。
だから、必然的に人間はあっという間に逝ってしまうのだ。
それが悲しくて、私はあまり人と深く関わってはこなかった。
一人を除いては。
その人も他の人間の例にもれず、逝ってしまった。
しかし、この世界でいま覇権を握っている人間が、どういうものなのかは興味があった。
人間が何を考えて生きているのか、人間という種は複雑な生き物で、興味がつきない。
私のこの綺麗な姿だって、今この世界で人間が覇権を握っているからこの姿なのだ。創造主は私に人として好ましい形の姿をくれた。
もしも、この世界の覇権をサルやワニがにぎっていたのなら、私は彼らと意思疎通を行うために、必然的にサルやワニになっていただろう。
そう思うと、ちょっと面白い。
秋島の首都まで来て、また今度は冬島までの長距離馬車乗り場を探す。
秋島はからっとした天気で、首都であり芸術の街であるガラルドは人で賑わっていた。
白壁に赤い屋根が特徴的な、整然とした街並みだ。
ここは秋主アレイゼスの護る浮島で、秋という季節が護られている。
人が大勢いたので、私はここの広場で笛を吹いて、少し旅芸人まがいのことをしてみようと思った。人々の喜ぶ顔がみたい。人と関わるのが怖い私でも、個人として関わらなければ問題はない。こういうことは、一人旅のときでしかできないから、尚更笛を吹きたくなった。
私は笛が得意だ。長く生きているから、色々な種類の曲も吹ける。
難解な曲も吹きこなすことができた。
もともと、首都ガラルドは芸術の街。こういうことをしている人々も多い街だった。
だから私も安心して笛を吹いたのだ。
私が笛を吹きだすと、周りに人垣ができた。
興に乗って、難解な曲も吹くと、拍手が巻き起こる。
私の前に用意した帽子の中には、沢山のお金が入って行った。
もうそろそろ終わらせようと思っていたとき。
観客の中からガラの悪い中年の男が私の方へと出てきた。煙草を口に銜え、蟹股でサンダルをだらしなくずるずると引きずってこちらへ歩いてくる。
「なあ、お嬢ちゃん。誰がここで商売していいって言った?」
私を挑発するためか、それとも本当に勘違いしているのか。
その男は私のことを「お嬢ちゃん」と呼んで、いやな言葉を吐いたのだった。