第21話 乾燥地帯の草原
文字数 1,431文字
「もう一つ、寄り道をしていこう。ゼス、草原に行こう」
レイはアレイゼスにそう提案した。
「草原? なんでまた……。まあ、汚れついでによってもいいが。でもあそこは人間には危険だぞ」
「クレスは私が責任をもって守る。だから、草原を少しクレスにみせてあげたいんだ」
二人の会話を後ろで聞いていたクレスは、レイが見せてくれると言っていた『世界』の一部を、本当に見せてくれるんだと期待して、レイに感謝した。
「俺、行ってみたいです、アレイゼス様」
レイがせっかくクレスのために後押ししてくれているのを、無駄にはしない。
クレス自身も積極的にそこに行ってみたいと思った。
どんなところかなんて、見たこともないから分からないのだけど。
「そうか……ならば行くか」
アレイゼスはにやりと笑う。
ラクダは、今度は草原の方へ向けて歩き出した。
しばらくラクダに揺られていると、砂漠よりも草が多く生えた草原に出た。
どこまでも広がる草原。そこでは、多くの動物たちが自由に歩いていた。
見たこともない、大きな動物がいる。
「あんな大きい動物、初めて見る……」
「あれはゾウ、という」
クレスが目を見張ってそれを見ていると、アレイゼスが教えてくれた。
「群れで行動し、草を食べて生きている」
「あんなに大きいのに草で生きているんですね」
「あのおおきな猫のような動物は、肉を食う」
アレイゼスは別の動物を指して説明する。
「雨が降り、草が生え、草を食べる動物がいて、その動物を食べる動物がいる。死んだら土に還る。あたりまえの生命の営みが、ここでは良く判る」
この世界ウェルファーでは、この食物連鎖と生態系の維持が一番重要なことだった。
浮島は面積が広大だが、広さが限られている。
自然が浄化できないほど環境を崩してしまうことが、一番の問題だった。
だから人々は限りある自然の恵みを大事にしてすごしていた。
「秋島ではこの草原よりも大きい麦畑もある。ウェルファーの食物庫は主島と夏島と秋島だ」
「麦は秋島で、米は主に夏島で、主島では両方が作られるんですよね」
「そうだ、クレス。思ったより分かってるな」
「はあ、有難うございます」
にやりと笑われて、やはりアレイゼスにも自分の悪い噂は広がっているのだとクレスは感じた。
「冬島では壊滅的に穀物は栽培できないからな。冬島では秋島と主島から穀物を分けている」
「輸送費がすごくかかりそうですね」
空に浮いているこの世界では、浮島を行き来する手段は季主の守護する飛行船しかないのだ。
人々を乗せる飛行船とは別に、貨物用の飛行船があるが、それを使っても輸送費はばかにはならないだろう。
「そうだな。だから冬島では秋島よりも穀物の値段が必然的に高くなってしまう」
「冬島の人たちはそれで大丈夫なんですか? 生活が苦しくならないのかな」
クレスの純粋な疑問にアレイゼスは答える。
「この世界では、それは必然で、仕方がないことだ。だからなるべく多く栽培して安く出荷できるようにしてやりたいと思っている」
アレイゼスは草原の遠くを見ながらそう呟いた。
「レイ、夏島の米は春島に出荷しているんだよな」
「そうだね。夏島でも多くの米がとれるから。でも春島は強い麦が最近発達しているから、冬島ほど穀物には困ってないと思うよ」
「世界はいろいろ廻っているんだな」
クレスは実際に見たり聞いたりしたことを総合的に考えて、胸が熱くなった。
動物の営み、人々の営み。
世界は廻っている。
それをクレスは肌で感じた。
レイはアレイゼスにそう提案した。
「草原? なんでまた……。まあ、汚れついでによってもいいが。でもあそこは人間には危険だぞ」
「クレスは私が責任をもって守る。だから、草原を少しクレスにみせてあげたいんだ」
二人の会話を後ろで聞いていたクレスは、レイが見せてくれると言っていた『世界』の一部を、本当に見せてくれるんだと期待して、レイに感謝した。
「俺、行ってみたいです、アレイゼス様」
レイがせっかくクレスのために後押ししてくれているのを、無駄にはしない。
クレス自身も積極的にそこに行ってみたいと思った。
どんなところかなんて、見たこともないから分からないのだけど。
「そうか……ならば行くか」
アレイゼスはにやりと笑う。
ラクダは、今度は草原の方へ向けて歩き出した。
しばらくラクダに揺られていると、砂漠よりも草が多く生えた草原に出た。
どこまでも広がる草原。そこでは、多くの動物たちが自由に歩いていた。
見たこともない、大きな動物がいる。
「あんな大きい動物、初めて見る……」
「あれはゾウ、という」
クレスが目を見張ってそれを見ていると、アレイゼスが教えてくれた。
「群れで行動し、草を食べて生きている」
「あんなに大きいのに草で生きているんですね」
「あのおおきな猫のような動物は、肉を食う」
アレイゼスは別の動物を指して説明する。
「雨が降り、草が生え、草を食べる動物がいて、その動物を食べる動物がいる。死んだら土に還る。あたりまえの生命の営みが、ここでは良く判る」
この世界ウェルファーでは、この食物連鎖と生態系の維持が一番重要なことだった。
浮島は面積が広大だが、広さが限られている。
自然が浄化できないほど環境を崩してしまうことが、一番の問題だった。
だから人々は限りある自然の恵みを大事にしてすごしていた。
「秋島ではこの草原よりも大きい麦畑もある。ウェルファーの食物庫は主島と夏島と秋島だ」
「麦は秋島で、米は主に夏島で、主島では両方が作られるんですよね」
「そうだ、クレス。思ったより分かってるな」
「はあ、有難うございます」
にやりと笑われて、やはりアレイゼスにも自分の悪い噂は広がっているのだとクレスは感じた。
「冬島では壊滅的に穀物は栽培できないからな。冬島では秋島と主島から穀物を分けている」
「輸送費がすごくかかりそうですね」
空に浮いているこの世界では、浮島を行き来する手段は季主の守護する飛行船しかないのだ。
人々を乗せる飛行船とは別に、貨物用の飛行船があるが、それを使っても輸送費はばかにはならないだろう。
「そうだな。だから冬島では秋島よりも穀物の値段が必然的に高くなってしまう」
「冬島の人たちはそれで大丈夫なんですか? 生活が苦しくならないのかな」
クレスの純粋な疑問にアレイゼスは答える。
「この世界では、それは必然で、仕方がないことだ。だからなるべく多く栽培して安く出荷できるようにしてやりたいと思っている」
アレイゼスは草原の遠くを見ながらそう呟いた。
「レイ、夏島の米は春島に出荷しているんだよな」
「そうだね。夏島でも多くの米がとれるから。でも春島は強い麦が最近発達しているから、冬島ほど穀物には困ってないと思うよ」
「世界はいろいろ廻っているんだな」
クレスは実際に見たり聞いたりしたことを総合的に考えて、胸が熱くなった。
動物の営み、人々の営み。
世界は廻っている。
それをクレスは肌で感じた。