第49話 ピーター・マッケランという男

文字数 1,068文字

……で、ですよ、ちょっとしたドンデン返しがあったせいで、こちらのアルベルト坊っちゃんが、どうにも宙ぶらりんになっちまいましたなあ。ねえどうします? これまたあっしが他のみたいに料理しちゃおうかなあ、げへへへへ……。え、なんのことだって? うふふ。皆さん。じつはですね、不肖ワタクシめ、このピーター・マッケランがですね、今回の人体改造を一手にお引き受けしてたってワケでしてねえ。はあ嘘つくな、って? お前みたいな酔っ払いのハゲおやじにできるわけないって。あらあそりゃまたお言葉ですなあ。ひどいわあシクシク。じゃここいらでチョット、出し物も落ち着いたことですし、ワタクシの身の上話でも入れさせてもらいましょうかねえ……ちょっと暗くしてスポットライトちょうだい、ウォッホン…… 



司会のハゲでガニ股の小男ピーター・マッケランはしかし、それだけの男ではなかった。牧師の四男として生まれたピーターであったが、幼いころから生物の生態に大変な興味を示し、というと聞こえはいいが、要するに虫や小動物を殺しては解剖し、ジャムの空き瓶などに入れコレクションするのが何よりも好きな子どもであった。
 まあバッタの手足をもぎったりトカゲのしっぽを切ったりといった程度なら誰にでも経験があると思うが、それを宝物のように保管して眺める、ましてや猫の解剖までするとなるとそれは別問題である。だから七歳のとき近所の飼い猫を殺し解剖した事がバレてこっぴどく叱られてからは、細心の注意を払い絶対に見つからないようこっそり隠れて行うようになった。

 学業は非常によくでき成績の良いピーターは先生たちの覚えもめでたいのだが反面、特定のクラスメートへの執拗で陰湿ないじめを繰り返し、しかもそれを生来の頭の良さでうまく隠し通して上手に振る舞うため先生たちはまんまと騙されるが、現場を目の当たりにしているクラスメートからは恐れられ、距離を置かれる存在でもあった。

 十一歳になったピーターはある日、ついに大変な事件を起こす。普段からこっそりといじめ抜いていたピーターのクラスメートであるジョシュ、みんなから常に遅れてしまう少し愚鈍なタイプの少年であった、が学校に行ったまま帰宅せず行方不明となり、二週間後にやや離れた山の中にある朽ちた小屋の中で変わり果てた姿となって発見されたのだ。
 直接の死因は絞殺であったが、その様子はまさに猟奇的で、両腕両脚が付け根から切断されたあげくそれぞれ逆の位置、腕のあるべきところに脚・脚のところには腕、に太い麻糸のようなもので荒々しく縫い付けてあったのだ。
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