第15話

文字数 1,055文字

 アルベルトが宿にしている「親戚の家」はこじんまりとはしていたが立派なアパートメントであり、マントルピースの上には彫刻がほどこされた高級そうな時計が置かれ壁にかけられている風景画には落ち着きと気品が漂い、華奢な小テーブルの天板は見事な寄木細工によるものであった。フラニーにとってはふだん見慣れないものばかりで思わずキョロキョロしてしまう。

「まあ、ずいぶん素敵なお宅ね! 突然来てしまって大丈夫かしら、親戚の方にもごあいさつしなくては」

「ハハハ、大丈夫、今日は所用で出かけると言っていたからね、それに叔母さんとは仲良しだから、僕が友達を呼ぶくらい大歓迎さ」

「そうなの? だったらいいんだけど」

 上流家庭の雰囲気にフラニーは思わず気後れしながら小さくなっている。

「リラックスリラックス。ほら温かいココアを入れたから、ソファにかけてゆっくりしてよ」

「まあ、うれしい。いただくわ」

 ソファに並んで腰かけ温かいココアを飲んでいるうちに、フラニーは安心したのか緊張がほぐれとろりとしてくる。

「ああフラニー、僕は君に会えてとてもうれしいんだよ、今夜は最高だ」

「私もよアルベルト、なんて素敵な夜なのかしら」

 甘いココアを飲みながら座り心地のよいソファの上で肩を抱き寄せられ魅せられたようにうっとりとアルベルトを見つめるフラニー。ところが顔に触れられたとたんふっと我に返り(あら、私ったら何してるの? 早く家に帰らなくては)思ったときにはもう、アルベルトの熱く柔らかな唇が重なり口をふさがれ何も言えなくなってしまった。

「あの、アルベルト、悪いんだけれど私もう帰らないと、」

 なんとか顔を離し告げるフラニー。しかしアルベルトの目は血走り息は荒く無言のままソファの上にフラニーを組み敷くと、オフショルダーのワンピースの胸元をずり下げその桃のような胸に熱く湿った舌を這わせた。

「やめて、アルベルト、や、やめてちょうだい」

 どういうわけだか、ダラリと手足の力が抜けてしまったようでうまく動かせない。どういうこと、なんだかおかしいわ。頭もクラクラするし……考えがまとまらない………でもだめ、いや、いや、いや!

「は、離して、離して、ねえ離しておねがいだから」

 不自由な手足を必死にばたつかせながら抵抗したがことを成し遂げようと押さえつけてくる男の力にはとてもかなわず、下着をはぎ取られたフラニーはあっさり乙女の純潔を奪われてしまった。

「うぐうッ……い、いた…やめ…て…」

 そしてあまりの痛みとショックに、そのまま気を失ってしまったのだった。

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