第4話 ロンバネス伯爵家

文字数 918文字

 第七代目当主であるジョージ・フォンダイン・ロンバネス伯爵を筆頭に、伯爵夫人のミネルヴァ・フォンダイン・ロンバネス、次期当主のウィリアム・フォンダイン・ロンバネス、次男のアルベルト・フォンダイン・ロンバネス、末娘のエルザ・フォンダイン・ロンバネス。カイザル王国北東部に位置するヴィンデクトの美しい森を敷地内に持つ大邸宅で、広大な領地を管理しながら何不自由のないのんびりとした平和な毎日を送っていた一家は、執事のオブライアン、従者のトーマス、料理番のミセス・ペンデルトン他何人もの召使い達と共に静かに暮らしていた。
 しかしカイザルの首都ファンネルンにおいて、物のわからない無学な庶民どもの謀反にあい革命が起こると、八十キロほど離れた場所に位置するロンバネス伯爵家まで全員囚われの身となってしまったのだった。

 地下牢らしきところに一人閉じ込められたアルベルトは、エルザを始め家族の身を案じつつもどうすることもできず、椅子に縛られたまま見張りの男たちに顔や頭を小突かれる毎日を送っていた。だがある日、

「おい、お前の行き先が決まったぜ」

 光の入らない牢獄の中で何日経ったのか定かではないが、アルベルトはそう告げられると牢獄から猟銃で追い立てられ、後ろ手に縛られたまま階段をのぼり外に出された。久しぶりに目にする太陽がまぶしく目に刺さるようで頭の芯がクラクラし、はっきりと目を開けていられない。しかし男たちが乗り込んでいく車を見るや

「おい、これはうちの、ロンバネス伯爵家の車ではないか!」

 思わず叫んだ。

「へへへ、こいつはなかなかの乗り心地だぜ。ファンネルンまで送ってやるんだから喜べ」

 車の中に乱暴に押し込まれたアルベルトに、猟銃を持ち隣に座った男が言う。

「エルザは………お父さまお母さま、ウィリアムはどこにいるんだ!?」

「心配には及ばんよ、先に行ってるはずさ。お前だけはちょっとな、特別扱いってわけだ。まあ理由は言わずもがな。自分でもよくわかってるはずだ」

 男は憎悪に満ちた目をアルベルトに向けると床に向けつばを吐いた。理由、理由とは? 男の言うことに納得できないでいたが、今は何を聞いても無駄だと判断しアルベルトはそのまま口をつぐんだ。

 
 
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