第14話

文字数 847文字

「ふうー、暑い暑い! フラニー、今日はずいぶんノリがいいじゃないの」

 一段落してテーブルに戻った四人の若者たち。ベスがハンカチでパタパタと顔を扇ぎながらフラニーに話しかける。

「うん、なんだか体が軽くって自由に動ける感じなの」

 蝶々のように手をヒラヒラさせながら高揚した様子のフラニー。

「あなたにはきっと天性のリズム感があるんですよ、僕は音痴で恥ずかしいな」

「あら、アルベルトさんのダンスも優雅で素敵よ」

 すかさずフラニーが返す。ダンスホールに集う若者たちは、とくにここ下町では、あっという間に打ち解けるものだ。簡単なあいさつを交わしただけで、アルベルトはベスやエリックともすっかり気楽に話すようになっている。

「ねえアルベルト、さん、家は近いの?」とベス。

「アルベルトでいいですよ、そうですね、自宅はちょっと遠いんですけど親戚がこの辺にいて、今日はそこで」

「あら、どの辺り?」

「マーケットの方ですよ」

「なら方角的にはフラニーの方ね」

「そうでしたか。じゃあぜひお供させて下さいませプリンセス、夜道は危のうございますから」

 ピョコンと頭を下げながらおどけた様子で言うアルベルトに三人は大笑いした。

「キザなやつかもって思ったけど、気さくで面白い人ね! ねえフラニー、恋人にするにはもってこいじゃないの」

 帰り道、腕を組んで二人で並んで歩きながら小声でベスが言う。男性二人は何か面白い話でもしているのか、楽しそうな笑い声を上げながらやや離れた後ろから付いてくる。

「うふふベスもそう思う? なんだか話しやすくて緊張しない感じ。ああ、今日はとっても気分がいいわ」

 夜風に吹かれながらフラニーは、説明できない高揚感に満たされ微笑んだ。

「ベス、僕たちはこっちだね。アルベルト、プリンセスの警護は君に一任しよう」

「かしこまりました閣下! きっとご期待に沿うよう万全の警備でプリンセスをお送りいたします!」

 しゃっちょこばって敬礼しながら軍隊口調でのたまうアルベルト。みなの明るい笑い声が夜のしじまに響くのであった。

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