第3話

文字数 934文字

「う、うう……」

 重く痛む頭をなんとか持ち上げ目を開くとそこは、石壁で囲まれた薄暗い牢獄のような場所だった。椅子に縛り付けられたアルベルトは身動きできず、窓もないので外の様子もわからない。暗い廊下に面した側は頑丈そうな鉄格子になっている。ここは一体どこなんだ、エルザ、エルザはどうした? 

「おい……おい! 誰か! 誰かいないのか!」

 大声で叫ぶアルベルト。するとゴツゴツゴツと石の上を歩く数人の重い足音が揺れるランプの光とともに近づいてきた。

「お目覚めですかい旦那、本日もごきげんうるわしゅう」

「ふざけるな、私を誰だと思っている! お前たちエルザをどうした、ここは一体どこなんだ!」

「エルザ? ああ大丈夫大丈夫、違うオリの中に入ってるよ」

 ニヤニヤと意味ありげに薄気味悪い笑みを交わしながら答える男たち。

「こんなことをして、どうなるかわかってるんだろうな!」

「おいみんな聞いたか、旦那はずいぶんお怒りみたいだぜ。おお怖い怖いなあ!」

 猟銃を手にした三人の男たちは顔を見合わせ大声で笑った。

「ハッハッハッこりゃ傑作だ! こいつあまだ自分の立場がわかってないらしいな。おいマックス、お前から説明してやれよ」

「へん、俺かい。じゃあ教えてやろう。お前たちがのほほんと眠りこけてる間にな、今朝早く首都ファンネルンで反乱が起きたんだよ。革命だよ革命。今ごろは王様一家も城の中で捕まってることだろうさ」

「何をたわけたことを! さっさとここから出すんだ、早くしないと取り返しのつかない事になるぞ」

「ヘヘヘ、まったく笑っちまうなあ。お前たち貴族と来た日にゃあそうやって俺たちを脅し虫ケラみたく踏み付けちゃあ自分たちだけ贅沢三昧、おかげさまで俺たちゃ飢えと貧困で涙さえ出ない有り様でね。だがこれからは違う。やっと俺たちの時代がきたんだよ!」

「なにをっ! 庶民の分際でロンバネス伯爵家に楯突く気か!」

「ま、そういう事だ。じゃお前の行き先が決まるまで静かに待ってな」

「待て、待つんだ!」

「ハハハハハ! ざまあみろってんだ」

 三人の粗野な男たちはゴツゴツゴツと皮の長靴の音を響かせ笑いながら去っていき、後に残されたアルベルト・フォンダイン・ロンバネスはギリギリと歯噛みするしかないのであった。

 
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