第25話 蛇おんな

文字数 943文字

みなさまお楽しみいただいておりますかな? 笑うとお腹も空きましょう。本日はミセス・メイプルが蜜がけのリンゴをご用意しておりますよ、もうちょっと刺激の強いものをご希望でしたらアルコール度数高めのリンゴ酒(アップルサイダー)もたっぷりありますからね、どうぞどうぞご賞味くださいませね。ほら、あの、後ろの売店にて販売しておりますんでね。蜜リンゴは二スース、アップルサイダーは四スースでして。もうほんとにね、お安く出しておりますんでね。ささ、どうぞどうぞ。売り切れる前にね、ぜひどうぞ。それじゃあたしもちょっと失礼して、アップルサイダーでも引っかけてまいりますかな。げへげへ。出し物はね、まだまだ続きますからねえ。げへげへげへ。

(一旦、幕)

「うん、こりゃ美味い。いくらでも飲めそうだ」

「アップルサイダーはやっぱり秋が一番だ、なんといっても新鮮なリンゴで作るんだからな」

「それにしてもダルマ男は傑作だったなあ! 血まみれになりながら、転げても転げても起き上がってくるんだからヒヒヒ」

「アレはまったく面白いこと考えついたもんだ、でっぷりと肥え太った腹なんてダルマそのものだもんなあヘヘヘ」

「俺はよう、いくら倒しても倒しても倒したりねえんだわ。だってよう、うちのカミさんはあいつのために死んだようなもんじゃねえか、あいつら貴族だけが肥え太ってよう、ロクに栄養のあるもんも食わせてやれないままでよう、ウウウウウ」

「まーたお前の泣き上戸が始まりやがった。さあ、お楽しみはまだまだ続くんだぜ、さんざん俺たちを苦しめてきたやつらの末路、とっくりと見てやろうじゃねえか」

 男は友人の肩を抱き慰めるようにぽんぽんと叩きながら客席の方へと戻っていった。

さあさ皆さま、お戻りですかな。ヒック。おっと失礼、いやあ今日のアップルサイダーはこれがまたばかに美味いときておる。ヒック。ね、そうでしょう旦那。あい、あい、わかっておりますよ。ちょっと水くれ水。うん、うん、うん、ふう。よし、はい、それではいきましょうかね。さてさてさてそれでは皆さまお待ちかね、次に出てまいりますのは驚き桃の木さんしょの木、二ツに割けたベロでちろりちろり、ピカリピカリと銀色にまぶしく光るウロコが全身くまなくおおい隠す蛇おんなでございますよ。さあさとくとご覧あれ!

 
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