第28話
文字数 936文字
「そうそう、寝室の壁紙なんだけど何色がいいかしら? 今のはちょっと暗いでしょう、ぜんぶ二人の好きなように変えてしまえばいいって、お父さまが言うのよ」
リリアンの実家・ヴァロワ家の持ち物である邸宅で、近々スタートする新婚生活に想いをはせるリリアン。
「うん? リリアンが好きな色で僕は構わないよ」
「うふふ、それはうれしいんだけど。なんだかたくさん見ているうちに、よくわからなくなっちゃったのよ」
「ああ、なるほどね。うーんそうだなあ、ペパーミントグリーンなんてどう? リリアンのきれいな緑色の瞳にもきっと合うと思うんだ」
「まあ、ドレスじゃなくって壁紙なのよ、瞳の色は関係なさそうだけど」
「だって寝室だろう? 君の瞳をいちばんじっくりとのぞき込む場所になるに違いないんだから」
突然、リリアンの頬が真っ赤に染まる。
「ア、アルベルトったらもう! わたし恥ずかしいわ」
その様子は、未婚で身持ちの固い純粋な貴族の娘らしく、いかにも初々しくかわいらしいものだった。アルベルトの瞳に一瞬ギラリとした光が宿る、しかしもちろんそんなことにはまったく気が付かないリリアンである。
とその時、近くの茂みから急に何かが飛び出してきた。
「きゃっ!」
驚いたリリアンは思わずアルベルトの腕に抱きついた。しかしそれはよく見れば、ただの小さなリスであった。
「ハハハ、リリアン、君は本当に恐がりだね。そんなに悲鳴をあげるもんだから見てごらん、リスの方がこっちを怖がってるよ」
リリアンはちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめ
「まあ、笑うなんていじわるね! だって驚いたんだもの」
アルベルトはそんなリリアンを愛おしそうに抱き寄せると、桃色に染まる頬を左手で包みつやつやと赤いくちびるにそっと口づけをした。かすかにレモンの香りがただよう。
「ねえリリアン、僕は君のそんなところが可愛くって仕方ないんだよ。I love you, darling.」
「じゃあ、いつもきっとわたしを守ってちょうだいね。I love you too, わたしのアルベルト……」
若い恋人たちはぴたりと寄り添い愛し愛される幸せを十分に感じながら、キラキラと輝く水面に映る二人の明るい未来を、満ち足りた気持ちの中いつまでも見つめているのであった。
リリアンの実家・ヴァロワ家の持ち物である邸宅で、近々スタートする新婚生活に想いをはせるリリアン。
「うん? リリアンが好きな色で僕は構わないよ」
「うふふ、それはうれしいんだけど。なんだかたくさん見ているうちに、よくわからなくなっちゃったのよ」
「ああ、なるほどね。うーんそうだなあ、ペパーミントグリーンなんてどう? リリアンのきれいな緑色の瞳にもきっと合うと思うんだ」
「まあ、ドレスじゃなくって壁紙なのよ、瞳の色は関係なさそうだけど」
「だって寝室だろう? 君の瞳をいちばんじっくりとのぞき込む場所になるに違いないんだから」
突然、リリアンの頬が真っ赤に染まる。
「ア、アルベルトったらもう! わたし恥ずかしいわ」
その様子は、未婚で身持ちの固い純粋な貴族の娘らしく、いかにも初々しくかわいらしいものだった。アルベルトの瞳に一瞬ギラリとした光が宿る、しかしもちろんそんなことにはまったく気が付かないリリアンである。
とその時、近くの茂みから急に何かが飛び出してきた。
「きゃっ!」
驚いたリリアンは思わずアルベルトの腕に抱きついた。しかしそれはよく見れば、ただの小さなリスであった。
「ハハハ、リリアン、君は本当に恐がりだね。そんなに悲鳴をあげるもんだから見てごらん、リスの方がこっちを怖がってるよ」
リリアンはちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめ
「まあ、笑うなんていじわるね! だって驚いたんだもの」
アルベルトはそんなリリアンを愛おしそうに抱き寄せると、桃色に染まる頬を左手で包みつやつやと赤いくちびるにそっと口づけをした。かすかにレモンの香りがただよう。
「ねえリリアン、僕は君のそんなところが可愛くって仕方ないんだよ。I love you, darling.」
「じゃあ、いつもきっとわたしを守ってちょうだいね。I love you too, わたしのアルベルト……」
若い恋人たちはぴたりと寄り添い愛し愛される幸せを十分に感じながら、キラキラと輝く水面に映る二人の明るい未来を、満ち足りた気持ちの中いつまでも見つめているのであった。