第59話 グランドフィナーレ
文字数 1,429文字
小屋じゅうを揺るがす拍手に緞帳が再度上がる。舞台の上にはオリに入れられた猿婦人、ダルマ男、蛇おんな、スパイダーウーマン、そして犬男とアルベルトがそれぞれ椅子に縛りつけられたかっこうで並べてある。舞台袖から小走りに出てきたのは司会の小男ピーターだ。
はい、はい、はい、皆さま今日はどうもね、はい、最後までお付きあいまことにありがとうございました。それではね、最高の復讐劇を盛り上げてくだすった本日の立役者の皆さんにね、どうぞ皆さま盛大な拍手を!
ベス嬢、ケニー氏、エリック氏そしてトーマス氏!
(客席に向かって笑顔で手を振りながら舞台袖から歩いてくる四人、返り血でところどころ赤く染まっている。割れんばかりの拍手)
はい、はい、はい、どうもね、素晴らしかったですよ皆さん、ね。それではね、お名残り惜しゅうございますが、そろそろお別れなんでございますよ。じゃ最後にね、不肖わたくしピーター・マッケランがすべてのオチを付けますよ。
(いつのまにか左手に持っていた大きな瓶を両手で抱え直すと、薄茶色の透明な液体を舞台上に撒き散らす。鼻を刺すガソリンの匂いが会場内に漂う)
うん、うん、うん、シメはやっぱりこれでしょう。
(何が起こっているのかわからぬまま皆が呆然とする中、ピーターはポケットから素早くオイルライターを取り出し着火する。気づいた客たちが悲鳴をあげながら急いで出口に向かおうとする)
それじゃ皆さん、ここらでパアッと行きましょうや、げへげへげへげへ……
(火のついたライターを舞台の上に放り出す)
ボンッ!
火はすぐさま布製の緞帳に燃え移り舞台は音をたててメラメラと炎上しあたりは一瞬にして火の海となった。精神異常者ピーター・マッケランの怨念のこもった叫び声が、どこからかうっすらと聞こえてくる。
みんな燃えろおおおお燃えてしまえええええええええ
「ぎゃあああああ」
「いやあああああ」
「火が、火が、助けてええええ」
「ど、どけどけっ!」
「ひいっ! 痛い痛い痛いいいぃ!」
パニックになった観客たちはなんとか外に出ようと出口に殺到し逆に折り重なるようにして倒れ出口をふさいでしまう。テントを覆うキャンバス地には防水のため全体にパラフィンが塗られており、熱で溶けだした高熱のパラフィンが小屋の天井から人々の上に、地獄の夕立さながら容赦なく降りそそぐ。
「ぎゃっ! 熱いっ熱いっ!」
「水、水、水うううううぅ」
ポケットナイフを取り出しテントを切り裂き脱出しようと試みる者もいたが、二重三重に塗られたパラフィンで補強された布地は、簡単に切れるものではなかった。
「ぐぉぉぉぉぉぉっ!」
「やだあっ! いやっ! 来ないで、来ないでっ」
どんどん燃え広がる炎の中、火だるまとなった人間が断末魔をあげながら倒れ込んでくる。
オリに入れられたままのダルマ男=ジョージ・フォンダイン・ロンバネス伯爵、スパイダーウーマン=ミネルヴァ・フォンダイン・ロンバネス伯爵夫人、猿婦人=エルザ・フォンダイン・ロンバネス、蛇おんな=リリアン・ド・ヴァロワは、すでに事切れていた犬男=ウィリアム・フォンダイン・ロンバネス、そしてアルベルト・フォンダイン・ロンバネスと共に、燃え盛る炎の中異形の姿のまま激しく狂おしく燃え上がる。
さらに小屋全体があっという間に紅蓮の炎に包まれ、遠くからはまるで小屋そのものが怒り狂いながら咆哮をあげる巨大な炎の怪物のように見えたことであろう。
こうしてすべては、無に帰したのであった。
はい、はい、はい、皆さま今日はどうもね、はい、最後までお付きあいまことにありがとうございました。それではね、最高の復讐劇を盛り上げてくだすった本日の立役者の皆さんにね、どうぞ皆さま盛大な拍手を!
ベス嬢、ケニー氏、エリック氏そしてトーマス氏!
(客席に向かって笑顔で手を振りながら舞台袖から歩いてくる四人、返り血でところどころ赤く染まっている。割れんばかりの拍手)
はい、はい、はい、どうもね、素晴らしかったですよ皆さん、ね。それではね、お名残り惜しゅうございますが、そろそろお別れなんでございますよ。じゃ最後にね、不肖わたくしピーター・マッケランがすべてのオチを付けますよ。
(いつのまにか左手に持っていた大きな瓶を両手で抱え直すと、薄茶色の透明な液体を舞台上に撒き散らす。鼻を刺すガソリンの匂いが会場内に漂う)
うん、うん、うん、シメはやっぱりこれでしょう。
(何が起こっているのかわからぬまま皆が呆然とする中、ピーターはポケットから素早くオイルライターを取り出し着火する。気づいた客たちが悲鳴をあげながら急いで出口に向かおうとする)
それじゃ皆さん、ここらでパアッと行きましょうや、げへげへげへげへ……
(火のついたライターを舞台の上に放り出す)
ボンッ!
火はすぐさま布製の緞帳に燃え移り舞台は音をたててメラメラと炎上しあたりは一瞬にして火の海となった。精神異常者ピーター・マッケランの怨念のこもった叫び声が、どこからかうっすらと聞こえてくる。
みんな燃えろおおおお燃えてしまえええええええええ
「ぎゃあああああ」
「いやあああああ」
「火が、火が、助けてええええ」
「ど、どけどけっ!」
「ひいっ! 痛い痛い痛いいいぃ!」
パニックになった観客たちはなんとか外に出ようと出口に殺到し逆に折り重なるようにして倒れ出口をふさいでしまう。テントを覆うキャンバス地には防水のため全体にパラフィンが塗られており、熱で溶けだした高熱のパラフィンが小屋の天井から人々の上に、地獄の夕立さながら容赦なく降りそそぐ。
「ぎゃっ! 熱いっ熱いっ!」
「水、水、水うううううぅ」
ポケットナイフを取り出しテントを切り裂き脱出しようと試みる者もいたが、二重三重に塗られたパラフィンで補強された布地は、簡単に切れるものではなかった。
「ぐぉぉぉぉぉぉっ!」
「やだあっ! いやっ! 来ないで、来ないでっ」
どんどん燃え広がる炎の中、火だるまとなった人間が断末魔をあげながら倒れ込んでくる。
オリに入れられたままのダルマ男=ジョージ・フォンダイン・ロンバネス伯爵、スパイダーウーマン=ミネルヴァ・フォンダイン・ロンバネス伯爵夫人、猿婦人=エルザ・フォンダイン・ロンバネス、蛇おんな=リリアン・ド・ヴァロワは、すでに事切れていた犬男=ウィリアム・フォンダイン・ロンバネス、そしてアルベルト・フォンダイン・ロンバネスと共に、燃え盛る炎の中異形の姿のまま激しく狂おしく燃え上がる。
さらに小屋全体があっという間に紅蓮の炎に包まれ、遠くからはまるで小屋そのものが怒り狂いながら咆哮をあげる巨大な炎の怪物のように見えたことであろう。
こうしてすべては、無に帰したのであった。