第50話

文字数 1,086文字

 もちろん地元警察による捜査が行われたがまさかピーターのような年端もいかぬ少年に疑いをかける者などなく(クラスメートの中には怪しんだ者もいたかもしれないのだが)、また科学的捜査など望むべくもない時代ということもあり、犯人は隣町に住み少年に対する強制わいせつの前科を持つ、少し頭のおかしい中年男だろうという事で落ち着いてしまった。
 
 こうして自らの犯した「殺人」という大罪からまんまと逃げおおせたピーターはこれに味をしめ、またジョシュに行った人体改造の楽しさと興奮が忘れられず、さらなる獲物を求め目を光らせるようになる。
 しかしさすがに「人間」の獲物はそうそうおらずピーターは仕方なくリスやウサギなどの小動物(幸運なことに、それらの多く住む森が家の近くにあった)を捕まえ解剖してはパーツごとに小瓶に入れホルマリン漬けにしてコレクションし、そこからまた取り出しては違う個体に組み替えて縫合する、といったことを繰り返していた。 

 十五歳になったピーターは地元を離れ全寮制の寄宿学校に入学する。そこではおのずと厳しい規則に従うしかなく、ピーターの異常な欲求はいったん鳴りを潜めた。成績優秀、素行優良のピーターはここでも教師たちの信頼を勝ち取り最終学年(十八歳)ではヘッドボーイ(生徒代表)に選ばれ一般の生徒にはない特権、外出時間の延長・エリア外への遠征許可などを得る。学校内で問題を起こすことは得策でないと考えたピーターは校内でのいじめ等はやめ面倒見のよい優等生として振る舞い、誰からも好かれる人気の生徒となった。しかしだからといってピーターの「嗜好」が変わったわけではもちろんなく、巧妙に隠しながらも小動物等への虐待および「コレクション」は続けていた。

 そんなある日のことピーターは息抜きでたまに訪れていた、町中にあるパブで一人の青年と出会う。黒に近い濃い栗色の、ややウェーブがかった髪の毛をかき上げる指は細く長く神経質そうで、終始うつむき加減で陰りのある眼差しにふいに捕まるとドキリとして逃げられない気がした。日に透けてキラキラと輝く美しいブロンドの髪を持ち、小柄でやせ型の繊細な美少年であるピーターはすでに寄宿学校の中で少年同士の恋愛を、肉体関係も含み、経験しており決して初めてのことではなかった。にもかかわらず、いやだからなのかピーターはその男、名をデビッドと言う、に夢中になった。
 彼はピーターより少し歳上の二十歳で近所で働いていると聞いたが職種などくわしいことは知らなかったしどうでもよかった。そして誘われるがままデビッドの部屋に行き、愛撫の数々に溺れていくのである。
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