第09話  Cocoon 繭 2。

文字数 1,180文字




新たなる命の愛らしさ、輝くばかりの美しさ。
然して、エゴの芽生え、自己意識の形成が早々に始まる。
そして、ややこしきアドレッセンスの時代に突入していってしまう。
重心は獲得されし形成されし人格の中へと移行する。
これは既定路線。誰もがみんな。然るべきの流れ…。



彼らがこんなに短期間にそれほど大きくなるのは、
桑の葉を食べること以外、何もしないからだ。



一日目は一枚の葉で百匹の幼虫を食べさせることができる。
二日目には、籠に一杯の葉が必要になる。三日目には荷車一杯。
四日目にはトラック一杯だ。

彼らは夜も昼も食べ続ける。
与えられたら与えられただけ、彼らは食べ続ける。

しかし三十日目ぐらいもすると、疲れてしまい、もお食べられなくなる。
すると彼らは眠り始める。食べ過ぎの人が誰でもそうであるように…。

お腹一杯で眠る人は、ごろごろと寝返りを打って、中のものを消化する。
そういうふうに、蚕の幼虫もごろごろと転げ回って、そうしている間に
口からネバネバした唾液を出す。





食べたものが全部、ねっとりとした液体になって流れ出してくるのだ。
そしてそれが絹糸になるわけだ。そうやってごろごろしている間に
幼虫はその糸でぐるぐる巻きになってしまう。



それが繭、Cocoonである。

糸を全部吐き出してしまうと、彼らは深い眠りに落ちる。繭の中で、何も知らずに…。

そして、ようやく目が覚めて、自分が自分の吐き出した唾液でできた
頑丈な檻の中に閉じ込められてしまっているのを知る。

「あれ?…どうなったんだろう…?」
「私はどうしてこんなところにいるんだろう……?」
「私に何が起こったんだろう……?」

そして少しずつ思い出す...。

「そうだ、私は食べてばからりいたっけ。食べられうるものは何もかも、
 際限なしに食べていた。」
「貪り食べて、疲れ果てて、それから完全に眠り込んでしまったのだ。」
「そしてごろごろと転げ回って、自分で自分を縛り上げ、この繭の中に取り込めてしまった。」

「なんと恐ろしいことだろう…」

「私は少しでも他人と分かち合うべきだった。私は全く利己的だった…。」
「私は確かに、無私の、自己犠牲の精神における行いについて聞いたことはあった。」
「ところが私ときたら、それを心に留めることもなく、忠告に従うことなど
 露と思いはしなかった。」
「そういった説教があれば、済めば、また新たなる貪りへと、
 心は即座に向かっていたものだ。」
「あれらの真実の、知恵ある言葉は、右の耳から左の耳へ通り抜けていっていた…」


「そうだ...、私は自分の過去を、すべての罪を悔い改めなければならないのだ...」


〈続〉


出典:『インテグラル・ヨーガ』スワミ・サッチダーナンダ著、めるくまーる(意訳byMe)


後半部の流れは、めったにしか起こらない、稀なケースだと思います。
人生が危機的状況に置かれてからの、なってからのもの。
回心の流れですね。



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