第28話 有岡が干上がってしまうぞ
文字数 716文字
天正6年(1578年)12月。
信長は有岡城への一斉攻撃を命じた。が、諜報戦と軍略において優れた伊賀者を味方に付けている村重軍は健闘した。信長の側近、万見重元(まんみ しげもと)を打ち破るなど見事な抵抗を見せている。影武者と知った中川清秀、高山右近の亡霊も恐るに足りなかった。
さらに、「城内の士気を高めるため」と小猿たちから背中を押され、村重自身がわずか500の兵を率いて、信長の嫡男信忠の砦に夜襲をかけ敗退させている。
この健闘に「村重強し」との武辺が摂河泉に轟いた。信長の力攻めの攻撃が緩む。戦は暫く膠着状態が続いた。
しかし、問題は兵糧であった。次第に尽き始めてきた兵糧に村重は不安になった。
「なぜ来ぬのじゃ!」
物資と援軍を当てにしての籠城。されどいつまで待てど頼りにしていた毛利も本願寺も来ない。村重は周章を募らせていた。
毛利への橋渡しを隠密裡行なっていた小猿が難しい顔で呟く。
「猪名川の補給路を堰き止められております」
「誰に?」
「滝川に」
その武名を聞いて村重が顔を顰める。
「またも甲賀の仕業か」
「こうなれば兵糧を断つのが一番損害がでませぬからな。滝川はそれをわかっておりまする」
「毛利はどこまで来ておるのだ?」
「尼崎まで」
「すぐそこではないか」
「しかし、動きませぬ、桂殿は」
桂元綱、毛利五奉行の桂家の跡取り。毛利家の重臣である。
「補給路遮断を理由に、自軍の危ない道を避けておられる」
小太郎と衣茅に当たらせたところ、桂元綱は有岡城から二里ほどの南の尼崎に陣を構え、毛利方村上水軍の補給が行き届く猪名川下流の尼崎城と花隈城から一歩も動いていない。これに本願寺も様子見であった。
「それでは有岡が干上がってしまうぞ」
信長は有岡城への一斉攻撃を命じた。が、諜報戦と軍略において優れた伊賀者を味方に付けている村重軍は健闘した。信長の側近、万見重元(まんみ しげもと)を打ち破るなど見事な抵抗を見せている。影武者と知った中川清秀、高山右近の亡霊も恐るに足りなかった。
さらに、「城内の士気を高めるため」と小猿たちから背中を押され、村重自身がわずか500の兵を率いて、信長の嫡男信忠の砦に夜襲をかけ敗退させている。
この健闘に「村重強し」との武辺が摂河泉に轟いた。信長の力攻めの攻撃が緩む。戦は暫く膠着状態が続いた。
しかし、問題は兵糧であった。次第に尽き始めてきた兵糧に村重は不安になった。
「なぜ来ぬのじゃ!」
物資と援軍を当てにしての籠城。されどいつまで待てど頼りにしていた毛利も本願寺も来ない。村重は周章を募らせていた。
毛利への橋渡しを隠密裡行なっていた小猿が難しい顔で呟く。
「猪名川の補給路を堰き止められております」
「誰に?」
「滝川に」
その武名を聞いて村重が顔を顰める。
「またも甲賀の仕業か」
「こうなれば兵糧を断つのが一番損害がでませぬからな。滝川はそれをわかっておりまする」
「毛利はどこまで来ておるのだ?」
「尼崎まで」
「すぐそこではないか」
「しかし、動きませぬ、桂殿は」
桂元綱、毛利五奉行の桂家の跡取り。毛利家の重臣である。
「補給路遮断を理由に、自軍の危ない道を避けておられる」
小太郎と衣茅に当たらせたところ、桂元綱は有岡城から二里ほどの南の尼崎に陣を構え、毛利方村上水軍の補給が行き届く猪名川下流の尼崎城と花隈城から一歩も動いていない。これに本願寺も様子見であった。
「それでは有岡が干上がってしまうぞ」