第26話 此度の一件。甲賀者が動きましてござります

文字数 471文字

「であれば、今この城を包囲している中川殿と高山殿を招き入れますか、ここに?」
 小猿の提案に村重は顔を歪めた。
「小寺殿と同じように酒宴と偽り土牢に閉じ込めますか?」
「ぐっぬっうう」
 現実を教えなければならない。
「陥落寸前のこの城に・・・」
 機と見て、小猿は背後に目配せした。小太郎が進み出て村重に報ずる。
「畏れながら、甲賀の仕業でござります」
 村重が小太郎を睨む。
「甲賀だと?」
「は、此度の一件。甲賀者が動きましてござります」
 村重は怪訝そうに尋ねる。
「下忍ごときが何を?」
 自分も召抱えておきながら忍者への侮蔑は消えていない。
 衣茅が小猿の影から伝えた。
「中川清秀、高山右近、両名とも、既にこの世におりませぬ」
「なにい!」
 村重がくノ一の声に反応する。
「滅せられております。暗殺は彼らの得意とするところ」
「女子(おなご)のくせに虚言申すな!」
 衣茅の盾となっていた小猿が堪りかねて言う。
「女子(おなご)なれど下忍なれど、我ら伊賀者、嘘は申しませぬ。謀はいたしますが」
「ど、どういうことだ? さっきこの城を包囲しているとお主言ったではないか?」

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