第18話 智謀にかけては小寺孝高より衣茅の方が優れている

文字数 395文字

 小太郎が言う。
「荒木殿にくれぐれも用心するようにそなたからお伝え申せ」
 小猿は少し考えてから呟く。
「会わぬ方がよいな」
「そう申しておるつもりじゃ」
 小太郎と衣茅が意を含んで示し合わせたように頷く。
「追い返すか?」
 衣茅は首を振る。
「殺めるか?」
 またも首を振る。促されて衣茅は言った。
「追い返せば角が立ち、殺めれば攻めの口実を作ることになります。毛利や本願寺に向けている兵力を村重に集約されましょう」
「ならばいかがする?」
 小猿は試すような目で衣茅に問いかける。衣茅も試すような目つきで小猿に語る。
「見せしめに監禁するがよいかと。ただの牢ではなく土牢に手足縛ったまま」
「土牢?」
「はい。才ある者を壊すには、戦場(いくさば)ではなく名さえ残らぬよう才無くすまで閉じ込めておく。これが最も苦痛でござりましょう」
「なんと・・・」
 小猿は思った。智謀にかけては小寺孝高より衣茅の方が優れていると。
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