第22話 でかした衣茅!

文字数 615文字

 信長の使者としてやって来た小寺孝高(黒田官兵衛)を村重は控えの間で待たせ、孝高も知る古参の家臣をして二人だけで酒を飲みながら語り合いたいと饗応の間に誘い込んだ。
 残された伴の者は別の間に移され、やはり酒宴でもてなすと佩刀預かり、家臣たちに皆斬殺させた。
 孝高が案内された饗応の間には城主と客人の座が二つだけ設けられていた。その客座、実は床に細工が施され、軒下の閂を外せば床板が開き座ごと下に落ちる仕掛けであった。
「小寺殿、こちらへ」
 古参の家臣が孝高を客座に導く。座りが悪しかりましょうと気遣い、孝高の横に刀架を添える。油断したか、孝高は大小を腰から抜き二本とも刀架に並べる。
 それを見た小太郎が蟋蟀の声を発する。
(衣茅いまだ!)
 天井裏には小太郎が獲物の引き揚げを待っていた。床下では衣茅が孝高の着座を待っていた。二人の呼吸が揃ったところで衣茅が閂を外す。
“ガタン”
 床板が抜ける。
 丸腰となった孝高の体が軒下へ堕ちる。そこには大きな網が待ち構えている。
 網の口を衣茅が閉じる。孝高の体が網の中で包まれる。
(そうれ、口を!)
 小太郎の合図に衣茅が縄の口に結ばれたクナイを天井向けて投擲す。クナイは天井の太い梁に突き刺さった。小太郎が素早くクナイを抜き縄を梁に通して天井から飛び降りる。その縄に衣茅も飛びつく。
 すると網にかかった孝高の体が軒下からぐんぐん持ち上げられ、ちょうど梁にぶら下がる形で中空に浮いた。
(でかした衣茅!)
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