第13話 明智から頼まれたのであろう

文字数 448文字

「明智と?」
 意外な名前に丹波の表情がさらに曇る。
 村重謀反を最初耳にした信長は質しの使者として明智光秀を有岡城に派遣している。実は光秀の娘が荒木村重の嫡男荒木村次の妻であったからであるが、その娘の護衛を小猿は光秀本人から委託されたことがあるとのこと、孫太夫は小猿から聞いたことがある。
 孫太夫は言った。
「明智は美濃土岐源氏の庶子とか申しておるそうですが、出自は怪しいものでござります。小猿曰く、光秀とは美濃の地侍の時分からの旧知で、一時光秀自身も忍びの技を小猿から学んだことがあるとのこと」
「それはまことか?」
 藤林保正が孫太夫の伏せた瞳を覗き込む。
「小猿がそう申しておる故、まことでありましょう」
 顎を上げて服部正成が呟く。
「それで道理がいった。小猿が敗北必至の村重に付いたのも。明智から頼まれたのであろう、娘を助けてくれと」
「おっしゃる通り。小猿は息子の仇討ちと申しておりますが、実は明智光秀の娘の護衛で有岡城に入ったのでござります。無論、我らの目的である信長の首を取ることと重ね合わせて」
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