その②
文字数 4,171文字
最後の戦いの場所は、市内の廃校。時刻は夜。その人気のない校庭に、一人の男が立っている。清水だ。
「来たか…!」
彼は校門をくぐる四人の若者の姿を捉えた。
「よく、臆することなくここまで来たな…」
本来ならば聞こえないし届かない呟き。しかし神通力者なら耳で拾える。だから縁も、
「終わらせるためだ。来ないという選択肢はない!」
と言った。
両者はもっと距離を縮める。
「四対一か。これは厳しい戦いになりそうだな…」
「それは違う」
縁が清水の発言を否定した。
「彼らは今日は、見に来ただけさ。だから戦わない。お前とやり合うのは僕だけだ!」
「それは、俺を舐めているのか? 四人がかりなら潰せる、しかし面白くなさそうだから手を抜くわけか…」
「そうじゃない。これは僕なりの敬意だ。お前はきっと、東邦大会でも偉い方なんだろう? 海崎から聞いた。そんなお前が直々に僕を叩こうって言うなら、正々堂々受けるまで。それが相手に対する正しい姿勢と思ったんだ」
それには、高校生の言葉とは思えない重みがある。それをしっかりと清水は受け取る。
「そうか。お前の父親は神通力者ではないらしいが…立場がお前と同じだったら、そうしていただろう」
すると、沈黙が周囲を包み込む。いつ始まってもおかしくはないのだが、二人とも動こうとしない。
「ハクションッ!」
夜の風が、薄着の菫にくしゃみをさせた。それがキッカケで、縁と清水が動き出す。
(縁の神通力は、炎を操ること! それは俺とは相性が最悪なはずだ…。だが、そこから勝ちに持って行きかねない。それが小戸縁という人物!)
まず清水は距離を取る。いきなり火炎放射されては大怪我するためだ。清水の目には縁が、平気で命を殺める人物に見えている。
「すぐに終わらせる!」
縁は清水の動きを確認した後、手のひらに火球を生み出した。それを清水の足元目掛けて飛ばす。
「足の自由を奪ってからなぶり殺しにしようという作戦か!」
対する清水は、神通力を使う。するとその火球が一瞬で消えた。
「お前は、水を使うのか!」
そう。清水の神通力は水を生み出し操ること。だから火球を一瞬で消すことに成功した。
「悪く思うな、縁!」
次に縁目掛けて放水する。威力はそこまで高いわけではないので、縁は怪我もしないだろう。だが、水浸しになれば神通力に支障が出るのではないかという作戦。
「炎じゃ、防げな…!」
その水に一瞬だけ縁は飲み込まれる。服は下着までずぶ濡れだ。
「だけど…! ここで引くわけにはいかない! くらわせる!」
しかし縁の炎の威力は落ちない。自分の体が濡れていようが、神通力はエラーを吐かないのだ。火球を五つ、連続で撃ち込む。
「それは無駄だ…」
清水の水は、炎ほどの器用さはない。けれども自分に向かって飛ぶ火の玉を消すぐらいはワケないのだ。
「こっちからも行かせてもらおう…!」
今度は逆に清水が、水で球体を作ると縁に向かって撃った。それに対し縁は火炎放射をしたが、無意味。炎は全て水で消されてしまい、水の球体は縁に当たるとその体を十メートル以上突き飛ばした。
「厳しいか! でも…」
相性の悪さは縁にもわかる。
「おい縁! これは勝てねえだろう? 協力す…」
「手を出すな! これは僕とコイツとのバトルだ!」
見ていられず烽が叫んだのだが、縁に拒否された。
「本気で勝つつもりなんですか、縁君? 相手は君にとって最悪の神通力者ですよ?」
鍍金は烽の味方をする。が、
「コイツに全力で勝負を挑めば、必ず勝てる! 勝負は相性だけでは決まらない!」
協力の申し出を全く聞き入れようとしない。
「ここは見守りましょう? まだ縁君も負けるって決まったわけじゃないわ」
菫はそう言い、二人を止めた。
「…わかりましたよ。でも、本当に危険な場合は!」
「ああ。わかってるぜ、鍍金! 縁に何と言われようとも、な!」
その時は、縁の制止を振り切ってでも加勢する。
「余計な戦力は、なしか」
それを清水が聞いていた。彼は内心では安堵している。流石に四人がかりで向かってこられたら、勝ち目がない。
(だがな…。縁だけなら勝てる。それを今から思い知らせてやる…!)
水は変幻自在だ。ちゃんとイメージを働かせて神通力を使えば、思い通りに動かせる。そして今、清水がやろうとしていること。それは、ウォーターカッター。これで縁の体を切り裂いてやろうという考えだ。しかし、離れているとせっかくの切れ味が死ぬ。だから近づく必要が生じる。
(危険だが、縁を討つには仕方がない! リスクなしで勝利はつかめない。それだけのこと!)
一歩踏み出す。まだ炎は飛んでこない。ならばもう一歩。するとその動きに縁が気付く。
「近づいて来るか!」
縁からすれば、対象が近いことに越したことはない。高温度で相手を襲うことができるから。だが、そんな危険を冒してまでどうして近づいて来るのか。それがわからないのだ。だから後ろに下がる。
でも、ただ下がるだけじゃない。炎を鞭のように動かして、清水に攻撃を仕掛ける。対する清水は、その炎を何とかかいくぐり距離を詰める。
「ぬわぁっ!」
しかし、炎の鞭は予想外の動きを見せた。そして清水の足にぶつかった。たった一瞬の接触で、ズボンの裾が焼け落ちた。
「これをまともにくらったら…間違いなく終わりか!」
確信すると同時に、自分に誓う。もう一撃も受けないと。そして十分な距離まで来た。
「くらえ、縁!」
瞬間、清水の指先から放水。
「何か、まずい!」
反発的に縁は横に動いた。おかげで解き放たれた水は、縁の頬をかすめただけで済んだ。
「いっつ!」
だが、頬から血が出る。皮膚を確かに切り裂かれたのだ。
「こんなことができるのか!」
そうとわかれば警戒する。ここで縁は勝負を決めに行く。相手の方から十分な間合いに近づいてくれたのだ、それを利用しない手はない。
「ここで、これだ! くらえ、必殺の火災旋風!」
炎が渦を成すと、あっという間に赤い竜巻が誕生した。高熱を放ちながら風を生み出すそれは、校庭の砂を巻き上げ熱し、ガラス状にすると遠くに放り出す。これが縁の目の前で生み出され、そして清水に向かって迫るのだ。
「うぬおおおおおお!」
恐怖しないわけがない。
(死ぬ! くらったら確実に! ならば……)
ここでまず最初に考えたのが、火災旋風を鎮火すること。水を無尽蔵に生み出せる清水ならできることだ。
だが、放水しても思い通りに消せなかった。縁が炎を補充しているために、竜巻の形を成した火が中々消えないのだ。
(駄目か? ならば、安全な場所まで一旦逃げるか?)
ここが廃校の校庭であることを思う出すと、校舎の中に逃げれば大丈夫かもしれないと思う。だから縁に背中を見せて逃げるのだ。しかし、敗北を認めるのではない。校舎の中からでも攻撃はできる。
だが、火災旋風の速さは神通力者の足をもってしても逃げられないレベルなのだ。縁もそれを自在にコントロールしているので、清水の背中をミサイルのように正確に追う。
(駄目か! これでは…!)
この刹那、清水の頭の中に敗北の二文字が現れた。
(それだけは何としてでも、避ける! 絶対に!)
直後、この心に浮かび上がった二文字が津波に流される。
(それだ!)
そして閃く。この状況を打開するアイディアを。
(初めて行うが……もう迷っている暇はない!)
言ってしまえばそれは、縁のしていることを真似るだけだ。炎で旋風を作れるのなら、水ではどうだ? そのシンプルな発想が、清水に勇気を与えた。だがぶっつけ本番であることに変わりはない。
「上手く………行けええええ!」
両手から水を放ち、それが渦を作る。火災旋風が相手ならこれは、水流旋風とでも言おうか? 水の流れが竜巻のようだ。それを清水は火災旋風に送り込む。
「どうなる!」
すると、二つの旋風は同時に消滅した。それを縁も見ていた。
「馬鹿な? 火災旋風がかき消された?」
煙と水蒸気だけが残る。縁はそれに驚いた。今まで人を殺めることはしたことがない彼にとって、自分の頭の中で最強のはずの火災旋風がこうも簡単にかき消されたことが信じられない。
この時縁には、決定的な隙が生じている。が、清水も動かない。彼は彼で、この状況を
突破できたことに驚いているのだ。
「ど、どうだ縁! お前の炎は怖くない! 決まっているのだ、火は水には勝てん、と!」
形勢逆転を利用しない手はない。清水は叫んだ。事実を突きつけることで、縁の動揺を誘うのだ。
(く、どうする…?)
そしてその心理攻撃は効いている。縁は負けることはないにしても、次の手をどうすればいいのかを考える。
(僕の炎は、アイツまでは届かない…。これはもう変えようがないんだ。だったらもうそれは諦めて、他の方法を!)
ここで清水は追撃を仕掛ける。先ほど効果があった水の球体。より大きな球を生み出せば、それでトドメがさせる可能性がある。
「流れが変わったこの状況で一気に終わらせる!」
さっきのとは比べ物にならないほどの大きさの球体を育てる。もちろん縁はこれに危機感を覚えた。
「させるか!」
火炎放射をして妨害する。
「無駄だ!」
清水は機敏にそれに反応し、放水して火を消した。だがこの時わずかながら体勢が揺れ、球体から水がこぼれる。
「しかし! 微々たる妨害だ……。もはや止めることはできまい!」
もっと大きく。水は無尽蔵に補給できるので、念には念を入れて一発で仕留められる大きさまで持っていく。
「ヤバいな……。だけど!」
縁は逃げない。このまま戦うことを選ぶ。
(火は水に負ける…。その常識を打ち破ればいいんだ!)
発想はいいが、その方法は? 清水の水の球体はもう完成間近。はたして間に合うのか?
「来たか…!」
彼は校門をくぐる四人の若者の姿を捉えた。
「よく、臆することなくここまで来たな…」
本来ならば聞こえないし届かない呟き。しかし神通力者なら耳で拾える。だから縁も、
「終わらせるためだ。来ないという選択肢はない!」
と言った。
両者はもっと距離を縮める。
「四対一か。これは厳しい戦いになりそうだな…」
「それは違う」
縁が清水の発言を否定した。
「彼らは今日は、見に来ただけさ。だから戦わない。お前とやり合うのは僕だけだ!」
「それは、俺を舐めているのか? 四人がかりなら潰せる、しかし面白くなさそうだから手を抜くわけか…」
「そうじゃない。これは僕なりの敬意だ。お前はきっと、東邦大会でも偉い方なんだろう? 海崎から聞いた。そんなお前が直々に僕を叩こうって言うなら、正々堂々受けるまで。それが相手に対する正しい姿勢と思ったんだ」
それには、高校生の言葉とは思えない重みがある。それをしっかりと清水は受け取る。
「そうか。お前の父親は神通力者ではないらしいが…立場がお前と同じだったら、そうしていただろう」
すると、沈黙が周囲を包み込む。いつ始まってもおかしくはないのだが、二人とも動こうとしない。
「ハクションッ!」
夜の風が、薄着の菫にくしゃみをさせた。それがキッカケで、縁と清水が動き出す。
(縁の神通力は、炎を操ること! それは俺とは相性が最悪なはずだ…。だが、そこから勝ちに持って行きかねない。それが小戸縁という人物!)
まず清水は距離を取る。いきなり火炎放射されては大怪我するためだ。清水の目には縁が、平気で命を殺める人物に見えている。
「すぐに終わらせる!」
縁は清水の動きを確認した後、手のひらに火球を生み出した。それを清水の足元目掛けて飛ばす。
「足の自由を奪ってからなぶり殺しにしようという作戦か!」
対する清水は、神通力を使う。するとその火球が一瞬で消えた。
「お前は、水を使うのか!」
そう。清水の神通力は水を生み出し操ること。だから火球を一瞬で消すことに成功した。
「悪く思うな、縁!」
次に縁目掛けて放水する。威力はそこまで高いわけではないので、縁は怪我もしないだろう。だが、水浸しになれば神通力に支障が出るのではないかという作戦。
「炎じゃ、防げな…!」
その水に一瞬だけ縁は飲み込まれる。服は下着までずぶ濡れだ。
「だけど…! ここで引くわけにはいかない! くらわせる!」
しかし縁の炎の威力は落ちない。自分の体が濡れていようが、神通力はエラーを吐かないのだ。火球を五つ、連続で撃ち込む。
「それは無駄だ…」
清水の水は、炎ほどの器用さはない。けれども自分に向かって飛ぶ火の玉を消すぐらいはワケないのだ。
「こっちからも行かせてもらおう…!」
今度は逆に清水が、水で球体を作ると縁に向かって撃った。それに対し縁は火炎放射をしたが、無意味。炎は全て水で消されてしまい、水の球体は縁に当たるとその体を十メートル以上突き飛ばした。
「厳しいか! でも…」
相性の悪さは縁にもわかる。
「おい縁! これは勝てねえだろう? 協力す…」
「手を出すな! これは僕とコイツとのバトルだ!」
見ていられず烽が叫んだのだが、縁に拒否された。
「本気で勝つつもりなんですか、縁君? 相手は君にとって最悪の神通力者ですよ?」
鍍金は烽の味方をする。が、
「コイツに全力で勝負を挑めば、必ず勝てる! 勝負は相性だけでは決まらない!」
協力の申し出を全く聞き入れようとしない。
「ここは見守りましょう? まだ縁君も負けるって決まったわけじゃないわ」
菫はそう言い、二人を止めた。
「…わかりましたよ。でも、本当に危険な場合は!」
「ああ。わかってるぜ、鍍金! 縁に何と言われようとも、な!」
その時は、縁の制止を振り切ってでも加勢する。
「余計な戦力は、なしか」
それを清水が聞いていた。彼は内心では安堵している。流石に四人がかりで向かってこられたら、勝ち目がない。
(だがな…。縁だけなら勝てる。それを今から思い知らせてやる…!)
水は変幻自在だ。ちゃんとイメージを働かせて神通力を使えば、思い通りに動かせる。そして今、清水がやろうとしていること。それは、ウォーターカッター。これで縁の体を切り裂いてやろうという考えだ。しかし、離れているとせっかくの切れ味が死ぬ。だから近づく必要が生じる。
(危険だが、縁を討つには仕方がない! リスクなしで勝利はつかめない。それだけのこと!)
一歩踏み出す。まだ炎は飛んでこない。ならばもう一歩。するとその動きに縁が気付く。
「近づいて来るか!」
縁からすれば、対象が近いことに越したことはない。高温度で相手を襲うことができるから。だが、そんな危険を冒してまでどうして近づいて来るのか。それがわからないのだ。だから後ろに下がる。
でも、ただ下がるだけじゃない。炎を鞭のように動かして、清水に攻撃を仕掛ける。対する清水は、その炎を何とかかいくぐり距離を詰める。
「ぬわぁっ!」
しかし、炎の鞭は予想外の動きを見せた。そして清水の足にぶつかった。たった一瞬の接触で、ズボンの裾が焼け落ちた。
「これをまともにくらったら…間違いなく終わりか!」
確信すると同時に、自分に誓う。もう一撃も受けないと。そして十分な距離まで来た。
「くらえ、縁!」
瞬間、清水の指先から放水。
「何か、まずい!」
反発的に縁は横に動いた。おかげで解き放たれた水は、縁の頬をかすめただけで済んだ。
「いっつ!」
だが、頬から血が出る。皮膚を確かに切り裂かれたのだ。
「こんなことができるのか!」
そうとわかれば警戒する。ここで縁は勝負を決めに行く。相手の方から十分な間合いに近づいてくれたのだ、それを利用しない手はない。
「ここで、これだ! くらえ、必殺の火災旋風!」
炎が渦を成すと、あっという間に赤い竜巻が誕生した。高熱を放ちながら風を生み出すそれは、校庭の砂を巻き上げ熱し、ガラス状にすると遠くに放り出す。これが縁の目の前で生み出され、そして清水に向かって迫るのだ。
「うぬおおおおおお!」
恐怖しないわけがない。
(死ぬ! くらったら確実に! ならば……)
ここでまず最初に考えたのが、火災旋風を鎮火すること。水を無尽蔵に生み出せる清水ならできることだ。
だが、放水しても思い通りに消せなかった。縁が炎を補充しているために、竜巻の形を成した火が中々消えないのだ。
(駄目か? ならば、安全な場所まで一旦逃げるか?)
ここが廃校の校庭であることを思う出すと、校舎の中に逃げれば大丈夫かもしれないと思う。だから縁に背中を見せて逃げるのだ。しかし、敗北を認めるのではない。校舎の中からでも攻撃はできる。
だが、火災旋風の速さは神通力者の足をもってしても逃げられないレベルなのだ。縁もそれを自在にコントロールしているので、清水の背中をミサイルのように正確に追う。
(駄目か! これでは…!)
この刹那、清水の頭の中に敗北の二文字が現れた。
(それだけは何としてでも、避ける! 絶対に!)
直後、この心に浮かび上がった二文字が津波に流される。
(それだ!)
そして閃く。この状況を打開するアイディアを。
(初めて行うが……もう迷っている暇はない!)
言ってしまえばそれは、縁のしていることを真似るだけだ。炎で旋風を作れるのなら、水ではどうだ? そのシンプルな発想が、清水に勇気を与えた。だがぶっつけ本番であることに変わりはない。
「上手く………行けええええ!」
両手から水を放ち、それが渦を作る。火災旋風が相手ならこれは、水流旋風とでも言おうか? 水の流れが竜巻のようだ。それを清水は火災旋風に送り込む。
「どうなる!」
すると、二つの旋風は同時に消滅した。それを縁も見ていた。
「馬鹿な? 火災旋風がかき消された?」
煙と水蒸気だけが残る。縁はそれに驚いた。今まで人を殺めることはしたことがない彼にとって、自分の頭の中で最強のはずの火災旋風がこうも簡単にかき消されたことが信じられない。
この時縁には、決定的な隙が生じている。が、清水も動かない。彼は彼で、この状況を
突破できたことに驚いているのだ。
「ど、どうだ縁! お前の炎は怖くない! 決まっているのだ、火は水には勝てん、と!」
形勢逆転を利用しない手はない。清水は叫んだ。事実を突きつけることで、縁の動揺を誘うのだ。
(く、どうする…?)
そしてその心理攻撃は効いている。縁は負けることはないにしても、次の手をどうすればいいのかを考える。
(僕の炎は、アイツまでは届かない…。これはもう変えようがないんだ。だったらもうそれは諦めて、他の方法を!)
ここで清水は追撃を仕掛ける。先ほど効果があった水の球体。より大きな球を生み出せば、それでトドメがさせる可能性がある。
「流れが変わったこの状況で一気に終わらせる!」
さっきのとは比べ物にならないほどの大きさの球体を育てる。もちろん縁はこれに危機感を覚えた。
「させるか!」
火炎放射をして妨害する。
「無駄だ!」
清水は機敏にそれに反応し、放水して火を消した。だがこの時わずかながら体勢が揺れ、球体から水がこぼれる。
「しかし! 微々たる妨害だ……。もはや止めることはできまい!」
もっと大きく。水は無尽蔵に補給できるので、念には念を入れて一発で仕留められる大きさまで持っていく。
「ヤバいな……。だけど!」
縁は逃げない。このまま戦うことを選ぶ。
(火は水に負ける…。その常識を打ち破ればいいんだ!)
発想はいいが、その方法は? 清水の水の球体はもう完成間近。はたして間に合うのか?