その③
文字数 2,367文字
数分は追いかけた。だが、姿が捉えられない。最初の内は、六人はすぐに追いつけると思っていた。
しかし、相手の男もただ者ではなかったのだ。何と彼らと同じように飛び、隣のビルに移ってみせる。
(間違いない! あの男……神通力者!)
犁祢は確信を持った。だからこそ早く見つけ出して始末しなければいけないと感じた。
「いたか?」
「いや! あっちじゃねえ!」
「これだと、まずいな…」
男三人が合流した。相手の逃げ足は速く、中々追いつけない。人気が全く感じられない町はずれの公園に降り立った。
「心たちは…?」
「アイツらは、バラバラに探している。俺らは合流して探そう」
作戦を決めたその時、上の方から声が聞こえる。
「その必要はな~~~い!」
見上げると、その男が降ってくる。かなり綺麗に着地すると、
「お前ら、人殺しだな? 俺、見たぜ?」
その声を聞いたことはないが、見たことのある顔だった。
「お前は確か、女子児童連続誘拐殺人事件の…!」
指名手配されていたから、隆康には見覚えがあったのだ。
「そう! 俺、沼田 舞太郎 ! 今日、何やら騒がしいと思えば…ビックリだ!」
「ほほう。沼田の犯罪者さんよ、ここに来て、どうするって?」
伊集院たちは犯罪者を前にしても怯まない。だが犁祢は感じていた。
(コイツが神通力者なら、その神通力は? 場合によっては危険だ…)
その抱いた感触が、犁祢に後ずさりをさせた。そして後ろに下がっていなかったら、完全にアウトだった。
「ぐわっ!」
いきなり、伊集院と隆康が倒れた。
「ど、どうした?」
わからない。先制攻撃だろうか? だが沼田は変な動きを見せたりしていない。
(ここは迷ってる場合じゃない。神通力だ…!)
犁祢の目つきが変わった。その瞬間を沼田は見逃さない。恐るべき跳躍力で、百メートルぐらい上にジャンプして犁祢との位置関係をリセットする。
「きゅ、きゅう…」
猿が一匹、泡を吹いて倒れていた。その手には、スタンガンが握られている。
「これは! これがお前の神通力か?」
犁祢の鋭い洞察力は、一瞬にして沼田の神通力を見抜いた。
「そうだ。俺の神通力、動物を完全に支配下に置くこと! これで猿、俺の言いなり! 何でもさせることできる…!」
いつの間にか後ろに回り込んでいる沼田。犁祢が振り返ると、そこにいたのは沼田だけではない。野良犬、野良猫、野ネズミ、野鳥……。大量の野生動物が、犁祢のことを睨んでいるのだ。
「みんな、集合! これよりヤツ、殺す!」
ここで犁祢は自分が生き残る道を探り当てた。
(簡単じゃないか! 動物に気を付けながら、沼田を殺せばいいだけだろ? なら…)
簡単。そのはずだった。
「ウ!」
一匹の犬が倒れた。それを見ると沼田は、またジャンプして移動する。野生動物もそれについていく。
「お前、何かしたな? もしかして、神通力者か?」
頷くことなく犁祢は考え事をしていた。
(どうして、神通力がバレた? しかもちゃんと沼田の周囲の酸素濃度をゼロにしたはずなのに、犬しか殺せてないのは…もしや!)
そのもしや。沼田は、自分に何かダメージがある場合、支配下に置いた動物に代わらせることができるのだ。それも神通力の一部である。
「神通力者だろ? 違うか?」
「……そうだ…」
もはやルールを守っている暇はなく、丁寧な口調は消え去った。
(殺す。ここで、コイツを…!)
自分だけでできるかどうかは問題ではない。問題なのはこの大量の野生動物をいかにかいくぐって沼田に手を下すかなのだ。早めに直接攻撃を届かせないと、野生動物を補充されてしまう。そうなると増々手が出しにくくなってしまう、悪循環。
「どうした? 来ないのか? なら俺、行くぞ!」
沼田の方が先に動き出した。猫を掴むと、勢いよくこちらに投げつける。
「…くっ!」
犁祢は腕を振って弾いた。できないことではないし、猫を殺した程度で心は何も痛まない。だが、
(神通力者と、どうやって戦えばいい? そのいろはを知らないぞ? どうする?)
その心配が頭を離れないのだ。
「ほら、来いよ?」
挑発してくる。しかしここは冷静にならないといけない。
「どうした? もう打つ手なしか?」
だが落ち着いて考えても、打開策は見出せない。ならば取るべき行動はシンプルに一つ。
(沼田に、先に音を上げさせればいいんだ!)
犁祢は野生動物の群れに突撃した。
「何?」
意味のない特攻に見えるかもしれないがそれは間違い。犁祢の周りの空気には、酸素がない。その状態で相手の懐に入ったのだ。無酸素状態を味あわせる。それが目的。
「しまった…?」
沼田は犁祢の本意に気付くのが遅れた。おかげで犬と猫が数匹、死んだ。
「だが!」
野鳥の方は無事。空気を貯めておける器官を体内に持つためだろう。だから犁祢の顔を突いて来る。が、所詮は野生動物、神通力者の敵ではない。素早く掴んで、体を真っ二つに引きちぎる。
「これがお前の未来の姿だ、沼田!」
「面白い! 逆に殺してやる!」
沼田もジャンプしないで、犁祢の相手をするつもりだ。
「うりゃあああ!」
犁祢の拳は、野生動物に遮られることなく沼田の顔に届いた。だが、ダメージは与えられていない。足元の野ネズミがいきなり破裂した。
(駄目か…! やはり野生動物を片付けないと、ダメージを沼田に届かせられない!)
しかし、野生動物は大量にこの公園に集まっている。全てが沼田の意見を飲み、支配されているのだ。
しかし、相手の男もただ者ではなかったのだ。何と彼らと同じように飛び、隣のビルに移ってみせる。
(間違いない! あの男……神通力者!)
犁祢は確信を持った。だからこそ早く見つけ出して始末しなければいけないと感じた。
「いたか?」
「いや! あっちじゃねえ!」
「これだと、まずいな…」
男三人が合流した。相手の逃げ足は速く、中々追いつけない。人気が全く感じられない町はずれの公園に降り立った。
「心たちは…?」
「アイツらは、バラバラに探している。俺らは合流して探そう」
作戦を決めたその時、上の方から声が聞こえる。
「その必要はな~~~い!」
見上げると、その男が降ってくる。かなり綺麗に着地すると、
「お前ら、人殺しだな? 俺、見たぜ?」
その声を聞いたことはないが、見たことのある顔だった。
「お前は確か、女子児童連続誘拐殺人事件の…!」
指名手配されていたから、隆康には見覚えがあったのだ。
「そう! 俺、
「ほほう。沼田の犯罪者さんよ、ここに来て、どうするって?」
伊集院たちは犯罪者を前にしても怯まない。だが犁祢は感じていた。
(コイツが神通力者なら、その神通力は? 場合によっては危険だ…)
その抱いた感触が、犁祢に後ずさりをさせた。そして後ろに下がっていなかったら、完全にアウトだった。
「ぐわっ!」
いきなり、伊集院と隆康が倒れた。
「ど、どうした?」
わからない。先制攻撃だろうか? だが沼田は変な動きを見せたりしていない。
(ここは迷ってる場合じゃない。神通力だ…!)
犁祢の目つきが変わった。その瞬間を沼田は見逃さない。恐るべき跳躍力で、百メートルぐらい上にジャンプして犁祢との位置関係をリセットする。
「きゅ、きゅう…」
猿が一匹、泡を吹いて倒れていた。その手には、スタンガンが握られている。
「これは! これがお前の神通力か?」
犁祢の鋭い洞察力は、一瞬にして沼田の神通力を見抜いた。
「そうだ。俺の神通力、動物を完全に支配下に置くこと! これで猿、俺の言いなり! 何でもさせることできる…!」
いつの間にか後ろに回り込んでいる沼田。犁祢が振り返ると、そこにいたのは沼田だけではない。野良犬、野良猫、野ネズミ、野鳥……。大量の野生動物が、犁祢のことを睨んでいるのだ。
「みんな、集合! これよりヤツ、殺す!」
ここで犁祢は自分が生き残る道を探り当てた。
(簡単じゃないか! 動物に気を付けながら、沼田を殺せばいいだけだろ? なら…)
簡単。そのはずだった。
「ウ!」
一匹の犬が倒れた。それを見ると沼田は、またジャンプして移動する。野生動物もそれについていく。
「お前、何かしたな? もしかして、神通力者か?」
頷くことなく犁祢は考え事をしていた。
(どうして、神通力がバレた? しかもちゃんと沼田の周囲の酸素濃度をゼロにしたはずなのに、犬しか殺せてないのは…もしや!)
そのもしや。沼田は、自分に何かダメージがある場合、支配下に置いた動物に代わらせることができるのだ。それも神通力の一部である。
「神通力者だろ? 違うか?」
「……そうだ…」
もはやルールを守っている暇はなく、丁寧な口調は消え去った。
(殺す。ここで、コイツを…!)
自分だけでできるかどうかは問題ではない。問題なのはこの大量の野生動物をいかにかいくぐって沼田に手を下すかなのだ。早めに直接攻撃を届かせないと、野生動物を補充されてしまう。そうなると増々手が出しにくくなってしまう、悪循環。
「どうした? 来ないのか? なら俺、行くぞ!」
沼田の方が先に動き出した。猫を掴むと、勢いよくこちらに投げつける。
「…くっ!」
犁祢は腕を振って弾いた。できないことではないし、猫を殺した程度で心は何も痛まない。だが、
(神通力者と、どうやって戦えばいい? そのいろはを知らないぞ? どうする?)
その心配が頭を離れないのだ。
「ほら、来いよ?」
挑発してくる。しかしここは冷静にならないといけない。
「どうした? もう打つ手なしか?」
だが落ち着いて考えても、打開策は見出せない。ならば取るべき行動はシンプルに一つ。
(沼田に、先に音を上げさせればいいんだ!)
犁祢は野生動物の群れに突撃した。
「何?」
意味のない特攻に見えるかもしれないがそれは間違い。犁祢の周りの空気には、酸素がない。その状態で相手の懐に入ったのだ。無酸素状態を味あわせる。それが目的。
「しまった…?」
沼田は犁祢の本意に気付くのが遅れた。おかげで犬と猫が数匹、死んだ。
「だが!」
野鳥の方は無事。空気を貯めておける器官を体内に持つためだろう。だから犁祢の顔を突いて来る。が、所詮は野生動物、神通力者の敵ではない。素早く掴んで、体を真っ二つに引きちぎる。
「これがお前の未来の姿だ、沼田!」
「面白い! 逆に殺してやる!」
沼田もジャンプしないで、犁祢の相手をするつもりだ。
「うりゃあああ!」
犁祢の拳は、野生動物に遮られることなく沼田の顔に届いた。だが、ダメージは与えられていない。足元の野ネズミがいきなり破裂した。
(駄目か…! やはり野生動物を片付けないと、ダメージを沼田に届かせられない!)
しかし、野生動物は大量にこの公園に集まっている。全てが沼田の意見を飲み、支配されているのだ。