第48話 Phase47
文字数 1,038文字
「え、来てほしいって言ったの?」
相変わらず人気のない場所でお昼を食べながら、蒼は目を見開く。
「隠してるって言ってなかったっけ?」
「いや、もうバレたし。蒼もいただろ、その時」
「たしかに。あれは怖かったね」
蒼は俊の父を思い出したのか苦笑いをする。
「……本当は、見に来てほしいなんて言うつもりはなかったんだけど。蒼のこと見てたら、それじゃダメなんじゃないかと思って」
「私?」
「蒼は、ありのままの自分を家族に見せることにしたんだろ? 俺も、そうしたい。やりたいことやってる本当の自分を見てほしいって思った」
蒼は驚いたように目を開いた。それから、花が咲くように笑う。
「いいと思う……なんか、安心した」
「安心?」
「うん。私だけじゃないんだって。そういう、共有できる気持ちがあると安心する」
蒼は胸に手を当てる。
「……私ね、まだ言えてないんだ、来てほしいって。やっぱり、否定されるかもしれないし、多分そっちの方が可能性は高いし……結局怖いんだよね」
蒼の声は明るかったが、無理やり震えを抑えつけているようだった。
「……やだなぁ、弱虫みたい」
「俺は、そんなことないと思う」
言い切った俊を、蒼は驚いた顔で見つめる。
「怖いなんて当たり前だろ。ずっと一人で抱えてきたものを離して、新しい状況にするのって難しいことだし勇気のいることだと思う。でも、蒼はそれを自分から進んでやろうとしてるじゃん。全然、弱くなんかない」
蒼は思わず息を止めていた。自分よりも俊の方がずっと強いと感じていた。でも俊も、蒼が強いと思ってくれていた。蒼の目にじわりと涙がにじんだ。
「……ありがとね、俊くん」
泣いてることを知られるのがなんとなく恥ずかしくて、蒼は前を向いたまま言う。俊は蒼の意図がわかっていたのか、ただうなずいただけだった。
「お母さん」
いつもより硬い蒼の声に、蒼の母は驚きながら振り向く。
「お願いが、あるんだけど……」
「何? あらたまって。ちょっと怖いわよ」
母の声も思わず硬くなる。
「今度の学校祭、見に来てほしい」
「学校祭? いいけど……」
そんなに深刻そうな話でもなく、母から力が抜けた。
「どうしたの、急に。去年とかは来なくていいって言ってたのに」
「最後の学校祭だし。それに、お母さんたちに見てほしいものもあるんだ」
「見てほしいもの?」
母は意外そうに目を見開く。
「そ、そこから先はまだ内緒だから」
蒼は逃げるように部屋に戻った。まだ心臓は強く波打っていたが、少しだけ覚悟が決まった気がした。
相変わらず人気のない場所でお昼を食べながら、蒼は目を見開く。
「隠してるって言ってなかったっけ?」
「いや、もうバレたし。蒼もいただろ、その時」
「たしかに。あれは怖かったね」
蒼は俊の父を思い出したのか苦笑いをする。
「……本当は、見に来てほしいなんて言うつもりはなかったんだけど。蒼のこと見てたら、それじゃダメなんじゃないかと思って」
「私?」
「蒼は、ありのままの自分を家族に見せることにしたんだろ? 俺も、そうしたい。やりたいことやってる本当の自分を見てほしいって思った」
蒼は驚いたように目を開いた。それから、花が咲くように笑う。
「いいと思う……なんか、安心した」
「安心?」
「うん。私だけじゃないんだって。そういう、共有できる気持ちがあると安心する」
蒼は胸に手を当てる。
「……私ね、まだ言えてないんだ、来てほしいって。やっぱり、否定されるかもしれないし、多分そっちの方が可能性は高いし……結局怖いんだよね」
蒼の声は明るかったが、無理やり震えを抑えつけているようだった。
「……やだなぁ、弱虫みたい」
「俺は、そんなことないと思う」
言い切った俊を、蒼は驚いた顔で見つめる。
「怖いなんて当たり前だろ。ずっと一人で抱えてきたものを離して、新しい状況にするのって難しいことだし勇気のいることだと思う。でも、蒼はそれを自分から進んでやろうとしてるじゃん。全然、弱くなんかない」
蒼は思わず息を止めていた。自分よりも俊の方がずっと強いと感じていた。でも俊も、蒼が強いと思ってくれていた。蒼の目にじわりと涙がにじんだ。
「……ありがとね、俊くん」
泣いてることを知られるのがなんとなく恥ずかしくて、蒼は前を向いたまま言う。俊は蒼の意図がわかっていたのか、ただうなずいただけだった。
「お母さん」
いつもより硬い蒼の声に、蒼の母は驚きながら振り向く。
「お願いが、あるんだけど……」
「何? あらたまって。ちょっと怖いわよ」
母の声も思わず硬くなる。
「今度の学校祭、見に来てほしい」
「学校祭? いいけど……」
そんなに深刻そうな話でもなく、母から力が抜けた。
「どうしたの、急に。去年とかは来なくていいって言ってたのに」
「最後の学校祭だし。それに、お母さんたちに見てほしいものもあるんだ」
「見てほしいもの?」
母は意外そうに目を見開く。
「そ、そこから先はまだ内緒だから」
蒼は逃げるように部屋に戻った。まだ心臓は強く波打っていたが、少しだけ覚悟が決まった気がした。