第10話 Phase9
文字数 1,100文字
「で? 話って何?」
空き教室の椅子に座った蒼は、机に頬杖をつきながら俊をにらむ。
「まずは……ごめん。知らないうちに、蒼を傷つけたみたいで。自分では、気をつけてたつもりだった……いや、言い訳だな、こんなの」
蒼は何も言わない。俊は震えそうになる声を、深呼吸で押さえつけた。
「……どう接したらいいかわからなかった。異性になりたいって思っている人に会うのは初めてだったから。接し方なんて、今もわからない。でも、俺は」
傾いた日の光が、俊の顔を照らす。目を離せない、離してはいけないと思わせるような強さがあった。
「俺は、そういうところも含めて、蒼のことを知りたいと思った。できれば……友だちに、なりたいと思った」
蒼はじっと俊の目を見つめた。俊もその目をまっすぐに見つめ返した。
「……本気?」
「ああ」
俊は迷わずに答える。覚悟はできていた。
「……僕は、周りの人には隠してる。家族にも言ってない。絶対に言わないって誓える? 他の人の前で、僕のこと男子として扱える?」
まくしたてるように言う蒼に、俊はあっけにとられる。
「……何?」
「いや……やっとまともに喋ったと思って。蒼が秘密にしたいなら、俺は守るよ。蒼が望むなら、他のやつの前では男子として接する。これが守れたら、蒼の友だちでいいってこと?」
「……」
蒼は答えない。俊のことをすんなりと信じるわけにはいかないようだった。
「……俺のこと信用できないなら、試してみるか?」
「は? 試すって……」
「テストだよ。一週間くらいやってみて、それでも信用できないなら諦める。何もしないまま諦めるのは嫌だからな」
「でも……」
それすらもためらうような蒼の様子に、俊は心の中で傷ついていた。
「それって、俊は嫌じゃないの?」
「え?」
蒼の声に、俊は思わず間の抜けた反応をしてしまう。
「だって、そういうことするってことは、信用してませんって言ってるようなものだよ。自分を信用していない人と一緒にいるのって、つらくない?」
「……そうだな」
俊は一度認める。たしかに、信用されていないのは嫌だけど。
「でも俺は、その一週間で蒼に信用してもらえるなら、そんなのどうってことない。一週間の嫌な気持ちと、高校卒業するまでの嫌な気持ちとだったら、一週間の方がいいに決まってる」
俊の目は真剣で、簡単に考えが変わるとは思えなかった。蒼はとうとうため息をついた。
「……わかった。僕は君をテストする。代わりにその間、毎日ここにギター持ってきて」
「いいけど……なんでだ?」
「決まってるじゃん。前のときは、いろいろあって聴けなかったからね」
そう言うと蒼は、俊に向かって微笑んでみせた。
空き教室の椅子に座った蒼は、机に頬杖をつきながら俊をにらむ。
「まずは……ごめん。知らないうちに、蒼を傷つけたみたいで。自分では、気をつけてたつもりだった……いや、言い訳だな、こんなの」
蒼は何も言わない。俊は震えそうになる声を、深呼吸で押さえつけた。
「……どう接したらいいかわからなかった。異性になりたいって思っている人に会うのは初めてだったから。接し方なんて、今もわからない。でも、俺は」
傾いた日の光が、俊の顔を照らす。目を離せない、離してはいけないと思わせるような強さがあった。
「俺は、そういうところも含めて、蒼のことを知りたいと思った。できれば……友だちに、なりたいと思った」
蒼はじっと俊の目を見つめた。俊もその目をまっすぐに見つめ返した。
「……本気?」
「ああ」
俊は迷わずに答える。覚悟はできていた。
「……僕は、周りの人には隠してる。家族にも言ってない。絶対に言わないって誓える? 他の人の前で、僕のこと男子として扱える?」
まくしたてるように言う蒼に、俊はあっけにとられる。
「……何?」
「いや……やっとまともに喋ったと思って。蒼が秘密にしたいなら、俺は守るよ。蒼が望むなら、他のやつの前では男子として接する。これが守れたら、蒼の友だちでいいってこと?」
「……」
蒼は答えない。俊のことをすんなりと信じるわけにはいかないようだった。
「……俺のこと信用できないなら、試してみるか?」
「は? 試すって……」
「テストだよ。一週間くらいやってみて、それでも信用できないなら諦める。何もしないまま諦めるのは嫌だからな」
「でも……」
それすらもためらうような蒼の様子に、俊は心の中で傷ついていた。
「それって、俊は嫌じゃないの?」
「え?」
蒼の声に、俊は思わず間の抜けた反応をしてしまう。
「だって、そういうことするってことは、信用してませんって言ってるようなものだよ。自分を信用していない人と一緒にいるのって、つらくない?」
「……そうだな」
俊は一度認める。たしかに、信用されていないのは嫌だけど。
「でも俺は、その一週間で蒼に信用してもらえるなら、そんなのどうってことない。一週間の嫌な気持ちと、高校卒業するまでの嫌な気持ちとだったら、一週間の方がいいに決まってる」
俊の目は真剣で、簡単に考えが変わるとは思えなかった。蒼はとうとうため息をついた。
「……わかった。僕は君をテストする。代わりにその間、毎日ここにギター持ってきて」
「いいけど……なんでだ?」
「決まってるじゃん。前のときは、いろいろあって聴けなかったからね」
そう言うと蒼は、俊に向かって微笑んでみせた。