第4話 Phase3
文字数 983文字
学校祭が終わると、また日常に戻った。俊は相変わらず勉強ばかりしていた。
下校時刻のチャイムが鳴る。しかし、キリが悪かったので俊はもう少し続けようと手を止めなかった。
(あと一問だけ)
白い紙が数字や記号で埋め尽くされていく。最後の答えを出すと、俊は息を吐きながら伸びをした。パキッと背中から音がする。
「……帰るか」
俊は鞄を持って教室を出た。
ふと、数日前の学校祭の時のことを思い出す。ギターを弾いていた女子が何年生かはわからないが、彼女が弾いていた曲は同じ階の空き教室から聞こえていた。もしかしたら、今日もいるのかもしれない。気になった俊は、空き教室へと足を運んだ。
夕日を浴びながらギターを弾く。この空き教室なら、あまり人が来ない。秘密を守るには、うってつけの場所だ。
ギターを鳴らすたびに髪に結わえられた赤いリボンが揺れる。窓に反射するその姿を見つめながら、曲を弾き続けた。
空き教室のドアは閉まっていた。しかし、かすかにギターの音が聞こえる。俊はドアのガラス張りになっているところからこっそりと空き教室の中をのぞいた。
(同じ人だ。同級生だったのか)
俊は机に寄りかかってギターを弾く女子を見ていた。
今日彼女が弾いている曲はこの前の曲とは違う。それでも、優しい音色に変わりはなかった。
(……いい曲。なんか、ほっとする)
俊は壁にもたれかかりながらズルズルと腰を下ろす。言い知れぬ感情に包まれる。
(この人の音好きだな。ギターを愛してるってわかる。俺には、こんな音は出せない)
曲の流れに身を任せるように俊は目を閉じた。耳の中で、あの優しい音が響く。
あまりにも心地よくて、俊は自分が寝てしまったことに気づかなかった。
「……そろそろ帰ろ」
一人でつぶやいて、ギターをしまう。髪に結わえていた赤いリボンを取る。そして髪を後ろで一つにまとめた。
これが、普通の姿。この姿が自分の生きていく姿。手鏡を見て前髪を整えると、教室のドアに手をかけた。
ガタンとドアが鳴る音で、俊はハッと目を開ける。顔をあげると、空き教室のドアが開いていた。
「え……?」
「え……?」
二人の声が重なる。
俊はとりあえず立ち上がる。相手の方は、驚きで固まってしまったようだった。俊だって、今にも思考が止まりそうだった。なぜなら、空き教室から出てきた生徒は。
男子の制服を着ていたのだから。
下校時刻のチャイムが鳴る。しかし、キリが悪かったので俊はもう少し続けようと手を止めなかった。
(あと一問だけ)
白い紙が数字や記号で埋め尽くされていく。最後の答えを出すと、俊は息を吐きながら伸びをした。パキッと背中から音がする。
「……帰るか」
俊は鞄を持って教室を出た。
ふと、数日前の学校祭の時のことを思い出す。ギターを弾いていた女子が何年生かはわからないが、彼女が弾いていた曲は同じ階の空き教室から聞こえていた。もしかしたら、今日もいるのかもしれない。気になった俊は、空き教室へと足を運んだ。
夕日を浴びながらギターを弾く。この空き教室なら、あまり人が来ない。秘密を守るには、うってつけの場所だ。
ギターを鳴らすたびに髪に結わえられた赤いリボンが揺れる。窓に反射するその姿を見つめながら、曲を弾き続けた。
空き教室のドアは閉まっていた。しかし、かすかにギターの音が聞こえる。俊はドアのガラス張りになっているところからこっそりと空き教室の中をのぞいた。
(同じ人だ。同級生だったのか)
俊は机に寄りかかってギターを弾く女子を見ていた。
今日彼女が弾いている曲はこの前の曲とは違う。それでも、優しい音色に変わりはなかった。
(……いい曲。なんか、ほっとする)
俊は壁にもたれかかりながらズルズルと腰を下ろす。言い知れぬ感情に包まれる。
(この人の音好きだな。ギターを愛してるってわかる。俺には、こんな音は出せない)
曲の流れに身を任せるように俊は目を閉じた。耳の中で、あの優しい音が響く。
あまりにも心地よくて、俊は自分が寝てしまったことに気づかなかった。
「……そろそろ帰ろ」
一人でつぶやいて、ギターをしまう。髪に結わえていた赤いリボンを取る。そして髪を後ろで一つにまとめた。
これが、普通の姿。この姿が自分の生きていく姿。手鏡を見て前髪を整えると、教室のドアに手をかけた。
ガタンとドアが鳴る音で、俊はハッと目を開ける。顔をあげると、空き教室のドアが開いていた。
「え……?」
「え……?」
二人の声が重なる。
俊はとりあえず立ち上がる。相手の方は、驚きで固まってしまったようだった。俊だって、今にも思考が止まりそうだった。なぜなら、空き教室から出てきた生徒は。
男子の制服を着ていたのだから。