第26話 Phase25
文字数 1,153文字
俊と蒼はそれぞれ深呼吸をする。震えそうな息を必死に抑える。
(緊張する……!)
(わかる……)
蒼と俊は目だけで会話する。
陸斗の声が聞こえたので、なんとなくこれからの話の内容はわかっている。しかし、状況に心が追いついていないのも事実だった。
「開けるぞ」
「うん」
俊と蒼は互いにうなずく。店へと続く扉を開けた。
「こんにちは」
「「……こんにちは」」
優しそうに目を細める澤田を見ても、俊と蒼の警戒心は薄まらない。
「僕は、音楽会社の社長の澤田です」
「相 馬 俊です。高校二年生です」
「相 馬 蒼です。俊と同じく、高校二年生です」
俊と蒼はそろって会釈した。
「俊くんと、蒼くん。君たちのギター、聴かせてもらったよ。いい音だった」
「ありがとう、ございます……」
戸惑った様子で俊が頭を下げるのを見て、蒼も慌てて倣う。
「そこで僕は、君たちをスカウトしたい」
覚悟はしていた。しかし、実際に面と向かって言われると重みが違う。
「僕たちは高校生です。なのに、どうして……」
「僕は実力主義なんだ。年齢とか関係ないよ。僕は僕の信念に基づいて君たちをスカウトしている」
そう言って澤田は微笑む。しかしその目は笑わずに、まっすぐに俊と蒼を見つめていた。
(すごいプレッシャーだ……)
(ちょっと怖い……)
俊も蒼も、生唾を飲み込んだ。
「まあ、拒否権がないわけじゃないからね。僕だって、やる気のある人が欲しいし」
そう言うと、澤田はコーヒーを飲んだ。
「マスター、このコーヒー美味しいですね」
「ありがとうございます……」
陸斗は形ばかりの礼を言ったが、意識は完全に俊たちに向いていた。
「あの、答えを先延ばしにするのは……」
「期間にもよるけれど……やっぱり、高校生には難しい決断だよね」
澤田は眉を下げる。
「あの、蒼と会議してもいいですか」
「え? 僕と会議?」
蒼も蒼で驚いたようだった。
「当然だろ。俺と蒼のことだ。いいですよね」
「まあ、今日はもう何もないし。どうぞ」
俊は蒼を連れて奥の部屋に入っていった。
「ふぅむ……いいね」
「え?」
澤田のつぶやきを、山下が聞き返した。
「お前、めずらしくいい候補見つけたんじゃないか」
「僕だって、やるときはやりますから」
山下は誇らしげにそう言ったが、内心は照れていて澤田から目をそらした。
「マスターは、何か楽器とかやられていたりしないんですか?」
陸斗は驚いた。澤田は鋭すぎる。
「昔、少しだけ。大したことなかったですけどね」
陸斗は軽く笑い飛ばした。
「あの二人、片方はあなたの甥御さんですよね? 彼がギターを弾くきっかけになったのはあなたなんじゃないですか?」
「たしかに、そうですが……」
「それなら、たいしたことないわけないじゃないですか。一人の人生に大きく関わっているんですから」
そう言って澤田は微笑んだ。
(緊張する……!)
(わかる……)
蒼と俊は目だけで会話する。
陸斗の声が聞こえたので、なんとなくこれからの話の内容はわかっている。しかし、状況に心が追いついていないのも事実だった。
「開けるぞ」
「うん」
俊と蒼は互いにうなずく。店へと続く扉を開けた。
「こんにちは」
「「……こんにちは」」
優しそうに目を細める澤田を見ても、俊と蒼の警戒心は薄まらない。
「僕は、音楽会社の社長の澤田です」
「
「
俊と蒼はそろって会釈した。
「俊くんと、蒼くん。君たちのギター、聴かせてもらったよ。いい音だった」
「ありがとう、ございます……」
戸惑った様子で俊が頭を下げるのを見て、蒼も慌てて倣う。
「そこで僕は、君たちをスカウトしたい」
覚悟はしていた。しかし、実際に面と向かって言われると重みが違う。
「僕たちは高校生です。なのに、どうして……」
「僕は実力主義なんだ。年齢とか関係ないよ。僕は僕の信念に基づいて君たちをスカウトしている」
そう言って澤田は微笑む。しかしその目は笑わずに、まっすぐに俊と蒼を見つめていた。
(すごいプレッシャーだ……)
(ちょっと怖い……)
俊も蒼も、生唾を飲み込んだ。
「まあ、拒否権がないわけじゃないからね。僕だって、やる気のある人が欲しいし」
そう言うと、澤田はコーヒーを飲んだ。
「マスター、このコーヒー美味しいですね」
「ありがとうございます……」
陸斗は形ばかりの礼を言ったが、意識は完全に俊たちに向いていた。
「あの、答えを先延ばしにするのは……」
「期間にもよるけれど……やっぱり、高校生には難しい決断だよね」
澤田は眉を下げる。
「あの、蒼と会議してもいいですか」
「え? 僕と会議?」
蒼も蒼で驚いたようだった。
「当然だろ。俺と蒼のことだ。いいですよね」
「まあ、今日はもう何もないし。どうぞ」
俊は蒼を連れて奥の部屋に入っていった。
「ふぅむ……いいね」
「え?」
澤田のつぶやきを、山下が聞き返した。
「お前、めずらしくいい候補見つけたんじゃないか」
「僕だって、やるときはやりますから」
山下は誇らしげにそう言ったが、内心は照れていて澤田から目をそらした。
「マスターは、何か楽器とかやられていたりしないんですか?」
陸斗は驚いた。澤田は鋭すぎる。
「昔、少しだけ。大したことなかったですけどね」
陸斗は軽く笑い飛ばした。
「あの二人、片方はあなたの甥御さんですよね? 彼がギターを弾くきっかけになったのはあなたなんじゃないですか?」
「たしかに、そうですが……」
「それなら、たいしたことないわけないじゃないですか。一人の人生に大きく関わっているんですから」
そう言って澤田は微笑んだ。