第25話 Phase24
文字数 1,059文字
「本当に上手いんだろうね?」
「もちろんです。ここ数ヶ月、何人もの人のギターを聴いてきましたけど、ここの店で聴いたギターが一番です」
ドアにつけていたベルが鳴り、来客を知らせる。顔を上げた陸斗は目を見開いた。
「……いらっしゃいませ」
動揺を押し込めて陸斗は言葉を絞り出した。
「こんにちは。俺のこと、覚えてますか?」
「ええ。音楽会社でお仕事なさっている方でしたよね」
陸斗の言葉に、名刺を渡していた男性、山 下 は嬉しそうに微笑んだ。
「こちら、会社の社長です」
「澤 田 です。お見知りおきを」
「ご丁寧にありがとうございます」
陸斗は名刺を受け取る。
「ご注文は」
「コーヒー二つで」
間髪を容れず、山下が言った。
「あ、あと、BGMも無くしてください。また、あのギターを聴きに来たんです」
「そう、ですか……」
陸斗は以前山下の要求に従ってしまったため、今回だけ断るわけにもいかず、BGMを消した。
かすかにギターの音が響く。陸斗は澤田の邪魔をしないよう、音を立てないように注意を払ってコーヒーカップを置いた。
澤田はしばらく目を瞑って黙っていた。
「……うん」
澤田は一人でうなずきながら目を開けた。
「このギター、どなたが弾いていますか?」
「僕の甥とその友だちですが……」
「お会いできますか」
「なぜですか?」
陸斗は無意識のうちに澤田をにらみつける。
「うちにスカウトしたいのです」
「……スカウト⁈」
陸斗は思わず大声をあげた。
「お客さん、来たみたいだな」
ベルの音が聴こえて、俊が一旦手を止めた。
「ありがたいことだよね、本当に」
蒼の言葉に、俊はきょとんとする。
「お店やってるのに、私たちにギターが弾ける空間をくれている。すごく、ありがたい」
「ああ、そうだな。あっ、そうだ!」
急に何かを思いついたような様子の俊を見て、蒼は驚く。
「な、何……?」
「陸斗くん、もうすぐ誕生日なんだ。何かプレゼントしようぜ」
「プレゼント……いいけど、何渡すの? 私たち高校生だし、あんまり高価なものは無理だよ」
「陸斗くん、何なら喜ぶかな……」
俊は考えながら無意識にギターの弦を弾く。
「……今度、どこか行って考えようよ。頭で考えるよりも、直接見て選ぶ方がいいアイデア浮かぶかもだし」
「そうだな」
俊が見ている楽譜に合わせて、蒼も弦を弾く。心地よく音が重なる。
「スカウト⁈」
突然聞こえた陸斗の声に、俊と蒼の手が止まる。二人は顔を見合わせた。
「スカウト……?」
「って、言ったよね今……」
陸斗が呆けている二人を呼びに来たのは、それからまもなくのことだった。
「もちろんです。ここ数ヶ月、何人もの人のギターを聴いてきましたけど、ここの店で聴いたギターが一番です」
ドアにつけていたベルが鳴り、来客を知らせる。顔を上げた陸斗は目を見開いた。
「……いらっしゃいませ」
動揺を押し込めて陸斗は言葉を絞り出した。
「こんにちは。俺のこと、覚えてますか?」
「ええ。音楽会社でお仕事なさっている方でしたよね」
陸斗の言葉に、名刺を渡していた男性、
「こちら、会社の社長です」
「
「ご丁寧にありがとうございます」
陸斗は名刺を受け取る。
「ご注文は」
「コーヒー二つで」
間髪を容れず、山下が言った。
「あ、あと、BGMも無くしてください。また、あのギターを聴きに来たんです」
「そう、ですか……」
陸斗は以前山下の要求に従ってしまったため、今回だけ断るわけにもいかず、BGMを消した。
かすかにギターの音が響く。陸斗は澤田の邪魔をしないよう、音を立てないように注意を払ってコーヒーカップを置いた。
澤田はしばらく目を瞑って黙っていた。
「……うん」
澤田は一人でうなずきながら目を開けた。
「このギター、どなたが弾いていますか?」
「僕の甥とその友だちですが……」
「お会いできますか」
「なぜですか?」
陸斗は無意識のうちに澤田をにらみつける。
「うちにスカウトしたいのです」
「……スカウト⁈」
陸斗は思わず大声をあげた。
「お客さん、来たみたいだな」
ベルの音が聴こえて、俊が一旦手を止めた。
「ありがたいことだよね、本当に」
蒼の言葉に、俊はきょとんとする。
「お店やってるのに、私たちにギターが弾ける空間をくれている。すごく、ありがたい」
「ああ、そうだな。あっ、そうだ!」
急に何かを思いついたような様子の俊を見て、蒼は驚く。
「な、何……?」
「陸斗くん、もうすぐ誕生日なんだ。何かプレゼントしようぜ」
「プレゼント……いいけど、何渡すの? 私たち高校生だし、あんまり高価なものは無理だよ」
「陸斗くん、何なら喜ぶかな……」
俊は考えながら無意識にギターの弦を弾く。
「……今度、どこか行って考えようよ。頭で考えるよりも、直接見て選ぶ方がいいアイデア浮かぶかもだし」
「そうだな」
俊が見ている楽譜に合わせて、蒼も弦を弾く。心地よく音が重なる。
「スカウト⁈」
突然聞こえた陸斗の声に、俊と蒼の手が止まる。二人は顔を見合わせた。
「スカウト……?」
「って、言ったよね今……」
陸斗が呆けている二人を呼びに来たのは、それからまもなくのことだった。