第27話 Phase26
文字数 1,029文字
店の二階へと戻ってきた俊と蒼はそろって息をついた。
「あれ、本気なの……?」
蒼の絞り出すような声に、俊も思わず天井を仰ぐ。
「あの社長、冗談なのか本気なのかわからない顔してるからな……」
「でも、本気だとしたらすごいことだよね。一応、認めてもらえたってことだから」
そう言いながらも、蒼の顔は不安げな色を宿していた。俊も同じだった。素直に喜べるような状態ではないのだ。
「……蒼は、プロになるとか、考えてたか?」
「……正直、全然。人の前で歌ったりするのは楽しいよ。私を、自分を表現できてるって感じがしてすごく楽。だけど、プロになるってなったら話は別」
「だよな……」
俊も蒼も黙り込んでしまう。
「……あのね」
しばらくして蒼が口を開いた。
「私、怖いの。自分を表現するためにやってるなんていったけど、やっぱり変な目で見られるから。学校祭のときにやってたのは、後から言い訳がしやすかったからなの。罰ゲームだって言っておけば、深く突っ込まれたりしないもの。けど、今回のはそうもいかないでしょう? だから、うかつに決められないの……」
「俺は……親に言ったら絶対反対される。くだらないことやってないで勉強しろ、医者になれって。でも俺は、ギター弾くの好きなんだ。だから、実を言うとこの話、受けてもいいと思ってる」
「……やめたほうがいい。隠してても、バレた時が大変だと思う」
蒼の言葉に、俊は反論できなかった。たしかに、色々な人に迷惑になることだろう。
「蒼は、どう思う? この話を受けたい? 受けたくない?」
蒼は少し迷って口を開く。
「受けたい、受けたくないの時点に、私たちはいないと思う」
「どういうことだ?」
蒼はまっすぐに俊を見つめた。
「だって、私たちの演奏を聴いてスカウトしたわけじゃないのよ。あの社長、私たちの練習を聴いてスカウトしてる。あれは、私たちの実力なんかじゃない……私、あの社長は信じられない」
俊は息を飲んだ。蒼の目は強くて、俊の心の奥底の迷いを見透かしたようだった。
「……それに、私は自分がなりたい姿で演奏したいの。受け入れてもらえるか、不安」
蒼の肩は小さく震えていて、俊は安心させるようにその肩に手を添えた。
「……そうか、って、あっ!」
めずらしい俊の大声に、蒼は思わず肩を震わせた。
「な、何……?」
「交渉次第だけど、一つ手があるかも」
「まだ諦めてなかったの?」
蒼はあきれた声を出したが、俊は気にも留めない。必要ないはずなのに、俊は蒼に耳打ちをした。
「あれ、本気なの……?」
蒼の絞り出すような声に、俊も思わず天井を仰ぐ。
「あの社長、冗談なのか本気なのかわからない顔してるからな……」
「でも、本気だとしたらすごいことだよね。一応、認めてもらえたってことだから」
そう言いながらも、蒼の顔は不安げな色を宿していた。俊も同じだった。素直に喜べるような状態ではないのだ。
「……蒼は、プロになるとか、考えてたか?」
「……正直、全然。人の前で歌ったりするのは楽しいよ。私を、自分を表現できてるって感じがしてすごく楽。だけど、プロになるってなったら話は別」
「だよな……」
俊も蒼も黙り込んでしまう。
「……あのね」
しばらくして蒼が口を開いた。
「私、怖いの。自分を表現するためにやってるなんていったけど、やっぱり変な目で見られるから。学校祭のときにやってたのは、後から言い訳がしやすかったからなの。罰ゲームだって言っておけば、深く突っ込まれたりしないもの。けど、今回のはそうもいかないでしょう? だから、うかつに決められないの……」
「俺は……親に言ったら絶対反対される。くだらないことやってないで勉強しろ、医者になれって。でも俺は、ギター弾くの好きなんだ。だから、実を言うとこの話、受けてもいいと思ってる」
「……やめたほうがいい。隠してても、バレた時が大変だと思う」
蒼の言葉に、俊は反論できなかった。たしかに、色々な人に迷惑になることだろう。
「蒼は、どう思う? この話を受けたい? 受けたくない?」
蒼は少し迷って口を開く。
「受けたい、受けたくないの時点に、私たちはいないと思う」
「どういうことだ?」
蒼はまっすぐに俊を見つめた。
「だって、私たちの演奏を聴いてスカウトしたわけじゃないのよ。あの社長、私たちの練習を聴いてスカウトしてる。あれは、私たちの実力なんかじゃない……私、あの社長は信じられない」
俊は息を飲んだ。蒼の目は強くて、俊の心の奥底の迷いを見透かしたようだった。
「……それに、私は自分がなりたい姿で演奏したいの。受け入れてもらえるか、不安」
蒼の肩は小さく震えていて、俊は安心させるようにその肩に手を添えた。
「……そうか、って、あっ!」
めずらしい俊の大声に、蒼は思わず肩を震わせた。
「な、何……?」
「交渉次第だけど、一つ手があるかも」
「まだ諦めてなかったの?」
蒼はあきれた声を出したが、俊は気にも留めない。必要ないはずなのに、俊は蒼に耳打ちをした。