第110話 9条無敵論

文字数 3,521文字


まずは、読売新聞社の世論調査からご紹介します。
「防衛力の強化について」 賛成64% 反対27% 回答なし8%
「敵基地攻撃能力の保有について」 賛成46% 反対46% 回答なし8%
だそうです。
国民の過半数が防衛力の強化を支持していますね、ウクライナの状況を見れば当然でしょう、私なぞこれでも少ないなと感じてしまいます。
一方、敵基地攻撃能力についてはちょうど半々ですね。
私は、防衛を真剣に考えれば敵基地攻撃能力は不可欠、つまり敵基地攻撃能力も含めての防衛力だと思っていますが、ある意味、これは日本らしい結果かもしれません、どれだけ防衛力を強化しても侵略戦争など起こすはずがない、と言う事の証左とも考えられますから。

ところが、日本共産党はこう言っています。
「9条の精神に沿った市民社会の声こそロシアを追い詰める力になる」
「9条を守り、日本を戦争する国にせず、9条を広げ戦争のない世界をつくろう」
 そして来る参院選について
「戦争か平和か―日本の進路が根底から問われる選挙だ」

 いやいや、何度も書いていますが、私も9条の精神は立派だと思っているんですよ、ですが、日本だけがそれを後生大事にしていても戦争は日本を放棄してはくれません。

「9条の精神に沿った市民社会の声こそロシアを追い詰める力になる」と本気で言っているのなら、ロシアへ行ってデモなりなんなりやって来ればどうですか? 今のロシアでならば賛同する人々も多いかもしれません、それでウクライナ侵略を止められたならノーベル平和賞ものですよ、まあ、拘留されてしまわないようにお気をつけてとご忠告しておきましょう。
それともプーチン大統領に会って面と向かって言って差し上げたらどうですか? まあ、聞く耳持ってはくれないでしょうけどね、まあ、会見が実現したとしたら帰り道にはゆくゆく気を付けることですね、襟元にそっとVXガスかなんかぶっかけられるかもしれませんからね。

「9条を守り、日本を戦争する国にせず、9条を広げ戦争のない世界をつくろう」って……防衛を侵略戦争にすり替えようとしてませんか? 防衛のために敵基地攻撃能力を保有することにすら意見が真っ二つに分かれる国です、もし日本が武力を信奉する『戦争する国』だとしたら、この機を捉えて北方領土の奪還に動いてるような気がしますけどね……実際ロシアは津軽海峡に軍艦を走らせたり北方領土で演習したりしてるじゃないですか、それを警戒しているんですよ、「戦争する国」の発想ですね、自国が侵略戦争の真っ最中なので他国も同じことを考えているんじゃないかと言う……当然、日本にはそんな動きはありませんし、国民の間にそんな機運もまったくないんですけどね。

 そして極めつけは。
「戦争か平和か―日本の進路が根底から問われる選挙だ」
 そりゃぁ「戦争と平和、どっちを取る?」って聞かれればほぼ100%の日本人は平和を取りますよ、しかし平和を維持するには防衛力が必要だと言う事に国民は気づいてますよ、ですからこのキャッチフレーズは的外れも甚だしいと言わざるを得ませんね。
 私に言わせれば。
「侵略を甘んじて受けるか、防衛力を強化して侵略を未然に防ぐか―日本の進路が根底から問われる選挙だ」なんですけどね。

 で、相変わらず「ウクライナは降伏した方が良い」と言う論も散見されます。
 キーウ(キエフのウクライナ読みです、面倒なようでも外務省がこれを決定したことには拍手を送ります、『害務省』にしては上出来ですね)からロシア軍が撤退して行った後の惨状を見ましたか? 道路に市民の死体がゴロゴロと転がされているんですよ? 降伏すれば抗戦するより多くの死者が出るのは目に見えてます、そしてウクライナと言う国は未来永劫消え去ります。
 橋下徹さんが「今は被害を最小限度にするために降伏して、20年後、30年後に再び独立できるように力を溜めたらいい」みたいなことを言ってましたが、そんな力を持つことを許す占領軍がありますか? それに、もしそれだけの力を蓄えられたとしたら、もう一度戦争が起こるわけです、ロシアが一旦手にした領土を決して手放さないのは北方領土を見ても明らかじゃないですか、血を流して得た領土を外交で手放すほど甘くはありません。
 私は『降伏の勧め』はウクライナ国民じゃなくて日本国民に対して言っているんだと思ってます、つまり「もし侵略戦争を仕掛けられたらさっさと降伏した方が良いぞ」ってことを刷り込もうとしているのだと。 侵略する側に立ってみれば損失はなるべく小さい方が良いに決まってますからね、それを代弁しているのでしょう。

 ウクライナをダシにして自分のイデオロギーを振り回したり、選挙に有利に使おうなどと言うのはいかにもさもしい行為だと思いますし、そんなことを言う人は日本なんかさっさと滅びれば良いと思っているだけのように思います。

 立憲民主党の誰でしたか、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発が攻撃を受けたことを取り上げて「原発廃止」を政府に迫った議員がいましたが、先日、東北地震によって火力発電所が停止し、東北から関東にかけて電力不足による停電の危機があったのをどう捉えるんでしょうね。
 ちょっとうがった見方かもしれませんが、ロシアからの原油や石炭、天然ガスの輸入を停止させたくないんじゃないかと感じました。
 まして立民はCO2削減にも妙に熱心です、今現在必要な電力を確保しつつCO2を削減しようと考えれば、現状では原発の再稼働しかないでしょうに。
「再生可能エネルギー」などと意味の良くわからない言葉を使っていますが、要するに太陽光や風力などの自然エネルギーを活用しろ、と言う事なんでしょうけど、今の技術では必要な電力を確保できません。
 加えて、太陽光パネルって10年もすれば性能が落ち始め、2~30年で完全にダメになることがわかっています、太陽光パネルは「再生可能」じゃないんです、しかもそれをどうやって廃棄して行くのかも論じられていません、蓄電池はもっと厄介ですよ、ハイブリッドカーや電気自動車に搭載されている蓄電池を安全に廃棄する技術がなく、ただ山積みになっていることが既に問題になっているんですけどね、マスコミは決して報道しませんが……。
 自然界への影響もありますよね、山を丸裸にしたり、広い平地に大量の太陽光パネルを設置したりすればその分植物は減りますよね、植物はCO2を吸ってO2を出すんですけど……それに災害の危険度も増します、山を切り崩せば山崩れが起きやすくなるのは当然ですし、雨が自然に土に沁み込まなくなりますから地下水は減り、大雨の際には洪水だって引き起こしかねません。
 建物の屋根に設置することを推奨していますが、建築士として言わせてもらえば、屋根の重量が増えることで耐震性能は落ちます、東京都では新築住宅に義務化することが検討されていますが、推奨じゃなくて義務って所がなんとも……。
 
 戦争のことにせよ、発電のことにせよ、言ってることは間違いじゃないですよ。
 世界中の国全てが9条に倣った憲法を持ち、核兵器は全て廃棄するならばこんなに素晴らしいことはありません。
 化石燃料や原子力に頼ることを止めて自然エネルギーだけで産業も暮らしも成り立つならばそれに越したことはありません。
 どちらもいつか実現できたならば素晴らしいと思います。
 ですが、あまりにも現実的じゃありません。
 覇権主義の国はロシアだけじゃないことは誰でも知っていることです、日本は70年以上にわたって平和であり続けているので「侵略されるかもしれない」と言う事がピンと来ていなかったかもしれませんが、実際にあり得ることだとやっと気づいた、あるいは気づきかけているんです、そのことを不都合だと考える政治家が日本にて、マスコミもそう刷り込もうとしているならば、それは危険極まりないことだと思います。
 エネルギーの問題もそうです、化石燃料はいつか枯渇しますし、原子力はひとたび事故を起こせば甚大な被害をもたらします、ですから自然エネルギーを活用する研究は続けていく必要はありますが、現段階では、ベストではないにせよベターな手段を考えて行かなくてはいけません。
 今更電気も燃料もない自給自足の生活に戻れるわけじゃないですし、産業なしで文化的な生活は送れませんからね。
 もうね、究極的に言ったら人類が地球上に生息していることが間違いの元なのですよ、人類がいなければ戦争も環境破壊も起こりません。
 だったら滅亡しますか? それがベストかもしれませんよ? 私は御免ですのでベターな方を選びますけどね。
 



 



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