第123話 太陽光発電と都知事の本性

文字数 2,935文字

 ハウスメーカーによる新築住宅に対する太陽光パネル設置の義務化、こんな条例が可決されてしまいました、2025年より施行されます。
 私は全くもって納得できません。
 建築士として言わせてもらえば、太陽光パネルは耐震性能を劣化させるものです。
 お尻に消しゴムがついている鉛筆ってありますでしょう? 削った方をつまんで揺らしてみてください、消しゴムのついていない普通の鉛筆を同じように揺らしてみれば力のかかり具合が違うことがわかるはずです、建築物に当てはめてみれば屋根が重ければそれだけ柱脚に伝わる力が大きくなります。
 実際のところ、今現在の新築住宅ならば充分に耐えるように設計・施工できますが、当然構造体にかかる費用は大きくなります。
 特に瓦屋根にしたい場合は納まり上不向きな上に、ただでさえ重い瓦屋根をさらに重くすることになります。
 さらに、大地震時に落下する可能性も考えなければなりません、太陽光パネルは金具で留めるわけですから錆やボルトのゆるみなど不安材料は増えます。

 そしてもう一つ大切なことがあります、そもそも東京では南向きの屋根面は小さいのです。
 東京都ではほぼ全域に高度斜線規制というものがかかります、商業地域などでは指定なしの場合もありますが、住宅地なら間違いなくかかっています。
 高度斜線規制とは、要するに北側隣地への日照を確保するために北側の軒先髙を規制する条例で、ほとんどの場合北側の軒先を低く抑えなければならず、そのために南向きの屋根面より北向きの屋根面の方が広い場合が多いのです。
 
 火災時の消防活動においても太陽光パネルは厄介だと聞きます。
 要するに火事の光で発電してしまうのです、消火活動中は当然水浸しですから消防署員も命がけです。
 
 セールストークでは『8年から10年で元が取れますよ、パネルの寿命は20年くらいありますから長い目で見ればお得です』などと言われますが、それは劣化と言う観点を加味していません。 
 実際、10~12年くらいで交換しなければならないとも言われています、もちろんメーカーではテストをしているのでしょうが、建物と言うのは雨ざらしの上に汚れや砂埃による表面の荒れなど実験室以上に厳しい条件に晒されます、元が取れる前に交換しなくてはならなくなる場合もあるでしょうし、交換するとなれば足場の設置など付帯費用もかかるものです。
 そして『8年から10年で元が取れる』と言うのは現在の優遇措置が続くことを前提にしています、今現在は公的費用を投入して余剰電力を高く買い取られていますが、それをいつまでも続けられるとは思えません、そもそも天候に左右されやすい不安定な電力です、本来ならば安定供給される電力より安く買い叩かれるのが市場の原則と言うものでしょう。
 エコロジー面でもエコノミー面でも疑問符が付きます。
 住宅は各自の資産です、どこにお金をかけるかは個々の建て主の判断で決めるべきものです、我々建築士は助言しますが決定権は建築主にあります、そして、電力の高価買取に投入される公金は元を質せば税金ですから不公平でもありますよね。
 
 また、中国製の(と言うよりもほとんどが中国製です)太陽光パネルはウィグル地区における強制労働で生産されているのではないか?という懸念があります、アメリカでは『ジェノサイドパネル』と称して輸入を禁止しました。
 アメリカでの需要を見込んで生産体制を整えていれば、輸入禁止にされることで余ってしまいます、そこで日本が目をつけられた、と私は考えています。
 そもそも、アメリカ、中国、ロシアはCO2削減に熱心ではありません、経済に悪影響が出てしまうからです。
 CO2削減が叫ばれ始めた頃、日本やヨーロッパでは数%の削減を目標に掲げていました、その頃、当時の首相だった鳩山氏がいきなり20%と言う数字を口にして驚かれたものです、驚かれたというよりも冷笑されていたかも知れませんね『何を夢物語みたいなことを言ってるんだ』と。
 ところが昨年でしたか、小泉元環境大臣がいきなり46%と言う目標を掲げました。
 その数字は何か根拠があるものではなく、『おぼろげながら46と言う数字が頭に浮かんだ』んだそうです、そして小池都知事の掲げる目標はと言えばお得意のカタカナ横文字で『カーボンハーフ』、つまり50%の削減ですね。
 こんな目標を掲げる国や都市なんて他にあるでしょうか?

 そもそも日本人はお人好し過ぎるのではないでしょうか?
 日本ではSDGsと言う言葉は広く知られていますが、アメリカやヨーロッパではほとんど広まっていないそうですよ。
 真面目で環境意識も高い日本人は『地球環境が~、温暖化が~』と叫ばれれば『そうだよね、地球に優しくしなきゃね』と考えてしまいます、少しくらい我慢を強いられるとしても。
 その気質そのものはもちろん良いには違いないのですが、そのために国力が衰退するとどうなるか? と言うことも考えなくてはいけないんじゃないでしょうか?
 なにも軍事費に回せる予算が減る、と言うことばかりを言っているのではありません。
 正規の国軍を持たない日本が国際社会で発言力を持ち、国益を守って行くためには経済力は大きな武器になります、それもまた防衛力ではないかと思うのです。
 中国で余ってしまった太陽光パネルを日本が買う、そしてCO2削減にまじめに取り組むことによって経済力が削られる。
 中国から見れば一石二鳥ですよね。

 そして小池都知事。
 彼女が都知事になる際には正直応援していました、対抗馬が鳥越氏、宇都宮氏だったこともあってのことでしたが、実際、就任してからの実績って何があるのでしょう?
 築地市場移転で迷走して使わなくても良い税金を無駄にしました、土壌汚染の問題はありましたが、そのためにコンクリート舗装を採用していたのであって、技術者はそう進言したはずです、しかし自分の人気を第一に考える都知事は土そのものを入れ替えるという大規模工事を命じました。
 オリンピック会場の問題でも迷走してましたよね、挙句に開催の是非そのものを国に丸投げしてしまいました、『東京』オリンピックであって『日本』オリンピックではなかったにもかかわらずです。
 彼女は自分の人気取りに腐心し、泥をかぶらずに済むことを第一義に考えているように思えます。
 更に言うなら、それしか考えていないのかも。
 今回の太陽光パネル条例に関してもそうです『カーボンハーフ』を唱えていますが、真摯に検討した上のこととは思えません、『環境が~』と言えばなかなか面と向かって反対し難いこと、『意識高い系』を自任する人が多い都民にはウケが良いことを計算しているだけのように思います。
 実際の環境保全にあまり興味がないのは夢の島での樹木伐採計画に何らストップをかけようとしないことでも明らかです、そもそもCO2を吸収してくれる樹木を伐採してメガソーラーパネルを設置しようなどというのは本末転倒ではないかと思うのです。
『緑のタヌキ』などと揶揄されることもある都知事ですが、実際、本性はそんなところかもしれません。
 いやいや、タヌキどころか『紅いキツネ』なのかも……。

 
 
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