第20話 川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例

文字数 2,074文字

 今回はちょっと真面目に……。

「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」が可決されました、もちろん神奈川県・川崎市議会でのことです。
「差別のない」、「人権尊重」、耳触りの良い言葉ですね、いや、実際どちらも大切なことですし、そうあらねばならないと思います。
 ですが、条例の中味を見ればこれがどうもおかしいんですね。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)不当な差別 人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする不当な差別をいう。
(2) 本邦外出身者に対する不当な差別的言動 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年法律第68号。以下「法」という。)第2条に規定する本邦外出身者に対する不当な差別的言動をいう。

? は良いですね、問題ありません、問題は(2)の『本邦外出身者に対する』と言うところ
です、つまり『差別をしてはいけない』対象が日本以外出身の人だけなんですよ。
 では日本人に対する差別は? と言いますと、

本邦外出身者に対する不当な差別的言動以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであるとの基本的認識の下、本邦外出身者以外の市民に対しても、不当な差別的言動による著しい人権侵害が認められる場合には、必要な施策及び措置を検討すること。

 とあります。
 ちょっとわかりにくい条文ですがこういうことです。

『本邦出身者以外のものにより差別や人権侵害があった場合、それは今後の検討課題とする』

 そして、この条例には刑事罰を科すことも規定されています。

 つまり、ぶっちゃけこういうことです。
『日本以外出身者に対する差別や人権侵害はまかりならん、もしやったら刑事罰だぞ、日本以外出身者が差別や人権侵害をしたら……それは今後の検討課題とする』

 役所や政治家の『検討する』は『考えていない』に限りなく近いですから、『今後の検討』はうやむやになるでしょう。
 結局のところ。
『外国人を差別したら罰則、外国人が差別をしたら……まあ、それはそれでいいわい』ってことですね。
 外国人が差別をする対象、そこにはもちろん外国人も含まれるのでしょうが、人口比率からして圧倒的多数を占めるのは日本人ですね。
『差別や人権侵害はいけない』は正しいです、ですが、日本人をその対象から外すっておかしくないですか?

 外国人が日本人の経営する店や会社の募集に応募して来たとします。
『悪いけど日本語喋れないと困るんだよね』
 これ、刑事罰対象になる可能性があります、要は日本語を喋れないと言う能力に対して不採用とした、と受け取るかどうかです、『外国人が日本語を喋れないのは当たり前、出自に対する差別だ』と言い張ることもできるんですから。
『いくら何でもそんなことはないだろう』と思うのは日本人的感性です、そうやって日本社会は成り立ってきました、日本人は社会に帰属している意識が高いです、個を声高に主張するものは白い目で見られがちです。
『英語は喋れないの? だったら悪いけどお引き取り願おうか』と言われれば『私は日本人だ、英語が喋れないのは当たり前だ』とは言いません。
 ですが、世界中の人々がそう考えるとは限りません、まして条例で守られているとなれば『これは差別だ、不等だ』と言い始める可能性がないと言いきれますか?
 うこれが役所ならもっと及び腰でしょうね、特に川崎市役所は外国人の応募があった場合、不採用にはしにくいでしょう、そして20年後、30年後はそうして採用された職員が要職に就いて行くことになります、それがどんな結果を招くか想像できますよね?

『差別はいけない』『人権尊重』、大切なことです、ですが耳触りの良い言葉には隙があることも忘れてはいけません。
『グローバル化』『多様性』、確かに新しい文化は異なる文化の融合から生まれます、ですが、それは元々あった固有の文化を基にして他文化の良い所を取り入れるのが基本ではないでしょうか? 固有文化を否定して根絶やしにすることではないはずです。
『戦争反対』、当たり前です、誰だって戦争なんか嫌に決まってます、ですが、日本と言う国が標的にされた時、相手国に『戦争反対!』と叫べば戦争を回避できるのでしょうか? 外交努力は尽くすべきですが、残念ながら最後は力で対抗する他ないのです。

 ネットにはこのような条例を可決してしまう川崎市を『川崎国』と揶揄する書き込みが多数見られます。
 つまり、『もはやあそこは日本ではない』と言うような意味です。
『差別はいけない』『人権尊重』『反すれば刑事処罰』それは川崎市に、ひいては日本に住む外国人に対しても適用されなければいけません。
『軒を貸して母屋を取られる』、川崎市はそれを容認し、ご丁寧に条例化してしまったのだと言わざるを得ません。
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