第44話 覇権を握る時……

文字数 1,369文字

 この作品はフィクションであり、実在の個人、団体等とは関係ありません。
 ご想像されるのはご自由ですが。



「主席、武〇から新型ウィルス被害の報告が入っています」
「それはもしや……アレか?」
「アレです」
「直ちに武〇を閉鎖しろ!」
「はい!」
「あ、いや、ちょっと待て」
「何か?」
「春節が間近だな」
「仰る通りですが……」
「今、都市閉鎖などしたら不満が高まるな」
「確かに……暴動が起きるかもしれません、しかしアレが漏れたとなれば緊急事態なのでは?」
「それは間違いなくそうだ、アレの感染力は異常だからな」
「ですからすぐに閉鎖を」
「いや抛って置け、君は報告など受けなかった、私もだ、わかったな?」
「は?」
「暴動など起こったら私の権力が危うくなるではないか」
「それは確かにその通りですが……」
「わが国民は世界中に行き来している、アレの感染力を鑑みれば世界中のあちこちで発症者が出るのは時間の問題だ、それまで発表も控えるのだ、わが国だけで流行してみろ、発生元として世界中から糾弾される」
「それはそうですが……その間にわが国で多くの感染者、死者が出るのでは?」
「そもそも我が国は人口が多すぎるのだ、アレは重症化する者と軽症で自然治癒する者がいるだろう?」
「はい、それゆえ未完成であるとされていましたが……」
「丁度良い間引きになるではないか」
「は……はい……」
「春節休暇が終わったら出来る限りの速さで対応できるように準備をしておけ」
「その頃には数十万単位の死者が出るのでは?」
「世界中が大騒ぎになった頃を見計らって、わが国では徹底的で迅速な対応で感染を抑え込む、世界の規範となるのだ」
「どうやって……」
「それを私に言わせるな、いつも通りにやれば良い」
「上手く行きますでしょうか……」
「何があってもこちらを擁護するように国連とWHOへは今のうちに話を通して置け、なに、金をちらつかせれば尻尾を振る連中だ、問題ない……上手く行くか行かないかだと? 上手く行くに決まっているではないか、たとえそうは行かなくとも……」
「報道管制ですね……?」
「管制だなどと人聞きの悪い……彼らは党に忠誠を誓っているだけだ」
「確かに……」
「マスクや特効薬も充分に準備しておけ」
「特効薬などありませんが……」
「日本の会社が新型インフルエンザ用に開発した薬が効くと聞いているが?」
「あれは……まだ検証が充分でない上に劇薬です、しかもわが国ではまだ作れません」
「薬の成分は分析すれば良いではないか、分析が出来たらすぐに大量生産を始めろ、副作用などあっても構わん、人間、死ぬより怖いものはないものだ」
「しかしそれは知的財産の……」
「わが国でも開発中だったとすれば良い、仮に成分が同じであってもそれは『たまたま』だ、なんならどうでも良さそうなところだけ少しいじってオリジナルだと主張すればいい」
「……は、はい……」
「世界中がパニックになっているところを見計らって、わが国ではウィルスを克服し、他国に手を差し伸べるのだ……むろん相応の見返りは要求するがな……」
「仰せの通りに……」
「どうだ? 災い転じて福となす、抜け目のない計画であろう? むふふ……わが国が世界の覇権を握る時が来たのやも知れんな……」

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