第96話 これが『通理』

文字数 1,607文字

 前回、英語の『Right』を『権利』と訳したのは誤りで、本来『通理』と訳すべきだったのでは? と言うのを書きましたが、『これがそうだよ、こういうことなんだよ』と思うトピックがありますのでちょっとご紹介。

 現在、死刑囚に対する刑の執行は1~2時間前に言い渡されることになっています。
 以前は前日に告知されていたそうなのですが、房内で自分から首を吊ってしまった死刑囚がいたそうで、それでは刑を執行したことにならないと言うので当日に改めたそうです。
 ところが最近、『当日に言い渡すのは人権侵害だ』と国を提訴した囚人がいるそうです、『非人道的であり、異議を申し立てる時間も与えられていない』と……おそらくは面会した『人権派』弁護士辺りが知恵を付けたんでしょうね。
 確かに1~2時間前では心の準備が出来ない、毎朝、今日宣告されるんじゃないかと怯えて過ごさなければならない、と言う面はあるでしょうね。
 ですが……なんと言っても死刑囚です。
 日本では二人以上殺害しないと死刑判決は出ませんから、死刑囚と言うのは少なくとも二人は殺しているんです。
 殺された人たちは前日までにに殺害予告されて、心の準備を整えてから殺害されたんでしょうか? 殺害に対して異議申し立てを出来たんでしょうか? 違いますよね、ある日突然、唐突に命を奪われたんです。
 それほどの罪を犯しておいて、『心の準備が』とか『異議申し立ての時間が』などと言える立場でしょうかね?
 そんなことはない、と普通は思いますよね、それが『通理』だからです。
 イエス様も仏陀様も人を殺して良いなどと説いてはいません、そんな罪を犯せば地獄行き確定です。
 それが『権利』となるとこういう主張も出て来るのです、法に照らせば『死刑囚に基本的人権はない』と書かれてはいないのでしょうが、それを当てはめようとするのは拡大解釈ですよね。
『人を殺しておいて、何を甘ったれたことを言ってるんだ』と思うのが普通でしょう、そしてそれは『通理』に照らしてそう思っているわけで、至極まともだと思います。
 何とか指一本でぶら下がって消滅を免れている某政党の党首様のように『現行犯でも基本的人権はあるわけですしぃ、逮捕されて権利を読み上げられるまでは容疑者ですらないわけですしぃ、それなのに怪我とかさせたらいけないですしぃ、その為に警官が怪我したり死んだりしてもそれはそう言う職業を選んだんだからしかたないわけですしぃ、逮捕されても裁判で有罪判決が出るまでは罪は確定しないわけですしぃ、死んじゃった人に人権はないわけですしぃ……』などと言うのは、『Right』の意味をはき違えているとしか思えません。
 党首様は東大卒、高校時代には全国模試で一位になったこともあるそうですから頭はよろしいんでしょうが、『通理』と言う考え方は一切学ばれなかったようです。
 こうやって裁判を起こせば結審するまでは刑の執行はないでしょうから、それまでは心安らかに刑務所生活を満喫できるることでしょうね。

 いや、前日までに予告しろと言うならばそれもよろしいでしょう。
 自ら命を絶ったりしないよう監視の下に置いて、24時間をカウントダウンするデジタルタイマーを壁にかけてあげたらよろしいのでは? あ、壊されるといけないので壁に投影されるタイプで。
 あと20時間……あと10時間…………あと3時間、2時間、1時間……概ねそのタイミングで刑場まで連れて行かれ、好きな菓子や煙草などを与えられ、懺悔の時間を与えられて、言い残したい言葉も聞いて貰えるらしいです、ずいぶんと厚遇ですよね、それから首に縄をかけられて、目隠しを施されるそうなので、その後は音声で、それもデジタル音声がよろしいでしょう、無情な感じがしますから……5,4,3,2、1……ガタン!
 文句ないでしょう? お望み通り、執行までの時間を克明に知らせてあげるわけですからね。
 
 
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