第15話 承-9
文字数 446文字
アキオは文に敬語禁止を言い渡されたが、これまで染みついていたものは油汚れのようにそう簡単に抜けることはなく、彼は幾度となく彼女に睨まれては言い直すという生活を強いられていた。そんな生活ですら何故か彼にとっては心地よく、時は一瞬のようにすぐに経つ。テレビのニュースでは「新生活」とよく謳うようになっていた。その文言に感化されてかは分からないが、彼は自分自身の今後について一つ大きな決断を下そうとしていた。
彼は、就職活動に失敗したことをアルバイト先にはどうしても言い出すことができなかったから、三月末日で辞めた。大学は昨年の大きな挫折によって卒業論文を書く気になれず、留年が確定していた。
彼は彼女に頼まれていた買い出しの途中で、ふと、彼にとって本当に必要なものは何か、自分自身にとって心地の良い環境が何なのかということが頭の片隅に過った。冬の厳しい北風から春の柔らかな風を感じた。その風は彼女との共同生活の心地よさに似ていた。少し冷たくて、でも柔らかで暖かな日光の香りを纏った風だった。
彼は、就職活動に失敗したことをアルバイト先にはどうしても言い出すことができなかったから、三月末日で辞めた。大学は昨年の大きな挫折によって卒業論文を書く気になれず、留年が確定していた。
彼は彼女に頼まれていた買い出しの途中で、ふと、彼にとって本当に必要なものは何か、自分自身にとって心地の良い環境が何なのかということが頭の片隅に過った。冬の厳しい北風から春の柔らかな風を感じた。その風は彼女との共同生活の心地よさに似ていた。少し冷たくて、でも柔らかで暖かな日光の香りを纏った風だった。