第8話 承-2
文字数 436文字
それからアキオの移住はすぐだった。あの出来事から半月もたたないくらいで荷物の搬入が済んだ。もともと彼はミニマリストで物をあまり待っていなかったため、荷物の断捨離も早く済んだ。
「アキオ、意外と物少ないね。もしかして片付け上手?」
文は彼の荷物搬入を手伝ってはいたが、搬入時間よりも移動時間の方が長いことに驚いていた。彼は文のいる場所から隣の県にいた。片道二時間強といったところである。
「あまり物を持つことが嫌いで……片付け好きですし、もしよかったら僕、文さんの部屋の断捨離、手伝いますよ」
「よし、これから片付けはアキオの仕事だ。任す」
彼女は契約を交わすかのようにブラックの缶コーヒーを彼に渡した。彼はコーヒーが苦手だった。しかし、彼女の行為を無碍にはできないという思いと、あの部屋を片すのにこれから要する労力を見越した彼は、苦笑いでその缶コーヒーを受け取った。肌を少し刺すような冷たい北風にそのブラックコーヒーの温かさとほろ苦さは彼の心に深く染み渡った。
「アキオ、意外と物少ないね。もしかして片付け上手?」
文は彼の荷物搬入を手伝ってはいたが、搬入時間よりも移動時間の方が長いことに驚いていた。彼は文のいる場所から隣の県にいた。片道二時間強といったところである。
「あまり物を持つことが嫌いで……片付け好きですし、もしよかったら僕、文さんの部屋の断捨離、手伝いますよ」
「よし、これから片付けはアキオの仕事だ。任す」
彼女は契約を交わすかのようにブラックの缶コーヒーを彼に渡した。彼はコーヒーが苦手だった。しかし、彼女の行為を無碍にはできないという思いと、あの部屋を片すのにこれから要する労力を見越した彼は、苦笑いでその缶コーヒーを受け取った。肌を少し刺すような冷たい北風にそのブラックコーヒーの温かさとほろ苦さは彼の心に深く染み渡った。