第11話 承-5

文字数 397文字

 彼は彼でもやもやしていたが、彼女も彼女でもやもやしていた。それは彼の心のガードの硬さである。カブトムシかと思わず突っ込みたくなるようなガードの硬さに彼女は少しイライラしていた。
 彼は気づいていないようだが、何もかもが丁寧で弱みを見せようとしない。以前よりは笑うようになって、心を開いてきてはいるが、彼女にはとにかく一点、許容できない点があった。彼の敬語である。彼女の男前で姉さん気質な性格もあって、気心知れてきた人に敬語で話されると鳥肌が立つのだ。
 彼と出会って数ヶ月も経ち、もう年末がやってくる。年明けまでには敬語を直してもらいたいと彼女は切に願っていた。そのためにも彼女は、いつもは寝ている午前帯に目を覚まし、彼の敬語を止めさせるプランを練っていた。彼はとても気を使ってくれていることを彼女はよく知っている。だからこそ、彼女はストレートに敬語が気持ち悪いとは言いだせなかったのである。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み