第21話 承-15
文字数 780文字
アキオが退学届を提出してから1か月ほどした頃に、文の家に退学が受理されたという旨の書類が届いた。いつものように昼前に目を覚ました彼女が、彼よりも先にその書類を手に取った。そして、何も知らない彼女は訝しげにその中身を見る。
「なんだこれ。アキオ、大学辞めるのか……?」
彼女は彼が黙って大学を辞めることに寂しさを覚えた。別に腹が立ったわけではない。彼女が彼の人生にどうこう口を挿む資格はないと思っていたからだ。ただ、少しは相談してほしいと我儘に思えるが、彼女はそう思ってしまった。
彼女はいつものように午後のニュース番組をだらだらと流し見ていると、彼が学校から帰ってきた。彼は退学書類を見つめては、神妙な面持ちで彼女を見つめ、そして、彼女の正面に姿勢を正して座った。
「あの……大学辞めること、黙っていてごめんなさい……」
「いいよ、別に。私はアキオの保護者じゃないもの。それに、アキオの人生だ。好きなようにしたらいいさ」
少し彼女は不貞腐れたように、言い放った。彼は彼女の機嫌の悪さを感じていたが、それでも彼女に聞いておきたかったことがあった。だから、彼は敢えて空気を読まずに話を続けることにした。
「僕、我儘なのは自分でも分かっているんです。だけど、一人の時間に、何が必要で必要じゃないかということを考えて、悩んでいたけれど、僕の心のわだかまりが大学だったということに気づけた。だから辞めることにしたんだ。まだ、これからやりたいことは見つかってないんだけど……」
ただ、彼は真っ直ぐに彼女を見て、自分のやったことは正しかったと認めてもらいたいと主張していた。
「ねぇ、文さんはどうしてこんな僕の面倒を見てくれるの?」
「ひとつ、昔話をしようか。私が小さかった頃の話。私がこれまでどんな子供だったかの話」
彼女は、静かに過去の話を始めた。
「なんだこれ。アキオ、大学辞めるのか……?」
彼女は彼が黙って大学を辞めることに寂しさを覚えた。別に腹が立ったわけではない。彼女が彼の人生にどうこう口を挿む資格はないと思っていたからだ。ただ、少しは相談してほしいと我儘に思えるが、彼女はそう思ってしまった。
彼女はいつものように午後のニュース番組をだらだらと流し見ていると、彼が学校から帰ってきた。彼は退学書類を見つめては、神妙な面持ちで彼女を見つめ、そして、彼女の正面に姿勢を正して座った。
「あの……大学辞めること、黙っていてごめんなさい……」
「いいよ、別に。私はアキオの保護者じゃないもの。それに、アキオの人生だ。好きなようにしたらいいさ」
少し彼女は不貞腐れたように、言い放った。彼は彼女の機嫌の悪さを感じていたが、それでも彼女に聞いておきたかったことがあった。だから、彼は敢えて空気を読まずに話を続けることにした。
「僕、我儘なのは自分でも分かっているんです。だけど、一人の時間に、何が必要で必要じゃないかということを考えて、悩んでいたけれど、僕の心のわだかまりが大学だったということに気づけた。だから辞めることにしたんだ。まだ、これからやりたいことは見つかってないんだけど……」
ただ、彼は真っ直ぐに彼女を見て、自分のやったことは正しかったと認めてもらいたいと主張していた。
「ねぇ、文さんはどうしてこんな僕の面倒を見てくれるの?」
「ひとつ、昔話をしようか。私が小さかった頃の話。私がこれまでどんな子供だったかの話」
彼女は、静かに過去の話を始めた。