第30話 承-24
文字数 580文字
空が薄ら赤くなってきた頃に文は帰宅した。アキオは彼女の帰ってきた音にうつらうつらしていた顔を上げ、一晩中言おうと準備しておいた言葉を紡いだ。
「おかえりなさい。文さん、仕事帰りで疲れているところにごめん、話があるんだ」
彼の真摯な瞳に彼女は何か彼の中で一段落ついたことを察し、優しく彼の言葉に頷き彼の目の前に姿勢を正して座った。
「そっか。だからこんな時間まで布団に入らず待ってくれていたんだね。ありがとう。それで、話って?」
彼は、彼女の優しい声に今なら言える気がすると確信した。
「あのね、今日ずっと思っていた。僕、やっぱり画家をもう一度目指したい」
一年前の彼の死んだ魚のような目とは違う、光の灯った瞳を彼女に向け、彼はこれから進む未来を告げた。
「そっか、好きなようにすればいいさ」
彼女はこれまでとは違う声音でいつもの言葉を彼に言い放った。彼女は今日の彼がこれまでの彼とは違うことは気づいていた。だから、余計なことは何一つ言わなかった。勘の良い彼ならば気づいてくれることくらい分かっていたからだ。だからこそ、いつもの変わらない言葉を彼女は言った。彼の中で感情が高ぶっていることも彼女は知っていた。だから彼女は平穏を与えるべきだと思った。
「ありがとう。そうするね」
彼の返事は穏やかなものに戻っていた。
穏やかな夜明けだった。
「おかえりなさい。文さん、仕事帰りで疲れているところにごめん、話があるんだ」
彼の真摯な瞳に彼女は何か彼の中で一段落ついたことを察し、優しく彼の言葉に頷き彼の目の前に姿勢を正して座った。
「そっか。だからこんな時間まで布団に入らず待ってくれていたんだね。ありがとう。それで、話って?」
彼は、彼女の優しい声に今なら言える気がすると確信した。
「あのね、今日ずっと思っていた。僕、やっぱり画家をもう一度目指したい」
一年前の彼の死んだ魚のような目とは違う、光の灯った瞳を彼女に向け、彼はこれから進む未来を告げた。
「そっか、好きなようにすればいいさ」
彼女はこれまでとは違う声音でいつもの言葉を彼に言い放った。彼女は今日の彼がこれまでの彼とは違うことは気づいていた。だから、余計なことは何一つ言わなかった。勘の良い彼ならば気づいてくれることくらい分かっていたからだ。だからこそ、いつもの変わらない言葉を彼女は言った。彼の中で感情が高ぶっていることも彼女は知っていた。だから彼女は平穏を与えるべきだと思った。
「ありがとう。そうするね」
彼の返事は穏やかなものに戻っていた。
穏やかな夜明けだった。