第2話 起-2
文字数 568文字
深夜の風は絹の衣をまとっているようで心地が良い。持ち店のバーを閉めてからアパートに向かうまでの帰り道は歩いて帰るのが文の日課だった。夜風にあたることで酔いがスッとさめる。仕事場から家までは一駅分くらいの距離だ。居酒屋通りを抜けたら閑静な住宅地に出る。その中に一つだけおんぼろアパートがある。そこが文の家だ。
いつもなら酔いつぶれたおっさんやチャラそうな若者たちがちらほら視界に入るだけで、気にも留めていなかった。しかし、今日は違った。くたびれたリクルートスーツを着た若い男がいた。正確には、その若い男がゴミ捨て場で寝ていた。
いつもなら放って家に帰っていたはずだ。しかし、今日は違った。よく顔を見てみるとアンティークのように綺麗だった。そして、どこか儚く脆いように感じた。ここで見逃してしまったら壊れてしまうような気さえした。だから彼女はその青年に声をかけた。らしくなかったが、イケメンだったから声をかけた。そう彼女は自分に言い聞かす。昔のことを思い出して少し胸が痛くなった。
「おーい、息してるかー」
彼女はペチペチと彼の頬を軽くたたいた。寝ている場所が場所だし、酔っぱらっているのかと思ったが、その青年からは酒の匂いが全くしなかった。むしろ腐卵臭がひどかった。目を覚ました青年に鼻をつまみながら彼女は左手を差し伸べた。
いつもなら酔いつぶれたおっさんやチャラそうな若者たちがちらほら視界に入るだけで、気にも留めていなかった。しかし、今日は違った。くたびれたリクルートスーツを着た若い男がいた。正確には、その若い男がゴミ捨て場で寝ていた。
いつもなら放って家に帰っていたはずだ。しかし、今日は違った。よく顔を見てみるとアンティークのように綺麗だった。そして、どこか儚く脆いように感じた。ここで見逃してしまったら壊れてしまうような気さえした。だから彼女はその青年に声をかけた。らしくなかったが、イケメンだったから声をかけた。そう彼女は自分に言い聞かす。昔のことを思い出して少し胸が痛くなった。
「おーい、息してるかー」
彼女はペチペチと彼の頬を軽くたたいた。寝ている場所が場所だし、酔っぱらっているのかと思ったが、その青年からは酒の匂いが全くしなかった。むしろ腐卵臭がひどかった。目を覚ました青年に鼻をつまみながら彼女は左手を差し伸べた。