第26話 承-20
文字数 536文字
それからアキオは、文の家から電車やバスで行ける範囲の美術館に月2回ほど、足繫く通っていた。
彼女はそんな彼を不思議そうに俯瞰していた。ある日、彼は彼女が毎日とっていた新聞の中の一枚のチラシを穴が開くように眺めていた。
「そんなにまじまじと何を見ているんだ?」
彼女が声をかけると、彼はびくっと肩をすくめた。
「わっ、文さん、起きていたんだ。これ、ゴッホの展覧会があそこの美術館に来週から来るんだ。僕、これ気になって……」
「ふぅん。それ、一緒に行くか?」
「文さんも興味あったの?」
「いいや、アキオとデート、してみたくてさ」
デートという言葉に彼は少し赤くなった。彼女はその初々しい反応を見て面白がった。彼女にとって彼のその反応は意外だったのだ。彼は容姿が整っているから経験豊富だと彼女は勝手に認識していたから、まさかデートというだけで彼が紅潮するとは思ってもみなかったのだ。
「もう、あんまりからかうなよ。僕は別に経験がないわけじゃないんだから……」
それから彼は少し彼女を意識してしまう日が何日か続いた。彼は心の中で何やってくれてんだと、彼女に対して嫌気がさしていた。男女一つ屋根の下、これまで何も過ちがなかったことすら奇跡に等しい状況だった。
彼女はそんな彼を不思議そうに俯瞰していた。ある日、彼は彼女が毎日とっていた新聞の中の一枚のチラシを穴が開くように眺めていた。
「そんなにまじまじと何を見ているんだ?」
彼女が声をかけると、彼はびくっと肩をすくめた。
「わっ、文さん、起きていたんだ。これ、ゴッホの展覧会があそこの美術館に来週から来るんだ。僕、これ気になって……」
「ふぅん。それ、一緒に行くか?」
「文さんも興味あったの?」
「いいや、アキオとデート、してみたくてさ」
デートという言葉に彼は少し赤くなった。彼女はその初々しい反応を見て面白がった。彼女にとって彼のその反応は意外だったのだ。彼は容姿が整っているから経験豊富だと彼女は勝手に認識していたから、まさかデートというだけで彼が紅潮するとは思ってもみなかったのだ。
「もう、あんまりからかうなよ。僕は別に経験がないわけじゃないんだから……」
それから彼は少し彼女を意識してしまう日が何日か続いた。彼は心の中で何やってくれてんだと、彼女に対して嫌気がさしていた。男女一つ屋根の下、これまで何も過ちがなかったことすら奇跡に等しい状況だった。