第34話 ユリの捜索開始 その3
文字数 2,472文字
翼が二人の口論に口を挟 んだため、ユンとケルは同時に翼を睨 んだ。
「何よ、翼!」
「翼、テメェは引っ込んでろ!」
「いや、ちょっと聞いてくれないかなぁ?」
「だから、テメェは・」
「待ってケル! ちょっと黙ってて。」
「え? ユ、ユン?!・・。」
「ちょっと翼と話しをさせて。」
「え? あ、ああ・・。」
「ねぇ翼、あなた何を言いたいのかしら?」
ユンは目を細めて翼を見る。
翼が何を言いたいのか気になったようだ。
そんなユンの目を見つめて、翼は徐 に話し始めた。
「俺は男だろう?
だからケルの気持ちはわかるんだ。
好きな女性と今すぐにでも結婚したいという気持ちはね。」
「よく言った、翼!」
「いや、ケル、ちょっと待ってくれ。」
「へ?」
自分と共感したと思った矢先の翼の一言にケルはポカンとした。
だが、すぐにケルは翼を睨 み付け・・怒鳴った。
「ああん! てめぇは、俺の味方じゃねぇのか!」
「味方?」
「違うのか! この唐変木 が!」
「う~ん・・」
そう翼は唸 って、ちょっと考え込んだ。
そして・・。
「まぁ、ケルの味方かと言われれば、そうかもなんだけど。」
「ええい!! ハッキリしねぇな、このヘナチョコが!」
「まぁまぁ~そう怒らずに最後まで話を聞いてくれないかな?」
淡々と話す翼に何かを感じたケルが黙る。
それと入れ替わるかのように、ユンが口を挟 んだ。
「ねぇ翼、あんたは私が間違っているとでも言いたいのかしら?」
「そうじゃないよ、ユン。」
「なら、何なのよ?」
「だから、ちょっと聞いて欲しいんだけど?」
「・・・いいわ、聞いてあげる。」
ユンのその言葉に、翼は頷 く。
そして翼はケルに向きなおり話し始めた。
「ケルに聞きたいんだけどさ?」
「ふん! 何を聞きてぇんで!」
ケルは喧嘩越しに翼にほえた。
翼はそれを涼しい顔でスルーする。
「ケルはユンの事、大事だろう?」
「当たり前の屁 の河童 でぇい! 大事に決まっているだろうが!」
ケルが即座に答えたのを聞いて、ユンが顔を真っ赤にした。
その様子を見て翼はため息をついた。
なんか痴話 喧嘩を治めようとしている自分がバカバカしくなった翼である。
とはいえ、口を挟んでしまったから仕方がないと諦 めた。
それにしてもカッパのケルの、
どうやらカッパでも屁 はするものらしい。
臭いのだろうか?
いや、臭いに違いない。
なにせ、ケルである。
どうでも良いことを考える翼であった。
翼は頭を軽く振り、どうでもよいことを考えている場合ではないと思い直した。
再びケルに聞く。
「ケル、ユンと結婚したい理由の中に、庄屋としての妻を期待しているよね?」
「ああん?! このトンチキが!
ユンは俺と結婚し庄屋の妻として働くのは当然だ!
当たり前の事を聞くんじゃねぇ!!」
言い切ったケルにユンは一瞬顔を顰 め、何か言い返そうとした。
そんなユンに、ちょっと待ってと翼は手で制止する。
そして翼は額に手を当ててため息を吐き、かるく頭を左右に振った。
翼はケルを宥めるかのような口調でケルに話しかける。
「ケル、それは言い方が悪いと思うよ?」
「何がだ? 男が思ったことを口に出して何が悪い!」
「悪いさ、だって、それがユンにとって結婚を承諾しない理由になっているからね。」
「へ?!」
「いいかいケル・・、ユンはケルが好きだとハッキリと言っているんだよ?」
「あん? 何を今更、当たり前の事を言いやがんでぇ・・。」
「でもケルがすぐに結婚だと迫るから、今は結婚をしたくないと言っている。」
「だから俺は・」
「聞いて、ケル。
ユンは今すぐには結婚したくないけど、ゆくゆくは結婚する気があると言っているんだ。」
「だったら今すぐにでもいいじゃねぇか!」
「あのさ、ケル、それって自分勝手だと思うよ?
ユンを蔑 ろにしていないかい?」
「へ?」
「ユンが大事だと良いながら、ユンの気持ちを理解しようとしない。
自分の気持ちをユンに押しつけているだけなんじゃないか?」
「!・・・。」
「ユンはケルと結婚する気はあるけど、まだその気になれないだけじゃん。
もう少しケルとの愛を育 みたいんじゃないの?
結婚をするまえに沢山の良い思い出を作っておきたいんじゃないかな。
それが強固な信頼感となって、結婚してもよいという気持ちになるとユンは思っている気がするんだけど?」
「・・・。」
「考えてみてよ、ユンはこの村を束ねる庄屋の嫁になるんだよ?
それってかなりの決心が必要なんじゃないの?
庄屋って、誰でも簡単に気軽になれるもんじゃ無いんじゃないだろ、ケル?」
「当たり前だ! 庄屋の責任は重いからな。
隣近所の河童どおしのもめ事の仲裁に始まり、別種族とのもめ事の仲裁もある。
はてはお上 との折衝までも請け負う のが庄屋だ。
庄屋の一言で、余所様の人生を変えてしまえる権力者だからなぁ。」
「そうだろうね・・・。
ユンはそれが分かっているから躊躇 しているんじゃないの?
庄屋へ嫁に入ったとき、困難に立ち向かうために必要なモノがまだ足りないんじゃない?
それは今以上にケルとの強い繋がりを感じなければ、ユンは自信が持てないんじゃないのかな?
それなのに、ケルは自分の気持ちだけを押しつけようとしていないかい?」
「・・・。」
ケルは押し黙った。
そして目を瞑 る。
沈黙が三人の間に降り、重い雰囲気が続いた。
やがてケルは口を開いた。
「ユン、済まなかった、気に喰 わんが翼の言うことはもっともだ・・。
すまん・・。」
「あ、アンタ・・。」
「お前が結婚しても良いと言うまで、俺は口説 き続ける。」
「嬉 しい! 分かってくれたのね!」
「ちょ、ちょっと待った~ぁ!
それって今まで通りに結婚を迫るってことだろうがぁ!」
「嫌 違うぞ翼、俺は自分勝手に結婚を迫ることを止 めた。
その代わりユンが良いと言うまで結婚を迫るだけだ。」
「アンタ、有り難う!」
ユンとケルは二人して見つめ合い、二人の世界に入ってしまった。
翼はため息を吐いて、「もう、好きにすれば」と、ボソリと呟 いた。
「何よ、翼!」
「翼、テメェは引っ込んでろ!」
「いや、ちょっと聞いてくれないかなぁ?」
「だから、テメェは・」
「待ってケル! ちょっと黙ってて。」
「え? ユ、ユン?!・・。」
「ちょっと翼と話しをさせて。」
「え? あ、ああ・・。」
「ねぇ翼、あなた何を言いたいのかしら?」
ユンは目を細めて翼を見る。
翼が何を言いたいのか気になったようだ。
そんなユンの目を見つめて、翼は
「俺は男だろう?
だからケルの気持ちはわかるんだ。
好きな女性と今すぐにでも結婚したいという気持ちはね。」
「よく言った、翼!」
「いや、ケル、ちょっと待ってくれ。」
「へ?」
自分と共感したと思った矢先の翼の一言にケルはポカンとした。
だが、すぐにケルは翼を
「ああん! てめぇは、俺の味方じゃねぇのか!」
「味方?」
「違うのか! この
「う~ん・・」
そう翼は
そして・・。
「まぁ、ケルの味方かと言われれば、そうかもなんだけど。」
「ええい!! ハッキリしねぇな、このヘナチョコが!」
「まぁまぁ~そう怒らずに最後まで話を聞いてくれないかな?」
淡々と話す翼に何かを感じたケルが黙る。
それと入れ替わるかのように、ユンが口を
「ねぇ翼、あんたは私が間違っているとでも言いたいのかしら?」
「そうじゃないよ、ユン。」
「なら、何なのよ?」
「だから、ちょっと聞いて欲しいんだけど?」
「・・・いいわ、聞いてあげる。」
ユンのその言葉に、翼は
そして翼はケルに向きなおり話し始めた。
「ケルに聞きたいんだけどさ?」
「ふん! 何を聞きてぇんで!」
ケルは喧嘩越しに翼にほえた。
翼はそれを涼しい顔でスルーする。
「ケルはユンの事、大事だろう?」
「当たり前の
ケルが即座に答えたのを聞いて、ユンが顔を真っ赤にした。
その様子を見て翼はため息をついた。
なんか
とはいえ、口を挟んでしまったから仕方がないと
それにしてもカッパのケルの、
屁のカッパ
と言うことばが気になる。どうやらカッパでも
臭いのだろうか?
いや、臭いに違いない。
なにせ、ケルである。
どうでも良いことを考える翼であった。
翼は頭を軽く振り、どうでもよいことを考えている場合ではないと思い直した。
再びケルに聞く。
「ケル、ユンと結婚したい理由の中に、庄屋としての妻を期待しているよね?」
「ああん?! このトンチキが!
ユンは俺と結婚し庄屋の妻として働くのは当然だ!
当たり前の事を聞くんじゃねぇ!!」
言い切ったケルにユンは一瞬顔を
そんなユンに、ちょっと待ってと翼は手で制止する。
そして翼は額に手を当ててため息を吐き、かるく頭を左右に振った。
翼はケルを宥めるかのような口調でケルに話しかける。
「ケル、それは言い方が悪いと思うよ?」
「何がだ? 男が思ったことを口に出して何が悪い!」
「悪いさ、だって、それがユンにとって結婚を承諾しない理由になっているからね。」
「へ?!」
「いいかいケル・・、ユンはケルが好きだとハッキリと言っているんだよ?」
「あん? 何を今更、当たり前の事を言いやがんでぇ・・。」
「でもケルがすぐに結婚だと迫るから、今は結婚をしたくないと言っている。」
「だから俺は・」
「聞いて、ケル。
ユンは今すぐには結婚したくないけど、ゆくゆくは結婚する気があると言っているんだ。」
「だったら今すぐにでもいいじゃねぇか!」
「あのさ、ケル、それって自分勝手だと思うよ?
ユンを
「へ?」
「ユンが大事だと良いながら、ユンの気持ちを理解しようとしない。
自分の気持ちをユンに押しつけているだけなんじゃないか?」
「!・・・。」
「ユンはケルと結婚する気はあるけど、まだその気になれないだけじゃん。
もう少しケルとの愛を
結婚をするまえに沢山の良い思い出を作っておきたいんじゃないかな。
それが強固な信頼感となって、結婚してもよいという気持ちになるとユンは思っている気がするんだけど?」
「・・・。」
「考えてみてよ、ユンはこの村を束ねる庄屋の嫁になるんだよ?
それってかなりの決心が必要なんじゃないの?
庄屋って、誰でも簡単に気軽になれるもんじゃ無いんじゃないだろ、ケル?」
「当たり前だ! 庄屋の責任は重いからな。
隣近所の河童どおしのもめ事の仲裁に始まり、別種族とのもめ事の仲裁もある。
はてはお
庄屋の一言で、余所様の人生を変えてしまえる権力者だからなぁ。」
「そうだろうね・・・。
ユンはそれが分かっているから
庄屋へ嫁に入ったとき、困難に立ち向かうために必要なモノがまだ足りないんじゃない?
それは今以上にケルとの強い繋がりを感じなければ、ユンは自信が持てないんじゃないのかな?
それなのに、ケルは自分の気持ちだけを押しつけようとしていないかい?」
「・・・。」
ケルは押し黙った。
そして目を
沈黙が三人の間に降り、重い雰囲気が続いた。
やがてケルは口を開いた。
「ユン、済まなかった、気に
すまん・・。」
「あ、アンタ・・。」
「お前が結婚しても良いと言うまで、俺は
「
「ちょ、ちょっと待った~ぁ!
それって今まで通りに結婚を迫るってことだろうがぁ!」
「
その代わりユンが良いと言うまで結婚を迫るだけだ。」
「アンタ、有り難う!」
ユンとケルは二人して見つめ合い、二人の世界に入ってしまった。
翼はため息を吐いて、「もう、好きにすれば」と、ボソリと