第14話 旅立ち 2
文字数 2,958文字
翼はユンの話しに驚いた。
「異次元に逃げ込んだ?・・・。」
「そう、異次元へね。
異空間と言い換えてもいいわよ?
そこに私達が住んでいるの。
何となくわかるんじゃないの、私達が門を開けてこの世界に現われているんだから。」
「・・・。」
「それで異空間に逃げ込んだのはいいんだけど烏妖 もそこまで追いかけてきたの。
そして私からユリを離した。
ユリは離された反動で、異空間のどこかに弾き 飛ばされてしまったの。
私はユリを掴 もうとしたけれど間に合わなかったわ。
異空間のどことも分からない場所に飛ばされたら、人間は生きてはいけないわ。
そういう事よ。」
「待て!まってくれユン!
それではユリが死んだことにはならないだろう!
異空間のどこかで生きているんじゃないのか!」
「はぁ~・・・、人間では異空間がどんな所かわからないか・・。
あのね、異空間と言うのは人間でいうと無限に広がる何も無い空間なの。
ユリはそんな異空間で一人迷子になっているのよ?
その状況がどういう事か分かる? 分かるでしょ?」
「・・・?」
「分からないか・・。
そうね、ならば、こう言えばわかるかしら・・。
異空間は人間で言うと宇宙のような場所で、空気はあるけど光も音も何もない所なの。
想像してみてよ、真っ暗な何もない空間をたった一人で彷徨 う自分を。
人間では二日三日もすれば正気じゃなくなるわよ?
ユリが居なくなってからどのくらい経 っていると思っているの?
正気を無くし、あとは朽ち果てるのを待つだけよ。
諦め なさい。」
「そんな事はない! ユリは心が強いんだ正気を保つ!
それに俺が生きていうちに見つけてみせる!」
「理解できないか・・・。
仕方がない一度異空間を見させてあげる。」
そう言うとユンは翼に近づき、肩に手を乗せた。
次の瞬間、翼は真っ暗な空間にいた。
「こ、ここは・・・。」
「これが異空間よ、異次元と言った方がよいかしら?
私らの村にいくために使用する空間なの。」
ユンはそういうと翼から手を離した。
「いいこと、勝手に歩こうとしたり走ったりしない事ね。
止まろうとしても止まれなくなるわよ?
どんどん加速して、この異空間のどこかに行ってしまう事になるわ。
ユリのように。」
翼は周りの景色の異常さに息を呑 み、驚きでユンの言葉を聞いていなかった。
「私の言うことを聞いているの!
もう一度言うわよ、へたに動くとこの異世界の彼方を漂うことになるわよ!」
「あ、ああ・・分かった。」
翼はユンに怒鳴られハッとした。そしてユンの言葉を理解しはじめる。
一度動き始めるとどんどんと加速してこの空間のどこかに飛ばされるのか・・。
そう理解した直後、あわててユンを見た。
自分の側にユンが居ることから、自分が動いていない事を確認できホッとする。
そしてポツンと呟 いた。
「ユリはこんな異空間を彷徨 っているのか・・。」
翼はこの空間を見渡した。
どこもかしこも真っ暗で何も見えない。
だが・・
暗闇でユンがはっきりと見えている。
そして自分の手を見てみると、手が見えた。
いや確認できる範囲で自分の姿が見える。
光が無いこの空間で・・・。
ふと足下を見た。
真っ暗で地面があるかないかわからず、まるで奈落の底を見ているようだ。
ただ言えるのは地面を踏みしめている感覚がない。
このことから、おそらく地面がない世界であり宙に浮いているのだろう。
そしてここから落ちるという不安感は何故だか感じない。
それに宙に浮いている感覚はあるが、ふわふわと漂 っているのではない。
見えない地面があり、そこに乗っているかのように静止している。
そして耳を澄ませるまでもなく、異様なまでの静けさに覆われている。
物音一つなく、耳がツンとして気持ち悪い。
翼は目を閉じて五感でこの空間を感じ取ろうとした。
だが無駄であった。
光も音も無いばかりでない。
寒くも暑くもなく快適なようで快適でない。温度らしきものを感じないのだ。
そして臭いも感じない。
呼吸は自然にできていることから、空気はあるようだ。
だが風が無い・・。
まさに無の空間という感じだ。
翼はゆっくりと目を見開く。
そんな翼にユンが聞く。
「どう? どういう場所か理解できた?
もう一度言うね、この空間は無限に広がっているの。
この世界でユリはたった一人、今もこの空間を彷徨 っているの。
正気でいられると思う?
言わなくても分かると思うけど、ユリを探すなんて言わないわよね?
この異空間でたった一人の人間を探すというなら、その方法を言ってみなさいな。」
「そ、それは・・・。」
「分かったでしょ? もういいかしら?」
「・・・・。」
「さぁ、貴方の居場所に返してあげる、行くわよ。」
ユンの言葉に頷 こうとし、ふと疑問がわいた。
「待ってくれユン。」
「何?」
「今まで俺の前にユンは姿を見せなかっただろう?」
「それが何か?」
「その理由を教えてくれ。」
「・・・。」
ユンを翼はジッと見つめる。
そしてなんで翼をここにまで連れてきて私は説明しなくちゃならないのかと思った。
本来物の怪は気ままで、自分が面白いと思うこと以外はしないというのに・・。
翼をここに連れてこないで、無視して放って置けばよかったと後悔した。
そしてウソをつくのも面倒のため、ユンは正直に話す。
「足の治癒をしていたわ。傷がふさがってからはユリを探していた。」
「え?! いや、だってユリは探せないのだろう?」
「そうよ。」
「どういう事だ?」
「・・・。」
「ユン?」
「はぁ~、やはり聞いて来たか・・。
いいことそれを聞いたらとっとと自分の居場所に帰りなさいよ。
分かった?」
「え・・、あ、・・うん。」
「ユリでなければ探さなないわよ、探すなんて面倒だもの。
それに見つかる可能性なんてないもの。
でも、ユリだからどういう状態であっても見つけて上げたかった。
見つかるかもしれない万が一の偶然にかけてみたの。」
「万が一があるのか!? なら、それを教えてくれ!」
「あのね、自分の居場所に帰れと言ったわよね?」
「教えてくれ! 頼む!」
翼は深く頭をさげた。
それに聞くまで帰る気がない様子にユンは肩を落とした。
こんな事なら答えずにおいた方が良かったと後悔する。
ため息を一つ吐いてユンは口を開く。
「・・・希望を持たずに聞ける?」
「え!?・・・、あ、ああ・・。」
曖昧ではあるが翼が頷 いたのを確認し、ユンは話し始めた。
「この異空間に漂うユリを、どこかの物の怪が見つける可能性にかけたの。」
「そうか!そういう事か! ユリを見つける事ができるんだ!」
「希望を持つなと言ったでしょ!!
物の怪と出会う確率をどう考えているのさ!」
「え?」
「いい事!
この異空間で物の怪と出会えるのは、物の怪の村の入り口だけよ!
あちこちに居るわけじゃないの!
それに入り口から出入りする物の怪は1週間で一人いるかいないかよ?
それも入り口はこの広大な異空間に散在し100個ほどしかないわ。
偶然にも物の怪がユリを見つける可能性があると思う?
砂浜にある一粒の砂を見つけると同じ確率より低いわよ。
まさかとは思うけど、ユリが偶然にも入り口を見つけて、そこに居てくれたらなんて考えないよね。
言っとくけど入り口は人間には見ることも、入ることもできないからね。」
翼は押し黙った。
「異次元に逃げ込んだ?・・・。」
「そう、異次元へね。
異空間と言い換えてもいいわよ?
そこに私達が住んでいるの。
何となくわかるんじゃないの、私達が門を開けてこの世界に現われているんだから。」
「・・・。」
「それで異空間に逃げ込んだのはいいんだけど
そして私からユリを離した。
ユリは離された反動で、異空間のどこかに
私はユリを
異空間のどことも分からない場所に飛ばされたら、人間は生きてはいけないわ。
そういう事よ。」
「待て!まってくれユン!
それではユリが死んだことにはならないだろう!
異空間のどこかで生きているんじゃないのか!」
「はぁ~・・・、人間では異空間がどんな所かわからないか・・。
あのね、異空間と言うのは人間でいうと無限に広がる何も無い空間なの。
ユリはそんな異空間で一人迷子になっているのよ?
その状況がどういう事か分かる? 分かるでしょ?」
「・・・?」
「分からないか・・。
そうね、ならば、こう言えばわかるかしら・・。
異空間は人間で言うと宇宙のような場所で、空気はあるけど光も音も何もない所なの。
想像してみてよ、真っ暗な何もない空間をたった一人で
人間では二日三日もすれば正気じゃなくなるわよ?
ユリが居なくなってからどのくらい
正気を無くし、あとは朽ち果てるのを待つだけよ。
「そんな事はない! ユリは心が強いんだ正気を保つ!
それに俺が生きていうちに見つけてみせる!」
「理解できないか・・・。
仕方がない一度異空間を見させてあげる。」
そう言うとユンは翼に近づき、肩に手を乗せた。
次の瞬間、翼は真っ暗な空間にいた。
「こ、ここは・・・。」
「これが異空間よ、異次元と言った方がよいかしら?
私らの村にいくために使用する空間なの。」
ユンはそういうと翼から手を離した。
「いいこと、勝手に歩こうとしたり走ったりしない事ね。
止まろうとしても止まれなくなるわよ?
どんどん加速して、この異空間のどこかに行ってしまう事になるわ。
ユリのように。」
翼は周りの景色の異常さに息を
「私の言うことを聞いているの!
もう一度言うわよ、へたに動くとこの異世界の彼方を漂うことになるわよ!」
「あ、ああ・・分かった。」
翼はユンに怒鳴られハッとした。そしてユンの言葉を理解しはじめる。
一度動き始めるとどんどんと加速してこの空間のどこかに飛ばされるのか・・。
そう理解した直後、あわててユンを見た。
自分の側にユンが居ることから、自分が動いていない事を確認できホッとする。
そしてポツンと
「ユリはこんな異空間を
翼はこの空間を見渡した。
どこもかしこも真っ暗で何も見えない。
だが・・
暗闇でユンがはっきりと見えている。
そして自分の手を見てみると、手が見えた。
いや確認できる範囲で自分の姿が見える。
光が無いこの空間で・・・。
ふと足下を見た。
真っ暗で地面があるかないかわからず、まるで奈落の底を見ているようだ。
ただ言えるのは地面を踏みしめている感覚がない。
このことから、おそらく地面がない世界であり宙に浮いているのだろう。
そしてここから落ちるという不安感は何故だか感じない。
それに宙に浮いている感覚はあるが、ふわふわと
見えない地面があり、そこに乗っているかのように静止している。
そして耳を澄ませるまでもなく、異様なまでの静けさに覆われている。
物音一つなく、耳がツンとして気持ち悪い。
翼は目を閉じて五感でこの空間を感じ取ろうとした。
だが無駄であった。
光も音も無いばかりでない。
寒くも暑くもなく快適なようで快適でない。温度らしきものを感じないのだ。
そして臭いも感じない。
呼吸は自然にできていることから、空気はあるようだ。
だが風が無い・・。
まさに無の空間という感じだ。
翼はゆっくりと目を見開く。
そんな翼にユンが聞く。
「どう? どういう場所か理解できた?
もう一度言うね、この空間は無限に広がっているの。
この世界でユリはたった一人、今もこの空間を
正気でいられると思う?
言わなくても分かると思うけど、ユリを探すなんて言わないわよね?
この異空間でたった一人の人間を探すというなら、その方法を言ってみなさいな。」
「そ、それは・・・。」
「分かったでしょ? もういいかしら?」
「・・・・。」
「さぁ、貴方の居場所に返してあげる、行くわよ。」
ユンの言葉に
「待ってくれユン。」
「何?」
「今まで俺の前にユンは姿を見せなかっただろう?」
「それが何か?」
「その理由を教えてくれ。」
「・・・。」
ユンを翼はジッと見つめる。
そしてなんで翼をここにまで連れてきて私は説明しなくちゃならないのかと思った。
本来物の怪は気ままで、自分が面白いと思うこと以外はしないというのに・・。
翼をここに連れてこないで、無視して放って置けばよかったと後悔した。
そしてウソをつくのも面倒のため、ユンは正直に話す。
「足の治癒をしていたわ。傷がふさがってからはユリを探していた。」
「え?! いや、だってユリは探せないのだろう?」
「そうよ。」
「どういう事だ?」
「・・・。」
「ユン?」
「はぁ~、やはり聞いて来たか・・。
いいことそれを聞いたらとっとと自分の居場所に帰りなさいよ。
分かった?」
「え・・、あ、・・うん。」
「ユリでなければ探さなないわよ、探すなんて面倒だもの。
それに見つかる可能性なんてないもの。
でも、ユリだからどういう状態であっても見つけて上げたかった。
見つかるかもしれない万が一の偶然にかけてみたの。」
「万が一があるのか!? なら、それを教えてくれ!」
「あのね、自分の居場所に帰れと言ったわよね?」
「教えてくれ! 頼む!」
翼は深く頭をさげた。
それに聞くまで帰る気がない様子にユンは肩を落とした。
こんな事なら答えずにおいた方が良かったと後悔する。
ため息を一つ吐いてユンは口を開く。
「・・・希望を持たずに聞ける?」
「え!?・・・、あ、ああ・・。」
曖昧ではあるが翼が
「この異空間に漂うユリを、どこかの物の怪が見つける可能性にかけたの。」
「そうか!そういう事か! ユリを見つける事ができるんだ!」
「希望を持つなと言ったでしょ!!
物の怪と出会う確率をどう考えているのさ!」
「え?」
「いい事!
この異空間で物の怪と出会えるのは、物の怪の村の入り口だけよ!
あちこちに居るわけじゃないの!
それに入り口から出入りする物の怪は1週間で一人いるかいないかよ?
それも入り口はこの広大な異空間に散在し100個ほどしかないわ。
偶然にも物の怪がユリを見つける可能性があると思う?
砂浜にある一粒の砂を見つけると同じ確率より低いわよ。
まさかとは思うけど、ユリが偶然にも入り口を見つけて、そこに居てくれたらなんて考えないよね。
言っとくけど入り口は人間には見ることも、入ることもできないからね。」
翼は押し黙った。