第35話 秘密結社
文字数 1,825文字
その店は土間に机が4卓、小上がりに4卓の机がある比較的大きな安い酒屋であった。
店の中では
そんな中、慌てた様子で猫又の一匹が店の
だが、客の誰もがそれを気にする様子はない。
飛び込んできた客は目をこれでもかと見開き、店内を見回す。
そして土間にある机を囲み4匹の猫又達が、酒を
「おい、大変だ!」
「ああん? 何、
そんなに酒が飲みたかったのか?
呑みたければ注文すればよかろう?
それとも注文して待っている時間もおしいのか?
酒は慌てて飲むものでもなかろう?」
「酒など飲んでいる場合か!」
「何を怒っておるのだ?
それは仕方有るまい、お主には仕事があり、儂らは暇なのだからな。
そんな事で怒る事もあるまい?」
その言葉に
「馬鹿野郎!! 人の話を聞け!!」
からかわれた猫又は、まわりの
その瞬間、居酒屋の中がしんと静まり返り、店にいた客から視線が集まった。
叫んだ猫又はハッとし、恐る恐るぎこちなく首を回して店を見渡す。
やがて気まずそうにゴホンと
廻りは暫くの間、
先に来ていた猫又の一匹が自分の
それを受け取り一気に酒を飲み
「いったい何があったんだ?」
お猪口を差し出した猫又が聞く。
「奉行所が人間1匹を捕らえた。」
「何だと!!」
今度は猪口を差し出した猫又が、先程と同じように大声で叫ぶ。
またしても店の客達が何事かと目を向けた。
それに気がつき、叫んだ猫又は机を囲んだ猫又達に告げる。
「場所を変えるぞ。」
そう言って机の上にお金を乗せ立ち上がった。
そして店の奥に向かって声をかける。
「店主、机に金を置いておくぞ!」
するとすぐに店の奥から威勢のよい声がした。
「毎度あり~!!」
その声を合図に猫又達は無言で
店の前は通りを挟んで比較的広い川が流れており、船が行き
とはいえ頻繁に行き交うわけでは無く、30分に一度ほど行き交う船がある程度である。
店を出た一行はその川の船着き場に一
そしてそこに居た船頭と一匹が何やら交渉を始めた。
やがて懐から財布を出し船頭に金を
船は
流れが緩い場所や流れに沿って行くときは、竿を使い行く方向を調整する。
水深の深い場所や、上流に戻るときなどは
一行が船に乗り込む。
だが
どうやら船頭から船だけを借りたようだ。
一匹が
船は岸を離れて緩やかな川の流れに乗り始める。
船は居酒屋などが並ぶ
川岸には背丈ほどもある
やがて船は芦が自然と入り江のようになった場所に入り込んだ。
その場所は両岸から見ても、芦で隠される場所であった。
一行は廻りの様子を伺う。
どうみても人が入ってこない芦の群生地であるにもかかわらず慎重な集団であった。
廻りに誰も居ないことを確認すると、竿を立て船が流れないように固定をする。
そして船を動かしていた猫又も
「おい
「ああ、本当だ。
それもお奉行が直々に捕まえたようだ。」
「で、お前はそれを伝えるために奉行所を抜け出してきたのか?」
「そうだ。」
「抜け出して怪しまれんのか?」
「ふん、怪しまれるも何も、もう儂の素性などバレているだろうよ。」
開きなおるかのように
「おい! それはどういうことだ!」
問い詰めるかのように言葉を発したモノを無視し、猫蔵はリーダー格らしき猫又に
「
「なんだと!」
リーダー格の猫又は目を見開いて大声を上げた。