麻痺する日常

文字数 719文字

 ベルカの伝言通り、アランはニコライの居る部屋へ向かった。そこで彼に付けられた首輪は外され、アランは解放された首を右手で撫でる。
 
「ご褒美、喜んでくれた様で何よりだよ」
 ニコライが発した言葉でアランは目を丸くした。一方、そんなアランの様子を見たニコライは、楽しそうな笑みを浮かべて言葉を加える。
 
「何の為の首輪だったんだろうね? 撮った映像は記録としても残すけど、怪しい動きがあったら直ぐに対処しなきゃなんだから」
 そこまで話したところで、ニコライはアランの目を見上げた。この際、ニコライの言いたいことを理解したアランは苦笑する。
 
「外そうとしなかったから、先ずは合格。後は、人と接触した時を中心に再度チェックするだけ。まあ、君の回りで不穏な動きがあったら、その限りじゃ無いけどね」
 ニコライは、そう告げると目を細めて頭を傾ける。

「今日の君は休暇扱いだから、後は部屋に戻るなり食事をするなりすれば良い。でも、明日からは、マクシムとの仕事に戻ってね?」
 アランは、ニコライの指示を了承して部屋を出た。その後、彼は自室に戻るとベッドへうつ伏せに倒れこむ。それから、彼は枕を掴んで頭を乗せた。アランは、その体勢のまま寝息をたて始め、数時間してから目を覚ます。

 目覚めたアランは、ベッドに腰をかけると乱暴に頭を掻いた。そして、横目で時計を確認すると、遅い夕食を摂る為に食堂へと向かう。

 温かな料理を口に運びながら、アランは今日あった出来事を思い出していた。しかし、決して静かではないその環境のせいか、アランの記憶は曖昧になっていく。そうして夕食を終える頃には、アランは与えられた日常に戻っていた。指示通りに動きさえすれば安泰の、与えられた日常に。
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登場人物紹介

アラン


ガチムチ脳筋系の兄貴キャラ。
それでいて上の指示には従順な体育会系な為に社畜と化す。

純真な心が残っている為、それで苦しむが、何が大切かを決めて他を切り捨てる覚悟はある。

ニコライ的には、瞳孔が翠で良い体格の(おっちゃんなもっとデカなるでな)理想的な茶トラ人間バージョン。
なので気にいられてる。

ニコライ・フォヴィッチ


裏社会で商売している組織のボス。
ロシアンブルーを愛する。

猫好きをこじらせている。
とにかく猫が好き。
話しながら密かにモフる位に猫が好き。
昔はサイベリアンをモフっては抜け毛で毛玉を育てていた系猫好き。
重症な猫好き。
手遅れな猫好き。
猫には優しい。
猫には甘い。
そんな、ボス。

アール


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは右にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その1。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

エル


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは左にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その2。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

青猫
ニコライの愛猫。
専用の部屋を持つ部下より好待遇なお猫様。
ロシアンブルーだからあまり鳴かない。
そこが気に入られる理由。
専属獣医も居る謎待遇のお猫様。

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