支配者と支配される者達

文字数 1,447文字

 「以降の出入りについては、ボスから直接話が有ります」
 それだけ伝えると、職員は顔だけを動かしてアランを見た。一方、アランは小さく頷き、二人は白い壁に囲まれた通路を進んでいった。

 暫く歩いた後、二人は通路を左に曲がった。そして、その行き止まりにあるドアの前で立ち止まると、職員はアランの方を振り返って問い掛ける。
 
「この部屋に入ったら、失礼は許されません。心の準備は宜しいですか?」
 そう問われた者は肯定の返事をなし、職員は踵を返してドアに向き合った。彼女は、数拍の間を置いてからドアを叩き、落ち着いた声で言葉を発する。
 
「ニコライ様、アラン氏をお連れしました」
 職員は直ぐに頭を下げ、アランは不思議そうにそれを眺めた。そうしているうちにドアは内側から開けられ、その近くには黒いスーツを身に纏った青年の姿が在る。青年の表情から感情は読み取れず、その右目の目尻には一つの黒子が見えた。また、彼は左手でドアを支えており、自らの体で隠す様に右手で拳銃を握っている。
 
 青年の肌が見えるのは顔や首の一部だけで、両手も白い手袋で覆われていた。そのせいか、彼の印象はどこか機械的で、訪問者を見つめたまま口を開くことも無かった。

 代わりに、部屋の奥からは楽しそうな笑いが聞こえ、それに気付いたアランはそちらに目線を動かした。すると、笑っていた者はアランをじっと見つめ、それから頭を下げている職員を一瞥する。
 
「どうしたの? 早く入っておいでよ、アラン君」
 それを聞いたアランは、見えざる手で引き込まれるかの様に入室する。すると、スーツ姿の青年は直ぐにドアを閉め、アランの背後に立った。アランは、背後に立つ者に警戒しながら歩いていき、入室を促した者の前に立つ。アランの眼前に居る男の髪は薄い金色で、その肌は積もったばかりの雪の如く白かった。また、その瞳の色は灰色で、彼の左側には護衛と思しき青年が立っている。
 
 左に立つ青年は、ドアを開けた者と殆ど見た目が変わらなかった。しかし、黒子の位置だけは違っており、拳銃を握る手も左右が逆であった。また、彼の方が肉付きが良く、髪の長さもアランの背後に立つ者より長い。部屋の中で、金色の髪を持つ男だけが椅子に座っており、その前には大きな木製の机が在った。その机は、人が横になれる程に大きく、両サイドにはそれぞれ引き出しがついている。
 
 椅子に座る者は、自らの座高より高い背もたれに体重を預けている。その背もたれには弾力性のあるクッションが付けられており、そのせいでかなりの厚みを帯びていた。また、彼は肘掛けに軽く腕を乗せており、武器を所持しているようには見えなかった。
 
「さて、自己紹介をしようか。と言っても、君のことは調べ済みなんだけどね」
 そう言って微笑むと、男性は椅子に座ったまま話を続ける。

「僕の名前は、ニコライ。ニコライ・フォビッチだ。僕の横に居るのがエルで、君の後ろに居るのがアール」
 ニコライは、そう伝えると首を傾げ、アランの目を真っ直ぐに見つめる。それは、アランに名を名乗るよう促しているようで、それに気付いた者は静かに息を吸い込んだ。
 
「アランです」
 アランは腕を下方に真っ直ぐ伸ばし、深く頭を下げた。一方、それを見たニコライは目を瞑り、細く息を吐いてから言葉を発する。

「うん、知ってる。さて、一番基本的なことは終わったし、お仕事の話に移ろうか」
 そう話すと、ニコライは上体を傾けてテーブルに肘を付く。対するアランは顔を上げ、眼前に座る男の話を待った。
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登場人物紹介

アラン


ガチムチ脳筋系の兄貴キャラ。
それでいて上の指示には従順な体育会系な為に社畜と化す。

純真な心が残っている為、それで苦しむが、何が大切かを決めて他を切り捨てる覚悟はある。

ニコライ的には、瞳孔が翠で良い体格の(おっちゃんなもっとデカなるでな)理想的な茶トラ人間バージョン。
なので気にいられてる。

ニコライ・フォヴィッチ


裏社会で商売している組織のボス。
ロシアンブルーを愛する。

猫好きをこじらせている。
とにかく猫が好き。
話しながら密かにモフる位に猫が好き。
昔はサイベリアンをモフっては抜け毛で毛玉を育てていた系猫好き。
重症な猫好き。
手遅れな猫好き。
猫には優しい。
猫には甘い。
そんな、ボス。

アール


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは右にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その1。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

エル


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは左にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その2。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

青猫
ニコライの愛猫。
専用の部屋を持つ部下より好待遇なお猫様。
ロシアンブルーだからあまり鳴かない。
そこが気に入られる理由。
専属獣医も居る謎待遇のお猫様。

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