健康管理の為に運動場もある系施設
文字数 3,209文字
自室に戻ったアランは、持ち歩いていたケースをテーブルに置いた。彼は、そうしてからベッドへ仰向けに倒れ込む。
(楽なんだか大変なんだか分からねえな)
アランは左腕で目元を覆った。彼は、そうしてから大きく息を吐き、両腕を横へ向けてゆっくり伸ばす。
アランは、暫くその姿勢のままでいたが、勢いを付けて起き上がると机上のケースを見下ろした。彼は、そうしてから平たいケースを手に取り、一番上の引き出しを開ける。
アランはケースを引き出しに入れ、細く息を吐き出した。そして、引き出しを閉めると腰に手を当て、そこを軸にして上体を捻る。彼は、暫く上体を動かしてから背中を伸ばし、目を瞑って大きな欠伸をした。それから、アランは部屋の時計に目線を移し、首に掛けていたカードを外す。
アランは、外したカードを机に置くとベッドに入り、上着を脱がないまま目を瞑った。その後、疲れていたせいもあってか、彼は直ぐに眠りに落ちてしまった。しかし、酷い悪夢をみているのか、彼は時折低い唸り声を上げた。また、その額には脂汗が浮かび、睡眠の質が良いとは言えなかった。
そのせいか、アランは夜中に目を覚まし、どこか怯えた様子で室内を見回した。この時、時計の短針は幾らか右側に傾いており、それを確認したアランは再び目を瞑る。その後も、彼は短い眠りを繰り返しながら時を過ごし、短針が真下を通過したところで起き上がった。そして、彼は洗面台へ向かうと顔を洗い、クローゼットを開けて着替えを取り出す。
アランは、それをベッドの上で纏めるとカードを首に掛け、小さな声で言葉を漏らした。
「こういう時は、運動して忘れるのが一番だよな」
頬を叩き、アランは着替えを持って部屋を出た。彼は、そうしてから運動場へ向かって行き、自室や食堂と同様にカード認証を行った。
運動場の中に入ると、そこには小さな受付が在った。受付の中には女性が居り、アランは彼女に会釈をすると先へ進んだ。すると、その先には二つのドアが在り、そのそれぞれに性別を示すピクトグラムが描かれている。
アランは、二つのうち男性を示すピクトグラムが描かれたドアを開けて中に入った。ドアを開けた先には大きめのロッカーが並んでおり、そのどれにも名前の記載されたプレートが嵌められている。また、ロッカー間には細長い椅子が用意され、座ったり何かを置けたりする様になっていた。アランは、人気のない部屋を歩いて行き、自らの名が記されたロッカーの前で立ち止まる。彼は、そうしてからロッカーを開け、持参した着替えをそこに入れた。
そのロッカーの上部には棚が在り、アランが持参した衣服が置かれている。また、棚の下には左右に伸びる棒が在り、そこにはハンガーに掛けられた運動着が在った。アランは、ロッカーから袖の短い運動着を出して椅子に置いた。その運動着の布地は薄く、ボトムスの腰回りにはゴムが使用されている。また、トップスにボタンの類は使われておらず、襟ぐりは広くとられていた。アランは、首に掛けていたカードをロッカー内の棚に置いた。そして、着ていた制服を脱ぐとロッカーに投げ入れ、代わりに運動着を身に付けていく。
運動着に着替え終えたアランと言えば、ロッカーを閉じて鍵を掛けた。ロッカーの鍵には手首に巻けるバンドが付属され、アランはそれを左手首に巻き付ける。
アランは笑みを浮かべ、部屋の奥へ向かって行く。すると、そこには磨り硝子で出来たドアが在った。
彼は、そのドアを開けて先に進み、軽く周囲を見回した。すると、彼とほぼ同時に部屋へ入る人影が在った。その人影はアランとは別のドアから入ってきており、髪を後頭部で綺麗に纏めていた。アランには、その人影に見覚えが在り、少しの間をおいてから口を開く。
「お早うございます。えっと、確かここの受付に居た」
それを聞いた女性はアランを見、それから淡々と言葉を発した。
「ストレルカ、です。お早うございます」
そう言って頭を下げ、ストレルカはアランの前から立ち去った。一方、アランは呆けた様子で彼女の背中を見送り、それから乱暴に頭を掻いた。立ち去る女性は、アランと同じ運動着を身に付けていた。しかし、その体格はアランに比べて細く、目付きはベルカに比べて悪かった。
また、身長はベルカに比べて高く、髪色は僅かながら濃い色をしていた。とは言え、雰囲気はベルカとどこか似ており、アランはその姿を見つめたまま息を吐いた。その後、アランは室内に用意された器具で運動を始めた。彼は、一時間程運動をした後でロッカー室へ戻っていく。
ロッカー室には、食堂と同様に飲み物が用意されていた。だが、それは冷たいものばかりで、コップはプラスチック製の大きなものだった。また、飲み物が用意された机の横にはバケツが置かれ、そこへ使用済みのコップを入れるよう指示が書かれていた。この為、アランはコップに冷水を並々と注ぎ、それを一気に飲み干した。彼は、冷水を二杯飲み干したところで口元を拭い、空のコップをバケツに入れる。
「汗を流さねえとな」
そう言って踵を返し、アランはロッカー室内を移動した。彼は、湿った空気が漂う方へ向かっており、その手前に在る棚の前で立ち止まる。その棚は、ロッカーとは異なり木製だった。また、棚の半分には綺麗に洗われたタオルが詰め込まれ、もう半分には何も置かれてはいなかった。そして、棚の端には使用済みの運動着を回収する箱が用意され、そこには既に数枚の衣服が入れられている。
アランは、運動着を脱ぐと回収箱に投げ入れた。そして、彼は湿った下着をゆっくりと脱ぎ、棚の開いている場所に置く。アランが使用した棚の対面にはドアが在り、彼はそれを静かに開けた。そのドアは厚めの硝子製で、内側は湯気で曇っていた。また、ドアの手前には毛足の長いマットが置かれ、それは中心の辺りが他よりへこんでいる。
ドアの先は浴室で、何人かが同時に使用出来る大きさだった。浴室にはシャワーが四つ用意され、体を洗う石鹸なども置かれている。その上、浴室の奥には浴槽が備え付けられており、そこからは白い湯気が絶え間なく上がっている様だった。アランは、浴槽に近いシャワーを選んで体を洗い、洗い終えたところで浴槽を見た。彼は、数秒の間を置いてから浴槽に入り、そこで大きく腕を伸ばした。
その浴槽は、大人が横になれる程に大きかった。また、少しずつながら湯が溢れ出ており、常に新しい湯が注ぎ込まれていることが窺えた。アランは、その浴槽に十分程浸かってから上がり、浴室を出て棚からタオルを取り出した。そのタオルは一枚でも体を覆うには十分で、アランは髪を軽く拭くとそれを下半身に巻き付ける。
そうしてから、彼は使用済みの下着を掴み歩き始めた。そして、自分用のロッカーの前まで移動するとそれを開け、持っていた下着を投げ入れる。
「袋とかありゃ、便利なんだけどな」
そう呟くと、アランは持参した着替えを身に付け始めた。彼は、その途中でタオルを近くの椅子に置き、服を着終えたところでロッカーからカードを取り出し首に掛ける。そして、運動前に着ていた服や下着を取り出すとそれを纏め、それを抱えたままロッカーを閉めた。
その後、アランは使用済みのタオルを回収箱に入れて運動場を去った。彼は、服を持って部屋へと戻り、そこで持ち帰った服を浴室前の籠に入れる。彼は、そうしてから自室を出て食堂へ向かった。この時、彼が起きてから二時間程が経過しており、食堂の席は半分程埋まっていた。
とは言え、会話をする声はあまり聞こえてこず、アランも知人を探そうとはしなかった。その後、食事を終えたアランは、一人で実験棟へと向かって行く。地下へ向かう間に人と出会うことはなく、アランは更衣室に到着した。そこで彼が着替えていると、マクシムが更衣室へと入ってくる。
(楽なんだか大変なんだか分からねえな)
アランは左腕で目元を覆った。彼は、そうしてから大きく息を吐き、両腕を横へ向けてゆっくり伸ばす。
アランは、暫くその姿勢のままでいたが、勢いを付けて起き上がると机上のケースを見下ろした。彼は、そうしてから平たいケースを手に取り、一番上の引き出しを開ける。
アランはケースを引き出しに入れ、細く息を吐き出した。そして、引き出しを閉めると腰に手を当て、そこを軸にして上体を捻る。彼は、暫く上体を動かしてから背中を伸ばし、目を瞑って大きな欠伸をした。それから、アランは部屋の時計に目線を移し、首に掛けていたカードを外す。
アランは、外したカードを机に置くとベッドに入り、上着を脱がないまま目を瞑った。その後、疲れていたせいもあってか、彼は直ぐに眠りに落ちてしまった。しかし、酷い悪夢をみているのか、彼は時折低い唸り声を上げた。また、その額には脂汗が浮かび、睡眠の質が良いとは言えなかった。
そのせいか、アランは夜中に目を覚まし、どこか怯えた様子で室内を見回した。この時、時計の短針は幾らか右側に傾いており、それを確認したアランは再び目を瞑る。その後も、彼は短い眠りを繰り返しながら時を過ごし、短針が真下を通過したところで起き上がった。そして、彼は洗面台へ向かうと顔を洗い、クローゼットを開けて着替えを取り出す。
アランは、それをベッドの上で纏めるとカードを首に掛け、小さな声で言葉を漏らした。
「こういう時は、運動して忘れるのが一番だよな」
頬を叩き、アランは着替えを持って部屋を出た。彼は、そうしてから運動場へ向かって行き、自室や食堂と同様にカード認証を行った。
運動場の中に入ると、そこには小さな受付が在った。受付の中には女性が居り、アランは彼女に会釈をすると先へ進んだ。すると、その先には二つのドアが在り、そのそれぞれに性別を示すピクトグラムが描かれている。
アランは、二つのうち男性を示すピクトグラムが描かれたドアを開けて中に入った。ドアを開けた先には大きめのロッカーが並んでおり、そのどれにも名前の記載されたプレートが嵌められている。また、ロッカー間には細長い椅子が用意され、座ったり何かを置けたりする様になっていた。アランは、人気のない部屋を歩いて行き、自らの名が記されたロッカーの前で立ち止まる。彼は、そうしてからロッカーを開け、持参した着替えをそこに入れた。
そのロッカーの上部には棚が在り、アランが持参した衣服が置かれている。また、棚の下には左右に伸びる棒が在り、そこにはハンガーに掛けられた運動着が在った。アランは、ロッカーから袖の短い運動着を出して椅子に置いた。その運動着の布地は薄く、ボトムスの腰回りにはゴムが使用されている。また、トップスにボタンの類は使われておらず、襟ぐりは広くとられていた。アランは、首に掛けていたカードをロッカー内の棚に置いた。そして、着ていた制服を脱ぐとロッカーに投げ入れ、代わりに運動着を身に付けていく。
運動着に着替え終えたアランと言えば、ロッカーを閉じて鍵を掛けた。ロッカーの鍵には手首に巻けるバンドが付属され、アランはそれを左手首に巻き付ける。
アランは笑みを浮かべ、部屋の奥へ向かって行く。すると、そこには磨り硝子で出来たドアが在った。
彼は、そのドアを開けて先に進み、軽く周囲を見回した。すると、彼とほぼ同時に部屋へ入る人影が在った。その人影はアランとは別のドアから入ってきており、髪を後頭部で綺麗に纏めていた。アランには、その人影に見覚えが在り、少しの間をおいてから口を開く。
「お早うございます。えっと、確かここの受付に居た」
それを聞いた女性はアランを見、それから淡々と言葉を発した。
「ストレルカ、です。お早うございます」
そう言って頭を下げ、ストレルカはアランの前から立ち去った。一方、アランは呆けた様子で彼女の背中を見送り、それから乱暴に頭を掻いた。立ち去る女性は、アランと同じ運動着を身に付けていた。しかし、その体格はアランに比べて細く、目付きはベルカに比べて悪かった。
また、身長はベルカに比べて高く、髪色は僅かながら濃い色をしていた。とは言え、雰囲気はベルカとどこか似ており、アランはその姿を見つめたまま息を吐いた。その後、アランは室内に用意された器具で運動を始めた。彼は、一時間程運動をした後でロッカー室へ戻っていく。
ロッカー室には、食堂と同様に飲み物が用意されていた。だが、それは冷たいものばかりで、コップはプラスチック製の大きなものだった。また、飲み物が用意された机の横にはバケツが置かれ、そこへ使用済みのコップを入れるよう指示が書かれていた。この為、アランはコップに冷水を並々と注ぎ、それを一気に飲み干した。彼は、冷水を二杯飲み干したところで口元を拭い、空のコップをバケツに入れる。
「汗を流さねえとな」
そう言って踵を返し、アランはロッカー室内を移動した。彼は、湿った空気が漂う方へ向かっており、その手前に在る棚の前で立ち止まる。その棚は、ロッカーとは異なり木製だった。また、棚の半分には綺麗に洗われたタオルが詰め込まれ、もう半分には何も置かれてはいなかった。そして、棚の端には使用済みの運動着を回収する箱が用意され、そこには既に数枚の衣服が入れられている。
アランは、運動着を脱ぐと回収箱に投げ入れた。そして、彼は湿った下着をゆっくりと脱ぎ、棚の開いている場所に置く。アランが使用した棚の対面にはドアが在り、彼はそれを静かに開けた。そのドアは厚めの硝子製で、内側は湯気で曇っていた。また、ドアの手前には毛足の長いマットが置かれ、それは中心の辺りが他よりへこんでいる。
ドアの先は浴室で、何人かが同時に使用出来る大きさだった。浴室にはシャワーが四つ用意され、体を洗う石鹸なども置かれている。その上、浴室の奥には浴槽が備え付けられており、そこからは白い湯気が絶え間なく上がっている様だった。アランは、浴槽に近いシャワーを選んで体を洗い、洗い終えたところで浴槽を見た。彼は、数秒の間を置いてから浴槽に入り、そこで大きく腕を伸ばした。
その浴槽は、大人が横になれる程に大きかった。また、少しずつながら湯が溢れ出ており、常に新しい湯が注ぎ込まれていることが窺えた。アランは、その浴槽に十分程浸かってから上がり、浴室を出て棚からタオルを取り出した。そのタオルは一枚でも体を覆うには十分で、アランは髪を軽く拭くとそれを下半身に巻き付ける。
そうしてから、彼は使用済みの下着を掴み歩き始めた。そして、自分用のロッカーの前まで移動するとそれを開け、持っていた下着を投げ入れる。
「袋とかありゃ、便利なんだけどな」
そう呟くと、アランは持参した着替えを身に付け始めた。彼は、その途中でタオルを近くの椅子に置き、服を着終えたところでロッカーからカードを取り出し首に掛ける。そして、運動前に着ていた服や下着を取り出すとそれを纏め、それを抱えたままロッカーを閉めた。
その後、アランは使用済みのタオルを回収箱に入れて運動場を去った。彼は、服を持って部屋へと戻り、そこで持ち帰った服を浴室前の籠に入れる。彼は、そうしてから自室を出て食堂へ向かった。この時、彼が起きてから二時間程が経過しており、食堂の席は半分程埋まっていた。
とは言え、会話をする声はあまり聞こえてこず、アランも知人を探そうとはしなかった。その後、食事を終えたアランは、一人で実験棟へと向かって行く。地下へ向かう間に人と出会うことはなく、アランは更衣室に到着した。そこで彼が着替えていると、マクシムが更衣室へと入ってくる。