仕事の終わり

文字数 1,185文字

 それから数日後、アランは仕事をする為に餌が用意されている筈の部屋へ向かった。しかし、そこにA-083用の餌は無く、アランは首を傾げながらも並べられている餌を何度か確認する。アランは、準備が出来ていないだけかと暫く待ったが、部屋に用意された全ての餌が捌けても彼の目的を果たすことは出来なかった。この為、アランは餌をやり終えた人達に質問をしていった。しかし、誰一人として答えを知る者はなく、アランは溜め息混じりに呟いた。
 
「シュランゲを探さねえと」
 彼が言葉を漏らした時、偶然にも名を呟いた男が部屋へ入る。この為、アランは驚いた様子でシュランゲを見た。

「先ずはお早うございます、アランさん。そして、連絡が遅れてしまい申し訳ございませんでした」
 頭を下げ、シュランゲはアランの反応を待たずに話を続けた。
 
「A-083への餌やりは、もう必要ありません。A-083は既に役目を終えましたので、餌を与えて生かす必要もありません」
 その話を聞いたアランは目を見開き、辿々しい話し方で問い掛ける。

「それは、つまり」
 アランは、シュランゲを見つめながら掠れた声を発した。だが、それ以上の言葉を出せず、彼と代わる様にシュランゲが話し始める。
 
「もう、生きてはいないと言うことです」
 その一言を聞いたアランは、衝撃を受けた為か右手で顔を覆った。彼は、数秒間そうしてから腕を下ろし、何事もなかったかの様に話し出す。

「では、これでお役御免ですか?」
 アランは、そう質問をするとシュランゲの返答を待った。すると、シュランゲは笑顔を作って彼の質問へ答え始める。
 
「はい。今までお疲れ様でした。また、お願いすることもあると思いますが、それまでゆっくりと休養なさって下さい」
 それを聞いたアランは、幾らかの言葉を返してその場を去った。一方、シュランゲは彼が部屋を離れた後で、自らの持ち場へ戻っていく。その後、アランはどこか気の抜けた様子でマクシムと仕事をこなしていった。そうして一仕事を終えた彼らは、何時もの様に休憩をとる。
 
 その日は、特にトラブルも無く過ぎていき、やるべきことを終えたアランは自室に戻った。この際、机の上には封筒が置かれており、アランはそれを手に取るとベッドに腰を下ろす。

 彼は、封筒に差出人の名が書いてあるかを確かめた。しかし、封筒に署名はなされておらず、アランは溜め息を吐きながら封を開ける。開かれた封筒には一枚の便箋が入れられており、その右下にはニコライの署名があった。また、手紙を見たなら来るよう便箋に書かれており、それを読んだ者は細く息を吐き出した。
 
(無視は出来ねえよな)
 アランは便箋を封筒に戻した。そして、その封筒を片手に持ち、彼はニコライの元へと向かう。

 ニコライが居る部屋の前で、アランは胸に手を当てて深呼吸をした。彼は、そうして呼吸を整えてからドアを軽く叩く。
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登場人物紹介

アラン


ガチムチ脳筋系の兄貴キャラ。
それでいて上の指示には従順な体育会系な為に社畜と化す。

純真な心が残っている為、それで苦しむが、何が大切かを決めて他を切り捨てる覚悟はある。

ニコライ的には、瞳孔が翠で良い体格の(おっちゃんなもっとデカなるでな)理想的な茶トラ人間バージョン。
なので気にいられてる。

ニコライ・フォヴィッチ


裏社会で商売している組織のボス。
ロシアンブルーを愛する。

猫好きをこじらせている。
とにかく猫が好き。
話しながら密かにモフる位に猫が好き。
昔はサイベリアンをモフっては抜け毛で毛玉を育てていた系猫好き。
重症な猫好き。
手遅れな猫好き。
猫には優しい。
猫には甘い。
そんな、ボス。

アール


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは右にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その1。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

エル


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは左にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その2。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

青猫
ニコライの愛猫。
専用の部屋を持つ部下より好待遇なお猫様。
ロシアンブルーだからあまり鳴かない。
そこが気に入られる理由。
専属獣医も居る謎待遇のお猫様。

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