悪魔との契約

文字数 1,792文字

 アランが保護されてから数年が経ち、彼よりも小さな子供達の保護は増えていった。しかし、その人数に対して子供の生活する建物は小さく、生活に必要な物品も不足していた。

 そんな折、パトリックの元に数人の男達が訪れた。彼らは、仕立ての良いスーツを身に纏い、目元を隠そうとしてか色の付いた眼鏡を掛けていた。彼らは、パトリックへ人目につかない場所へ移動する様に言い、青年は子供達の安全を考えてそれに従う。パトリックは、保護直後のアランを治療した小屋へ彼らを案内し、そのリビングで話を聞くことにした。

 すると、小屋に入った男達はパトリックを取り囲み、青年の正面に立つ男が話を始める。
 
「うちと契約しない? 悪い様にはしないから」
 パトリックは首を傾げ、動揺を悟られまいとしてか目を細めた。

「契約しない? と、言われましても……うちは、見ての通り大した資金が有りませんし、土地の価値だって高くはありませんよ」
 それを聞いた者は軽く笑い、腕を横に広げて言葉を発する。
 
「こっちが求めているのは、労働力だよ。それを提供してくれれば、孤児院だけでなく教会も立て直そう。ただ、建物が新しくなった暁には、こちらの者がそこに常在するけどね」
 パトリックは眉根を寄せ、無言で男達の様子を窺っている。

「君達の主な仕事は、子供を保護すること。ただし、今までより荒っぽい方法でね。詳しい内容は契約後に話すけど……今の状態を考えたら、悪い話じゃないだろう」
 そう言ったところで、男はパトリックに顔を近付ける。対するパトリックは拳を握り、感情を出さない様にしながら言葉を発した。
 
「確かに、悪い話では無いのでしょう。しかし、私はただの下っ端。権利や資格などは持ち合わせておりません。私に話をしても、上手くなんていかないと思いますよ?」
 それを聞いた男は笑い、パトリックは思わず目を丸くする。

「そんなことは百も承知だ。そう言ったものを持つ相手には、簡単には会えない。だからこそ、近付き易い人物に、話を通して貰うんだよ」
 男は、そう返すと口角を上げて話し続ける。
 
「断るのは容易い。しかし、その容易さの代償は子供達だ」
 そう言い放つと、男性はパトリックに近付けていた顔を離した。

「一週間待ってやる。良く考えて答えることだ」
 そう言い残すと、男達は小屋を後にした。一方、残されたパトリックは唇を噛み、悔しそうにテーブルの端を叩く。すると、テーブルの下からは、高い子供の声が響いた。この時、テーブルの下には、驚いて硬直するアランの姿が在った。一方、不意にアランの存在に気付いたパトリックと言えば、困惑した様子で少年に話し掛ける。
 
「こんなところで、何をしていたのですか?」
 問い掛けられたアランはテーブルの下から這い出し、怯えた様子で言葉を発した。

「追い掛けられていて……慌ててここに入ったんだ。そうしたら、知らない男の人が何人も入ってきて怖くって」
 アランは、そう伝えると目を伏せて唇を振るわせる。
 
「だから、慌ててテーブルの下に隠れて」
 アランの返答を聞いたパトリックは、細く息を吐き出した。そして、彼はアランと目線を合わせる為に腰を曲げ、自らの膝に手を当てて話し出した。

「と言うことは、最初から聞かれてしまいましたね。聞いての通り、あまり良い話ではないと言うのに」
 パトリックは、そう伝えると溜息混じりに言葉を続ける。
 
「みんなには内緒ですよ? 一週間したら、先程のことは私から話しますから」
 それを聞いたアランは頷き、パトリックは少年の頭を優しく撫でる。
「有難うございます」
 そう言うと、パトリックは自らのポケットを探り始めた。その後、彼はポケットから飴を取り出し、アランに手渡す。
 
「これは、ささやかなお礼です」
 パトリックは、そう伝えると人差し指を立てて唇に当てる。対するアランは小さく頷き、受け取った飴を口に含んだ。

「さて、私は用事が出来てしまいました。しかも、時間に制限がある用事が。ですから、先にここを出ますね」
 そう言い残すと、パトリックはアランの前から姿を消した。一方、少年は部屋に置かれたソファーに座り、飴を舐め終えてからも暫くは座ったままでいた。しかし、少年が待ち続けてもパトリックが戻る様子は無く、アランは空が暗くなる前には小屋を出る。そして、名残惜しそうに小屋を振り返ると、自らの家へと向かっていった。
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登場人物紹介

アラン


ガチムチ脳筋系の兄貴キャラ。
それでいて上の指示には従順な体育会系な為に社畜と化す。

純真な心が残っている為、それで苦しむが、何が大切かを決めて他を切り捨てる覚悟はある。

ニコライ的には、瞳孔が翠で良い体格の(おっちゃんなもっとデカなるでな)理想的な茶トラ人間バージョン。
なので気にいられてる。

ニコライ・フォヴィッチ


裏社会で商売している組織のボス。
ロシアンブルーを愛する。

猫好きをこじらせている。
とにかく猫が好き。
話しながら密かにモフる位に猫が好き。
昔はサイベリアンをモフっては抜け毛で毛玉を育てていた系猫好き。
重症な猫好き。
手遅れな猫好き。
猫には優しい。
猫には甘い。
そんな、ボス。

アール


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは右にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その1。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

エル


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは左にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その2。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

青猫
ニコライの愛猫。
専用の部屋を持つ部下より好待遇なお猫様。
ロシアンブルーだからあまり鳴かない。
そこが気に入られる理由。
専属獣医も居る謎待遇のお猫様。

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