支配者による断罪
文字数 1,396文字
「痛いでしょ? 実はね、そう言う薬を塗ってあるんだ。その薬、出血も多くなるんだって」
腹を刺されたアランは焼けるような痛みに顔を歪ませた。
「でも、君が悪いんだよ? 繁殖用の雌なんかに感情移入しちゃう、アランが」
脅すように言い放つと、ニコライはナイフに付着した血を指先で拭って口に含んだ。
「あの契約を交わした以上、君は血の一滴さえも僕のものなのに」
アランは小さく笑い、持っていたトレイを床に落とした。この際、トレイからは空の食器が落ちて床に散らばり、それは軽い音を立てて一部が欠けた。
「俺をやりたいならやりゃあ良いさ」
アランは、そう呟くと目を瞑り、降参した様子で両手を顔の位置まで上げる。一方、ニコライは口元を緩め、楽しそうに話し出した。
「駄目だよ? それじゃつまらないもの」
ニコライがそう言った時、アールは右手をアランの首へ向けた。アールは、指先に力を込めてアランの脳へ至る動脈を圧迫し、相手の膝から力が抜けるまで手を離さなかった。
程無くしてアランが床に膝をついた時、アールはアランから手を離した。そして、アランの肩を強く掴むと、乱暴にドアの前から移動させる。
「それはアールに任せるよ。僕は、雌の方をやらなきゃだから」
ニコライは、そう言うとアールの目を見て微笑んだ。すると、アールは無言のままアランの体を抱え、何処へと運び始める。
アールが部屋から離れた頃、ニコライはドアを開けて部屋に入った。この際、彼はエルを付き添わせており、その手にはナイフが握られたままである。
部屋に居た女性は、紅い液体の付いたナイフを見るなり震え始めた。ニコライは、そんな女性の様子を見ると頬を赤らめ、高揚した様子で言葉を発する。
「成る程、悪いのはその見た目か」
その後、部屋には女性の叫び声が満ちた。しかし、ニコライやエルがそれに怯むことは無い。ひとしきりナイフを用いた後、ニコライはその汚れをぬぐって鞄に仕舞った。そして、汚れた布を床に投げ捨てると、エルを伴って部屋を出る。
「さて、これからがメインディッシュだ」
そう呟くと、ニコライはアールがアランを連れていった方向へ歩みを進めた。彼の後をエルは追い、二人はアールの居る場所へ向かい始める。
アールが居るのは小さな部屋だった。その部屋は白い壁紙で囲まれ、様々な医療器具と簡素なベッドが在る。アランは、アールの手によって部屋の中程にあるベッドに寝かされていた。アールは手際良くアランをベッドに拘束すると創傷部の回りの服を切り取り、冷んやりとした液体をアランの腹部へかけた。
この際、アランからは苦しそうな声が漏れ、それを聞いたアールは声を漏らした口にガーゼを詰め込む。その後、アールはアランの傷口を洗う様に液体をかけ続けた。そして、円柱状の容器が空になった時、彼はラバー製のグローブを装着して弧を描く針を手に取った。
アールは、手慣れた様子で針に細長い糸を嵌め、アランの傷口を縫い合わせ始めた。その手際は良く、みるみるうちに傷口は塞がれていく。しかし、皮膚の縫合迄はせず、アールはグローブをしたまま部屋の入口を見つめていた。アランは、彼の行動に違和感を覚えるも、まともに言葉を発することさえ出来なかった。
そうしているうちに、部屋にはニコライが入ってきた。ニコライは、ベッドに拘束されたアランを見下ろし、冷めた笑いを浮かべてみせる。
腹を刺されたアランは焼けるような痛みに顔を歪ませた。
「でも、君が悪いんだよ? 繁殖用の雌なんかに感情移入しちゃう、アランが」
脅すように言い放つと、ニコライはナイフに付着した血を指先で拭って口に含んだ。
「あの契約を交わした以上、君は血の一滴さえも僕のものなのに」
アランは小さく笑い、持っていたトレイを床に落とした。この際、トレイからは空の食器が落ちて床に散らばり、それは軽い音を立てて一部が欠けた。
「俺をやりたいならやりゃあ良いさ」
アランは、そう呟くと目を瞑り、降参した様子で両手を顔の位置まで上げる。一方、ニコライは口元を緩め、楽しそうに話し出した。
「駄目だよ? それじゃつまらないもの」
ニコライがそう言った時、アールは右手をアランの首へ向けた。アールは、指先に力を込めてアランの脳へ至る動脈を圧迫し、相手の膝から力が抜けるまで手を離さなかった。
程無くしてアランが床に膝をついた時、アールはアランから手を離した。そして、アランの肩を強く掴むと、乱暴にドアの前から移動させる。
「それはアールに任せるよ。僕は、雌の方をやらなきゃだから」
ニコライは、そう言うとアールの目を見て微笑んだ。すると、アールは無言のままアランの体を抱え、何処へと運び始める。
アールが部屋から離れた頃、ニコライはドアを開けて部屋に入った。この際、彼はエルを付き添わせており、その手にはナイフが握られたままである。
部屋に居た女性は、紅い液体の付いたナイフを見るなり震え始めた。ニコライは、そんな女性の様子を見ると頬を赤らめ、高揚した様子で言葉を発する。
「成る程、悪いのはその見た目か」
その後、部屋には女性の叫び声が満ちた。しかし、ニコライやエルがそれに怯むことは無い。ひとしきりナイフを用いた後、ニコライはその汚れをぬぐって鞄に仕舞った。そして、汚れた布を床に投げ捨てると、エルを伴って部屋を出る。
「さて、これからがメインディッシュだ」
そう呟くと、ニコライはアールがアランを連れていった方向へ歩みを進めた。彼の後をエルは追い、二人はアールの居る場所へ向かい始める。
アールが居るのは小さな部屋だった。その部屋は白い壁紙で囲まれ、様々な医療器具と簡素なベッドが在る。アランは、アールの手によって部屋の中程にあるベッドに寝かされていた。アールは手際良くアランをベッドに拘束すると創傷部の回りの服を切り取り、冷んやりとした液体をアランの腹部へかけた。
この際、アランからは苦しそうな声が漏れ、それを聞いたアールは声を漏らした口にガーゼを詰め込む。その後、アールはアランの傷口を洗う様に液体をかけ続けた。そして、円柱状の容器が空になった時、彼はラバー製のグローブを装着して弧を描く針を手に取った。
アールは、手慣れた様子で針に細長い糸を嵌め、アランの傷口を縫い合わせ始めた。その手際は良く、みるみるうちに傷口は塞がれていく。しかし、皮膚の縫合迄はせず、アールはグローブをしたまま部屋の入口を見つめていた。アランは、彼の行動に違和感を覚えるも、まともに言葉を発することさえ出来なかった。
そうしているうちに、部屋にはニコライが入ってきた。ニコライは、ベッドに拘束されたアランを見下ろし、冷めた笑いを浮かべてみせる。