支配者と研究者

文字数 1,069文字

 シュランゲは、目的とする一室の前で立ち止まりドアを見据えた。そして、そのドアを軽く叩くと、ゆっくりとした口調で話し始める。

「シュランゲです。伝言の指示通り報告に参りました」
 彼が言い終えると同時にドアは開き、その先には笑みを浮かべたニコライの姿が在った。ニコライは、シュランゲへ入室する様に言い、訪問者はその指示に従う。

 すると、シュランゲが部屋の中程まで来たところでドアは閉まり、それを見たニコライは小さく息を吸い込んだ。
 
「大丈夫そう?」
 問われたシュランゲと言えば、緊張の為か表情を固くして口を開く。

「物覚えや理解力については、現時点では問題無いと思われます。ただ、家畜の管理は実際にやってみないと分からない部分が有りますので、明言は出来ません」
 その説明を聞いたニコライは目を細め、更なる質問をシュランゲへ向ける。
 
「だろうね。それで、家畜の躾は済んだ? 育て中の子を、愚かな家畜に潰されても困るからね」
 そう言って、ニコライはシュランゲの目を真っ直ぐに見た。この際、ニコライの冷たい眼差しを受けたシュランゲは、恐怖を感じてか背中を震わせる。その後、彼は気持ちを落ち着ける様に深い呼吸をしてから言葉を発した。
 
「はい。躾は何時も通りに済ませてあります。逆らったらどうなるかを何度も映像で見せましたので、下手なことはしない筈です」
 シュランゲの話を聞いたニコライは、何故か退屈そうに髪をいじった。

「筈……ねえ」
 ニコライの一言で、シュランゲは体を強張らせる。シュランゲは慌てて説明を加えようとしたが、それが声となって発せられることは無かった。
 
「ま、そうとしか言いようが無いだろうし、これ以上話すことも無いだろうから持ち場に戻って?」
 そうニコライが言うと、彼の部下により部屋のドアは開かれた。この為、シュランゲはニコライに頭を下げてから部屋を出る。

 退室したシュランゲは、疲弊した様子で目を瞑った。その後、彼は深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着けてから、自らの持ち場へ向かって歩き始める。一方、ニコライは彼の足音が遠ざかった後、ドアの方へ顔を向けて嘲笑した。
 
「見ただけで学習出来る家畜なら良いけどね。ま、それが出来ていたなら、ここには居ないけど」
 そう言葉を漏らすと、ニコライは目を細めて舌を突き出した。そして、彼は椅子の背もたれに体重を預けると、左手で前髪をかき上げる。

「これから面白くなりそうだ」
 そう小声で言ってから、ニコライは更なる言葉を発した。しかし、その声はあまりに小さく、部屋に居る者にすら聞こえることは無かった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

アラン


ガチムチ脳筋系の兄貴キャラ。
それでいて上の指示には従順な体育会系な為に社畜と化す。

純真な心が残っている為、それで苦しむが、何が大切かを決めて他を切り捨てる覚悟はある。

ニコライ的には、瞳孔が翠で良い体格の(おっちゃんなもっとデカなるでな)理想的な茶トラ人間バージョン。
なので気にいられてる。

ニコライ・フォヴィッチ


裏社会で商売している組織のボス。
ロシアンブルーを愛する。

猫好きをこじらせている。
とにかく猫が好き。
話しながら密かにモフる位に猫が好き。
昔はサイベリアンをモフっては抜け毛で毛玉を育てていた系猫好き。
重症な猫好き。
手遅れな猫好き。
猫には優しい。
猫には甘い。
そんな、ボス。

アール


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは右にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その1。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

エル


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは左にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その2。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

青猫
ニコライの愛猫。
専用の部屋を持つ部下より好待遇なお猫様。
ロシアンブルーだからあまり鳴かない。
そこが気に入られる理由。
専属獣医も居る謎待遇のお猫様。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み