支配者の呼び出し

文字数 1,257文字

 朝になって目を覚ましたアランは、眠そうに瞬きをしながら上体を起こした。彼は、立ち上がって机を見下ろし、そこに置かれた封筒に手を伸ばす。その後、アランは封筒を掴んで引き出しを開けた。その引き出しには、既に彼の署名がなされた書類が入れられている。
 
 この為、アランは書類の上に封筒を置き、静かに引き出しを閉めてから腕を大きく上に伸ばした。彼は、体を目覚めさせるように様々な部位を動かし深呼吸をする。その後は何時も通りに時を過ごし、仕事を終えてから部屋に戻った。部屋に戻ったアランと言えば、引き出しを開けて封筒と書類を取り出した。彼は、その両方を持つと部屋を出、足早にニコライの元へ向かっていく。
 
 ニコライが待つ部屋の前に来たアランは、胸元に手を当てて呼吸を整えた。そうしてから彼はドアを叩き、声を掛ける。

「アランです。仕事が終わりましたので、参上しました」
 呼び掛けてから数秒後、ドアは内側から開かれた。この為、アランは開かれつつあるドア越しに室内を見る。すると、彼の瞳にはニコライが椅子に腰を下ろしている姿が映し出された。また、ニコライの右側には、アールが背中を伸ばして立っている。
 
「入っておいでアラン君。呼び出したのは僕だ、遠慮することはない」
 ニコライの言葉を受けたアランは、静かに部屋へ入った。そして、彼が部屋の中程まで進んだ時、その背後ではドアの閉まる音がする。

 この時、ニコライはアランの手元を見つめていた。ニコライは、アランが持参した物を確認すると、からかうような口調で言葉を発する。
 
「また手紙を持ってきちゃったの、アラン君?」
 そう問い掛けられた者は目を丸くし、反射的に自らの手を見下ろした。その後、彼は慌てた様子で封筒を服の下へ隠しこむ。

「咄嗟に隠すだなんて、悪いことをした後の子供みたいだね? 持ってきたことを責める気はないし、不都合なんてありはしないのに」
 ニコライは、そう言うと目を細めて小さく笑った。一方、その様子を見たアランと言えば、気まずそうに苦笑いを浮かべて頭を掻く。
 
「で、隠していない紙束は、リンクスから受け取った書類で合ってる?」
 そう問い掛けると首を傾げ、ニコライはアランの目をじっと見つめた。すると、アランは思い出したように書類を持ち上げ、ニコライへそれを差し出した。

「はい、その書類です。受け取った書類の署名欄は埋めてありますので、ご確認ください」
 アランの言葉を聞いたニコライは小さく頷いた。しかし、彼は差し出された書類を受け取らず、代わりに隣に立つアールがそれを受け取る。書類を渡したアランは半歩下がり、アールは紙を捲ってその内容を確認した。そして、アランの署名がなされた頁を確認すると、頁が開いたままの状態でニコライへ書類を手渡した。
 
「確認ありがとう、アール」
 そう言って書類に目線を移し、ニコライはアランの署名を確認する。
「うん、問題ないね。使ったペンは、僕の指示で用意したものでしかないだろうし」
 そこまで言って書類を閉じ、彼はアランを見つめて微笑んだ。
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登場人物紹介

アラン


ガチムチ脳筋系の兄貴キャラ。
それでいて上の指示には従順な体育会系な為に社畜と化す。

純真な心が残っている為、それで苦しむが、何が大切かを決めて他を切り捨てる覚悟はある。

ニコライ的には、瞳孔が翠で良い体格の(おっちゃんなもっとデカなるでな)理想的な茶トラ人間バージョン。
なので気にいられてる。

ニコライ・フォヴィッチ


裏社会で商売している組織のボス。
ロシアンブルーを愛する。

猫好きをこじらせている。
とにかく猫が好き。
話しながら密かにモフる位に猫が好き。
昔はサイベリアンをモフっては抜け毛で毛玉を育てていた系猫好き。
重症な猫好き。
手遅れな猫好き。
猫には優しい。
猫には甘い。
そんな、ボス。

アール


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは右にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その1。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

エル


ニコライの側近。
眼鏡でエルとは瓜二つ。
服も支給品の同じスーツなので、見分けは左にある黒子。

ニコライ的にはタキシード模様の猫その2。
黒い毛並みを維持する為の投資は厭わない。

青猫
ニコライの愛猫。
専用の部屋を持つ部下より好待遇なお猫様。
ロシアンブルーだからあまり鳴かない。
そこが気に入られる理由。
専属獣医も居る謎待遇のお猫様。

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