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文字数 1,020文字
蒸気機関車が、荒れ野を駆けていきます――
最後尾のサロンへ向かう途中だったテスは、その連結部の手前の扉の前で動きを止め、気配を殺します。
車両連結部のトイレの前に、人が二人います。
夕日に頬を染めながら、女が書物を読んでいます。
そばには背の高い赤毛の男が寄り添っていました。
テスは息詰めて、二人の沈黙を聞きました。
車内だというのに、テスはマントを着込んでいます。
寒いから、だけではありません。
二振りの半月刀と銃とを隠しているのです。
これまでだったら寝台車のベッドの下に隠しておけばよかったのですが、もう、そうはいきません。
追われる身ですから。
言葉が消えていきます。
テスは扉に身を寄せて、様子を見守ることにしました。
随分と気配に敏 い男です。
テスは扉を開けて連結部へと入っていき、二人に一礼しました。
そそくさと通り抜けようとしたとき……。
テスは足早に通り過ぎ、サロンへ続く扉を開けました。
それでも。
二人連れはサロンまで追っては来ませんでした。
―つづく―