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文字数 1,494文字
遠い異星・アースフィア。
そこは、時空の辺境。捨てられた被造物たちの墓場――。
※
かつて地球人たちは、己に似せて『言語生命体』と呼ばれる新人種を創造しました。
彼らを支配することで、神になろうとしたのです。
けれど、独立を求める言語生命体たちとの争いに
言語生命体たちを、いくつもの
いくつもの惑星アースフィアに捨て去りました。
※
そのうちの一つ。
終わらない夕闇が支配する惑星アースフィアに、一人の旅人が落ちてきました。
旅人は、終わらない昼が支配していた惑星アースフィアを覚えています。
そしてまた、終わらない夜が支配していた惑星アースフィアも覚えています。
けれど、
他の記憶はほとんど持っていませんでした。
たたん。たたん。
荒野を駆ける寝台車の窓を、終わらない夕日が染めています――。
寝台車には二人の旅人がいました。
ベッドの上には緑髪の青年。
窓辺には、労働者階級の逞しい中年の男。
青年は、よほど寒いのでしょう。
灰白色のマントにこげ茶色のストールを着込み、
さらに体に二枚の毛布を巻きつけて放そうとしません。
青年は、のろのろ動いて毛布を男に返します。
それがあんまり嫌そうなので――
気まずい沈黙が満ちてきます。
テスと名乗る青年は、呼気すら男に感じさせません。
全存在を車輪の音と振動に同調させています。
たたん、たたん……。
※
次にテスが目覚めたとき、汽車は湿地の中にありました。
汽車が一人の旅人を吐き出します。
テスです。
この湿原で降りる人は、テス以外にいません。
※
茶色く枯れた葦の原を、テスは歩いていきます。
風もないのに、彼はマントの前をあわせてぎゅっと体を縮めます。両手で口を覆い、息を吹きかけてこすり合わせます。
寒いのです。
そんな彼の様子を、茂みから凝視する金色の目があります。
テスの行く手には、沼地がありました。
生き物は見えません。
水面を飛び交う虫もなく、跳ねる魚もいなません。
ただ低木がさざめき、葦とガマが揺れるばかりです。
石と化し、泥をかぶった水鳥たちが、末期の悲鳴をあげるかたちで